ニュージーランドの選挙はマオリ政党が勝つ可能性すらある
昨日増田になんとなくニュージーランドの選挙について書いた。今回の選挙でおそらくレイバーもナショナルも右派、左派で連立をしたところで過半数を取ることができなくなる目算が高くなり、結局今回もウィンストン・ピータース率いるニュージーランドファーストにいいように操られて終わる可能性が高くなってしまった。
増田の記事は気分で削除するので概要だけ上に書いておくことにした。
ニュージーランドの選挙制度、といっても日本と同様に有権者が投票を行って政府の形が決定される。
日本と違うのは、有権者の登録をウェブサイトで行えるという点や、投票所があるのではなく、そこかしこに設置された投票箱に投票を行うことができるという点だろうか。
現時点ではジェネラル・エレクションが終わった状態であり、現時点での議席数は以下の記事に記載がある。
https://elections.nz/media-and-news/2023/election-night-results-for-the-2023-general-election/
今回のジェネラル・エレクションは、レイバーに対して国民がバツを与えた、と言われるようにレイバーがかなりの数の議席を減らしている。
増田にも書いたが、ナショナル+ACTが現時点で61議席とちょうど半数の議席を獲得している。レイバー+Greenが48議席であり、ニュージーランド・ファーストが8議席、マオリ政党が4議席だ。
この状態からSpecial Vodeが行われることになるが、Special voteは大体の場合左派政党に有利に働いている。
Special voteは譬えば在外ニュージーランド人の投票が行われるが、これが大体50万票あり、有権者の2割に達する。ニュージーランド人はかなりの割合が海外に在住しているということでもあるが、大抵の場合個のSpecial voteの結果を受けてナショナル陣営は過半数を失うだろうというのが大方の予想だ。
これはSpecial Voteの投票者たちは左派陣営に投票することが多く、これによって議席を失うのが右派陣営だからだ。この議席数は大体1〜2議席となっている。
つまり、現時点でちょうど50%の議席数しかない右派陣営は議席数が50%を下回ることになり、今回の選挙も過半数を獲得できない政党ばかりになってしまい、与党が決まらなくなってしまう。
前回はレイバーが単独過半数の議席を手に入れていたためにこの国は大変なことになった。前々回は単独過半数の議席を手に入れた政党がなくなったことでニュージーランドファーストがキングメーカーとなったことで大変なことになってしまった。
今回の選挙結果が一体どうなるのか、だが、Special Voteの結果を受けて仮に右派が2議席を失った前提で考えてみる。
まず、先に言っておくのはナショナルはすでに連立の根回しを始めているということだ。
Special voteの結果以下のようになる。
左派が50議席
右派が59議席
マオリ政党が4議席
ニュージーランド・ファーストが8議席
仮にニュージーランドファーストが左派と連立を組んだ場合、左派が58議席、右派が59議席とバランスしてしまい、国のやることがすべてマオリ政党次第になってしまう。
これがニュージーランドファーストにとってもメリットがあるならば、左派に行くことはありうるが、右派も左派も全く得しない結果になるから疑問符はつくが、ウィンストンピータースからすれば「左派に合流して国会をひっかき回せる」というのはかなり強力なカードかもしれない。
つまり、これを立てにナショナルにかなりの手土産を要求できる可能性すらある。
改めていうが、ウィンストン・ピータースはニュージーランドが崩壊してもなんとも思わない程度に肝が座っていると見られるので彼は必要とあらばこのカードを切ることだろう。
前回レイバーがナショナルに連立政権を申し込んだときは、ウィンストン・ピータースに副首相の座を手土産にしたが、当時の首相ジャシンダ・アーダーンは育児休暇を取得することが確定していたので、事実上「何ヶ月かニュージーランドを差し上げます」という手土産で連立を組んだことになる。
ニュージーランドを差し上げられたウィンストン・ピータースが一体どういうことをしたかは定かではないが、この頃に移民制度が凄まじいレベルで崩壊し、未だに後遺症に苦しんでいる。
しかもウィンストンピータースは「移民大臣じゃないのかよ」と文句すら言っていたので、もしかするとナショナルは移民大臣の座を手土産にニュージーランドファーストに近づくかもしれないが、もしそうなれば本格的にこの国は崩壊することになる。
それが何故か、という話だが彼らの移民政策ははっきりいうと移民隔離制作だからだ。
ここの移民政策には以下のようにある。
Replace the Accredited Employer Worker Visa with a Critical Skill and Labour Shortage Visa to ensure that Kiwi workers are at the front of the job queue
Guarantee that immigration policy is based on New Zealand’s interests such as meeting critical skill gaps
Maintain parent category visa cap at 1000 and ensure that sponsors can adequately support and fund their family during and after migration
Develop strategies that encourage regionally dispersed immigration so that it lessens the burden on already overloaded urban cities
Introduce a ‘rural visa scheme’ that will apply to communities of less than 100,000 residents, while placing into law an obligation for migrants to stay in their specified place of settlement until, and two years after, they have secured permanent residency
まず、仕事はニュージーランド人が優先して手に入れるべきだ、と言っているが、これは外国人へのワークビザの発給をもっと困難にすべきだ、と言っている。次に、特に人材が不足している分野にのみ移民を認めるべきだ、と言っている。
この二点は正論を言っているようだが、ニュージーランドに移民がなくてもやっていけるほど優秀な人材が揃っているかというと全くそんなことはないので、企業は人材確保に苦しむということになる
ペアレントカテゴリーというのは永住権保持者が親を永住者として招待できるという制度であり、今でもかなりのお金が必要になるが、おそらくこれが「一生面倒を見きれるかどうかを今証明せよ」というくらいの厳しさになるだろう。
この3つはどう運用されるかは別として間違ったことは言っていないように見えるが、この後に2項目が特に恐ろしい。
ニュージーランドファーストの移民政策は「ニュージーランドの限界集落に人を放り込んで耐えきったやつにだけ永住権をくれてやる」という色合いが濃い。かなり悪意に解釈しているが最後の1項目がこれに当たる。
人口10万人を切る場所はそもそもインフラすらまともに整備されていないが、そこに2年間滞在したらパーマネント・レジデント・ビザを発給する、と言っている。これの意味するところはなにか、というと前々回の政府のときにいじめ抜いたがそれでも耐え忍んだ移民たちに止めを刺そうとしている、ということでもある。
ニュージーランド・ファーストはパーマネント・レジデント・ビザを手に入れるには10年かけさせるべきだ、と言っている。この政策が実現するならば、留学し、ポストスタディワークビザで就職して2018年に永住権の申請をした人たちは10年かかる計算になる。
2018年に移民制度が完全に崩壊し、金持ちばかりを優遇するというあからさまな差別政策となり、ここで耐え忍んだ移民たちが2022年にCOVID Responseビザという「ご褒美としての永住権」を手に入れた。
この時点で彼らの努力や忍耐が全く顧みられなかったが、それでも2024年になればパーマネント・レジデント・ビザが手に入る、と思っていたところで彼らは「2024年から2年間僻地で暮らしたらパーマネントレジデントビザを与える」と言っているのだからあまりにも露骨だ。2024年は彼らがパーマネント・レジデント・ビザを申請し始める都市でもある。
なぜ2018年の移民をここまで冷遇するのかはよくわからないが、この政策が実現すれば、2018年から2026年までの8年間をパーマネントレジデントビザ獲得に費やす羽目になる上に、2018年の移民たちがビザについてはかなりダメージを受けているので、いよいよ諦める人が増える可能性はある。
更に言うならば、2026年に申請ができるのか、2024年に申請しても2年待たされるのかはわからないが、問題になるのは彼らのビザだ。
レジデントビザは発行後2年たつと再入国ができなくなるからだ。つまり、2026年まで申請できないならば、移民局が何も対策を取らないなら更に2年間ニュージーランドの、しかも僻地に閉じ込められることになる。
2024年に申請しても2026年まで間違いなく待たされるならば、その間のインタリムビザがどうなるかという問題が出てくる。レジデント・ビザは期限はないので問題ないかもしれないが、再入国ができなくなるということは、家族の不幸や治療の必要があって帰国する場合にどうなるのかとなってしまう。
すでに仕事をしている移民は多いが彼らが退職せざるを得ないようなコンディションを設定してくる可能性すらある。詳細については何も言っていないからだ。
ニュージーランドファーストが力をつけることが以下に恐ろしいのか、を書いてみたが現時点で移住を考えている人々は今後もこの政党が政府を牛耳り続けることをよく考えるべきだろう。
そういうわけでニュージーランドに来ることはおすすめしない。
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