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面倒くさがりのためのワークショップ論①:1色のサインペンと1色の付箋だけでワークショップは成立する説

最近も、企業さん向けにオリジナルのワークショップをつくっております。ワークショップって企画したことがある人はわかると思うのですが、結構準備多いしコストもかかるんですね。なので、コストも労力もかけずに、簡単にワークショップを実施する方法がありますよ、ということを書きたいと思います。


ワークショップの準備、けっこう手間じゃないですか?

早速なんですけど、結構手間じゃないですか?僕は手間です。とはいえこれでお仕事をいただいているので、僕はやらないといけないことの1つなんで、そうも言ってはいられないのですが。

どういう情報をインプットとして用意して、どういうプロセスのワークを設計して、そのために必要な備品はサインペンと色付きサインペンの12色セット、5色の付箋と、あとはワークシートを印刷して、タイマーの用意、あとはお菓子と飲み物も、、、なんてことをしています。

チームメンバーの後輩に「付箋は強粘着のやつね、あと、今回4色使うから予備も含めて5色セットのやつを用意しておいて」と依頼を飛ばしたりしているんですが、いつも設計しながらうっすらと思うことがあるんですね。

こんなにワークショップの備品っている???こんなに付箋の色いる???

ときには上司が「お菓子のチョイスや音楽の選曲も大事だ」なんて言われるんですね。もう大変。

一方で思うのは、ワークショップを開くのに1回1回ちゃんと準備しないとだめですよ、と負担やハードルを上げてしまうと、気軽にやりにくくなったり、何ならそもそも面倒くさいからやめようなんて声も出てくるんじゃないかと。

ワークショップで行われる共創そのものや、それによって得られるアウトプットの素晴らしさがもっと広がるといいなと思うので、そういう「いかに実施の負担やハードルを下げるか」という点についても考えたいなと思っています。

ということで、数多くのワークショップやファシリテーションをしてきた経験をもとに、最もシンプルなワークショップのあり方を考えてみたいと思います。これを読んでもらって、ワークショップなんかざっくり適当でいいんや、大事なことだけ押さえておけばいいんや、と思ってもらい、もっとカジュアルに実施する人が増えてくれたら嬉しいなと思っています。

※基本的に極論です。もちろんしっかり準備して、用途に応じたワークシートなり道具を用いた方がそりゃいいに決まっています。ご理解いただけ方はそのままお読みください。

結論:一色の付箋と、サインペンが人数分あればいい

もうタイトルに書いてしまっているのであれなんですが、結論これです。この2つだけでいいです。細かいことを言えば付箋は3Mの強粘着シリーズがいいです。(3Mのがいい理由はまたいつか詳しく書きます)

はい、これだけあればOKです。あとはもうこれで何とかなります。じゃあどうやるんだ、ってのをここから説明していきます。

背景:そもそも、なぜ複数の色の付箋が必要なのか?

サインペンはともかく、まず、付箋の色が不要というからには、なぜそもそもたくさんの色の付箋を使っていたのか、それはどういう機能があったのか、というところから話をしたいと思います。(興味ねえよって人は次の実践のところから読んでください)

情報の種類ごとに分けて整理する必要がある

例えば、あなたが顧客の声を拾ってきて、それをみんなで整理して、解決策を考えよう、ということになったとき、まずやるべきは、情報の種類をきっちりと整理することです。

たとえば顧客の情報を集めてくるにしても、以下のように厳密には情報の種類が異なります、
直接聞いた顧客の声
②データから見えてくる顧客の実際の行動
③顧客の声や行動から推察した誰かの意見
④顧客とのやりとりの中で現場の営業さんが気づいたこと

というように、同じ「顧客の声」という情報を集めてきたときに、上記のように情報が、よく見るとバラバラだったりするんですね。①は顧客が実際に発言した内容、②も顧客が実際に行動した結果としてのデータ、一方で③④は別の事実をもとに誰かが解釈や考察した内容なんですね。つまり限りなく事実に近いかもしれないが、事実ではないことなんです。

整理のなかで、情報をまとめる付箋を書く必要が出てくる

他には、ワークショップ中に近い種類の情報やアイデアをまとめていき、コンセプトやアイデアの方向性をまとめるシーンが出てきます。出した情報の上位レイヤーの情報を書きたい場合ですね。

例えば、オフィスの生産性を高めるアイデアをチームで出し合うときに、色々とアイデアが出たあと、近い情報同士のアイデアをまとめていきます。そうすると、「このアイデアはオフィスの環境を変えるアイデアだから、#環境、というくくりだね」という議論になり、「環境を変える」という付箋を新しく出すことになるのですが、その時に同じ色の付箋をならべるとちょっと見にくいんですね。

イメージ:どれがまとめの付箋?

なので、色を変えて「赤い色の付箋は、アイデアの方向性の付箋ね!」とすると超わかりやすくなります。

まとめ:複数の種類の情報を、わかりやすく可視化するためには、複数の色があったほうがいい

ということで、事実と解釈を分けましょうとか、アイデアのまとめをつくりましょう、というときには複数色あったほうがいいよね、と考えると、結果的に付箋が複数色いる、という話になるわけです。

要は、異なる質の情報を同じ情報だと誤認しないように、したいわけです。でも、それって付箋の色が同じでもできたりしませんか?というのが今日の僕の提案です。


実践:付箋が1色でも情報ごとに整理することはできる

この様な話を踏まえると、やっぱり色は複数あった方がいいじゃん、と思う人もいることでしょう。ですが、付箋はよほど複雑なワークショップでない限り、1色でいけます。では1色の付箋とサインペンだけでどうやって複数の情報を整理するか、ご説明します。

  1. ハッシュタグをつける

  2. 付箋をななめにする

  3. 文字を縦書きにする

  4. 文字に下線を引く

  5. 文字の最初に記号を書く

  6. 重要な付箋に、角を三角に塗る

  7. 付箋上部に線を引いて、強調する

  8. 付箋に黒枠をつくって、強調する

ほら、こんな感じで複数の情報を全部サインペンと付箋1色だけでできちゃいませんか?できちゃうんですよ。

例:複数の顧客ヒアリングから、情報を整理するワークショップのとき
ハッシュタグの記法で、顧客名をハッシュタグのあとに書く(例:#佐藤さま, #顧客A3)

例:類似アイデアをまとめてコンセプトを作りたいとき
付箋をななめにする記法で、コンセプト名を書いて、類似アイデアを斜めの付箋の下にまとめる

例:議論の中で、重要な発言が出て、それを強調したいとき
黒枠で囲む記法で、良い発言や案を黒枠で囲む

例:顧客の声と、担当者の気づきを分けて書きたいとき
解釈を書きたいときは、角を三角に塗りつぶすか、下線、上部の黒線の記法で書くようにする

みたいにすれば、解決できます。こうすれば、毎回たくさんの備品を用意したりコストをかけずとも簡単にワークショップが開けます。

他にも毎回ワークシートをつくって、印刷するのが面倒くさい!という人向けに、付箋でワークシートの代わりもできちゃったりするんですが、それはまた次回以降に。


まとめ:とはいえ、付箋は複数の色があったほうがやりやすいし、ペンの色も複数あったほうがいい

ということで、多忙のストレスから極論をぶちまけてみましたが、どうですか、気づきませんか?

こんなことするくらいなら、複数色の付箋用意したほうが楽だろ、と。

そうなんです、実際にやってみることを考えると、付箋もペンも複数色あったほうがいいです。1色のサインペンで情報を整理しようとすると、書く側=参加者側がまあまあ面倒くさいんです。

記載のルールを忘れて書いてしまって情報の種類がごちゃごちゃになったり、ルールに則って書くことそのものがストレスになって満足度下がったりもします。

そもそもワークショップは、集団の共創を通じて、一人では辿り着けない答えに辿り着くためのプロセスなので、参加者が素晴らしいアイデアや気づきを生み出せるよう、1人1人の快適な体験ややりやすさをつくることや、発想に関わるストレスをなるべく取り除くことが重要なのです。

とはいえ、途中に書いたように、毎回毎回、丁寧に準備していると開催自体が億劫になってしまう。なので、参加者のUXも大事ですが、負担を抱えずにワークショップをやる方法を知っておくことも重要かなと思います。

あと、急遽ワークショップ的に考えてみようとなったときに、たまたま会議室にある付箋が一色しかない!とか、サインペンが黒しかない!みたいなことも起きたりしますし。

ということで、いつもワークショップ主催側で準備の負担に悩む皆さん、時にはこうやってシンプルなワークショップのやり方もありですよ、とお伝えしておきます。良い共創の機会を。それでは。

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