『抗生物質と人間』
海外の書籍では翻訳の時間が3~4年間かかり、情報が最新ではなくなってしまう。
日本人が執筆した書籍であればそのズレは少なくなるだろう。
しかし、どうして日本人の書いたものには宣伝めいた事柄が多く含まれ、読んでいて事の真偽がどうしても判断できない。
医学に関して全くの素人が判断できるわけがないのだが、何冊か同じような書籍を読んでみて論点がずれているように思えてならない。
やっと海外の書籍と同じような書籍を見つけた。
日本語で丁寧な説明でとても読みやすい。(読みやすさと興味の関係は別だと思う。興味のある内容でも読みにくい文章もあるから。)
前半は抗生物質の成り立ちが解説され、ドラマ『仁』でも出てきた青カビから生成されたペニシリンが初めての抗生物質として登場し以来数多くの抗生物質が発見され治療に役立っている。
不治の病を治療することの出来る抗生物質に対する神話が人々の間に広まりどんな病気でも「抗生物質」を処方してもらうことを希望する患者が急増する。
医者も効果はないと知りつつ副作用がないためそれに応じてしまう。
この抗生物質の乱用や過剰使用が細菌たちに影響を与え抗生物質に対抗し抗生物質に負けない耐性菌が発生している。
今まで病気にかかっても抗生物質を投与すれば治癒したものが抗生物質の効果がなくなってしまいその病気で命を落とすことになるとは、なんと恐ろしいことだ。
これは、人間の構造を理解していなかったから起きたことで、人間が単体で完成されたものだと考えていたために、体内に大量に共存している細菌の存在を考えたらもう少し早く抗生物質の乱用を止められたかもしれない。
過剰使用のもう一つの側面は、「抗生物質を使用すると肥満になる」ということだ。
これを畜産業では病気に対する効果とともに肥育の目的で使用していると書かれています。
肥育に関しては肥育ホルモンというものがあり、日本では禁止されているがアメリカ、カナダ等では使用されている。
本の中に書かれていた内容が、抗生物質=成長ホルモンと勘違いしていたが調べてみると肥育ホルモンというものが存在するらしい。
腸内細菌叢への話になりますが、これら抗生物質は腸内細菌に多大な影響を与え多様性を持っていた腸内細菌たちが多様性を失いつつあるという事実に衝撃を受けた。
新生児に対する抗生物質の使用は腸内細菌叢の生成に大きな影響を与えることがわかってきた。
また、親から子へ腸内細菌は産道を通して受け渡されることがわかってきて、産道を通らない帝王切開による出産での腸内細菌叢への影響を研究中だということだ。
人間というものが一体どういうものなのか不思議でならない。
腸内細菌のみならず皮膚、口内、耳、鼻とありとあらゆる場所に細菌は存在し人間に対して影響を与え続けている。それは、良いことも悪いこともである。
細菌なしに人間だけでは生きていけない。
それでは、人間とは大規模な器にすぎないのだろうか。
最後に、単式顕微鏡の発明者であるオランダのアントニー・レーウェンフックの興味深い話を引用する。
彼はオランダのデルフトで一生を過ごし、顕微鏡で身近なものを観察しその内容をイギリス王立協会に手紙で報告していた。その数はイギリス王室協会の歴史上最も多いとされている。
オランダの画家、フェルメールをご存知だろうか。「真珠の耳飾りの少女」で有名なのでご存知な方も多いと思う。(しかも、映画化もされ、大好きなスカーレット・ヨハンソンが主演している。)
フェルメールも同じ街に生れ、誕生日は一週間しか違わない。
筆者はイギリス王室協会への手紙の中に描かれているスケッチがフェルメールによるものではないかと思っている。
確証は全く無いが、フェルメールの死後、遺産管財人はレーウェンフックだったという事実がある。
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