入門3.真理関数

基本的な論理結合子を、本書では次のように真理関数的に定義する。

∧: A と B が共に ⊤ であるときのみ、 A∧B は ⊤ となる。それ以外のとき、 A∧B は ⊥ となる。 A∧B は、日本語として「AかつB」などと表現される。連言とも。

∨: A と B が、いずれも ⊥ であるときのみ、A∨B は ⊥ となる。それ以外のとき、 A∨B は ⊤ となる。 A∨B は、日本語として「AまたはB」などと表現される。選言とも。

→: Aが ⊤ であり、かつ B が ⊥ であるときのみ、 A→B は ⊥ となる。それ以外のとき、A→B は ⊤ となる。 A→B は、日本語として「AならばB」などと表現される。条件法とも。
また、 A→B に対して、Aを前件、Bを後件という。

¬: A が ⊤ のとき、 ¬A は ⊥ となる。 A が ⊥ のとき、 ¬A は ⊤となる。 ¬A のことは、よく「Aではない」などと表現される。否定とも。

これらは、基本的に、日本語で言い表されるニュアンスと大きな違いはないが、選言と条件法については少し説明を加えておいた方が良いかもしれない。

「AまたはBを買ってあげる」というときの「または」のニュアンスについて、日常的にはAかBいずれか一方だけを指すことの方が自然だと思われる。このような意味での選言を、特に“排反的選言”といい、本項で先に定義したような選言を特に“非排反的選言”という。論理学ではこの2つの選言を、真理関数的に峻別する。

ちなみに、排反的選言としての「AまたはB」は、 (A∨B)∧¬(A∧B) と同値であり、その略記として A▽B と書かれることがある。

これと同様に、「AならばB」といったとき、日常的な感覚から違和感を生じやすいのは、前件 A が成立していない場合である。もちろん、本項の定義より、論理学における条件法は、前件が ⊥ のとき、後件が ⊤ であろうが ⊥ であろうが、 ⊤ となるのだが、これを日常会話としての「ならば」に還元した途端、前件が ⊥ のとき、その条件法自体が成立しなくなるような感覚が強くなるのである。

このような事態にあたっては、「 A の条件のもと B が成立する」という主張を否定するためには、 A という条件が成立するもとで、 B を否定するしかない、そして、否定の否定は肯定である、という理屈を意識すると、理解が円滑になると思われる。

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