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You is...

たまに覗くお店で見かけたボトルのデザイン、ぱっと見が可愛かったので手に取ってみてビックリ。

"YOU IS HAPPY
YOU IS SWEET
YOU IS STAR"

いや、まさか…。

おかしな英語プリントティーシャツだらけの我が国といえど、"You are"くらいは間違えないでしょ…? 本気…?

と心から驚いたのだけど、いや、でも、わたしが知らないだけで実はこういう言い方もあるのかな…? と思い、早速検索してみると、出てくるのは"You Are What You Is"という曲のタイトル。

あとは"You is kind, you is smart, you is important."という、映画「ヘルプ」でヴィオラ・デイビス演じるエイビリーンが子守りをしている子供に語りかけた台詞のクォート。

あのボトルデザインは恐らくはこれを捩ったものなんだろうなあ…でもなんで"You are"じゃなくて"You is"なのかという疑問はそのまま…。

そこで想像してみるに、「ヘルプ」は黒人の権利が強く制限されていた1960年代のアメリカ南部が舞台。

幼い頃から使用人として働く事が前提とされ、きちんとした教育を受ける機会を得られなかった黒人女性のエイビリーンが"You are"を"You is"と言い間違えることもあるのかな、と。

これをTwitterで話題にしたところ、何人かのひとがリプライをくれて、その一つが上記の内容を肯定するものだったので、推測としてはあってたのかなと思う。

その後も引き続き検索してみて、"I is what I is"という言い回しを使ったひとがいたこと、それを"Southern thing"(南部のもの)と形容しているひとがいること等を見つけた。

また、文法としては間違いだけど、ちょっとおどけた挨拶として"How is(was, be) you?"という言い方がある事も分かった。"You Are What You Is"はこのタイプらしい。

また「ヘルプ」のワンシーンで、エイビリーンがずっと世話をして優しく言葉(You is kind...)をかけてきた子供が、エイビリーンの言葉を真似て話すシーンがあったと思う。

吹替や字幕の日本語情報だけでも十分感動的なシーンだったと思うけど、これが黒人女性の間違った文法を白人の子供がそのまま身につけているという事を表すシーンなのだと思うと、なんか深みが全然違うな! と更にビックリした。

アメリカ南部は黒人への差別感情が殊更強い地域として有名で、映画内でも「黒人と同じトイレをつかうと病気が移る」と、屋外に専用トイレを作る話が出てくるくらい、共生、同化を拒んできた地域性でありながら、彼らが世話を任せっきりにしてきた子供達はしっかりと彼女たちと心を通わせ、言葉を受け継いでいたんだ。

そして、いま南部訛りと言われる話し方の少なくないものは黒人が話していた英語が基になっているそう。

そんなの、差別主義者にとってはこれ以上ない悔しい展開じゃない?

まるで、あの映画の続きを観た気分。
いや、いま生きている時代こそ正にあの映画の続きなんだけれど。

そして英語が出来るということは、映画ひとつとってもこれだけ捉え方が変わるんだということを改めて実感して、脳がスパーン! ですよ…べべべ、勉強せねば…。

単なる初歩的すぎる間違いだと思ったボトルのデザインがこんな思いがけない展開をくれるのだから、たまには外出してみるのもいいですね!(休日引きこもり人間)

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