ニュージーランド与党の支持率が30%台という大問題

今週末はニュージーランドでも数少ない祝日のある三連休だったのだが、凄まじい雨によってオークランドはそこかしこで洪水が起き、数名の死者を出す惨事となってしまった。

動画サイトではそんな雨の中で楽しそうに遊んでいるキウィがやたらとクローズアップされていたが、おそらく災害でも何も起こらなかった富裕層が悪ふざけをしただけだと思っている。

ニュージーランドでは富裕層は何故か高い場所か海が見える場所に住みたがる傾向がある。なぜかはわからないがヨーロッパ時代からの伝統であると言われているようだ。

少数の富裕層が豪華な家に住んでいる現実を尻目に貧困層は凄まじい住環境にひしめいて暮らすことを余儀なくされており、これまでのコロナ対策によっておびただしい数の人々がホームレスを経験するなどしているが、このようなことも特定貧困地域の特定民族で集中的に起きているため、ほとんどの人の目に止まることはないのかもしれない。

いずれにせよオークランドの治水性能はそれほど高くないが、これまでの統計情報絡みても桁外れだった今回の雨によって起きた洪水については致し方なしではないかと思うが、脱炭素社会、温暖化、と言ったことを標榜しているのであればそのへんのシミュレーションはしておいても良かったのではないかと無理やり文句を言うこともできるが今回ばかりは何も言わない、一刻も早い復旧を望むのみだ。

これはオークランドの治水がうまくできていると言っているわけではないことは予め言っておく。

今回の豪雨によってオークランドの土壌が吸い込んだ水分はもはや飽和状態であり、次に少し雨が降るだけでも災害が起きるリスクが指摘されている。これは日本でもよく言われる現象と言っていいだろうが、それによって、学校は来週火曜日までの閉鎖を余儀なくされた。

そんな災害のさなかに支持率投票が行われたようだ。クリス・ヒプキンスが首相に就任した直後に支持率を確認することができる。

これによると以下の結果が出たようだ。

  • レイバーの支持率が38%であり、ナショナルが36.6%

  • クリスヒプキンスが首相であることについては23%が賛成、ナショナル党首のクリストファー・ラクソンは22%とどちらも悲惨

  • ACTは支持率が10%、Greenが7%、そして我らがニュージーランド・ファーストが2%

  • マオリ党が1%

この支持率の懸念する点は何だろうか?それはマオリ党やニュージーランドファーストがまたもやキングメーカーになるかもしれないという点だ。

ニュージーランド議会には議席は120ある。ナショナル・ACTが60、レイバー・グリーンが58、マオリが2で120ということになるのだが、これはニュージーランドファーストが議席を手に入れない計算になっている。

先程のPollの支持率で議席を割り振るとどうなるか?

  • レイバー 45

  • ナショナル 43

  • ACT 12

  • Green 8

  • ニュージーランドファースト 2

  • マオリ 2

8議席足りないがこれは小数点を切り捨てた分とどこも支持しないいわゆる浮動票分だ。

これで計算をしてみよう。

  • ナショナル・ACT 55

  • レイバー・Green 53

見事に前々回の選挙を再現している。浮動票が一体どこに行くのかということも当然さることながら、この2グループが拮抗するほど特をするのがニュージーランド・ファースト政党でもあるし、今回はここにマオリ党も絡むことができる。

つまり、「明らかに与党になれる支持率を持った政党がいまいないが故に次の選挙はまたしてもウィンストン・ピータースのおもちゃにされる可能性がある」ということだ。

前々回の選挙では、産休が確定したジャシンダ・アーダーンがウィンストン・ピータースを副総理にして産休の間国政を任せるという破格の手土産を持っていったように見えているが、本人は「別に総理の立場なんかほしくない、ほしいのは移民大臣だ」と手土産はしっかりもらいつつも思いきり不満を口にしていたので、もし次の選挙でニュージーランド・ファーストがキングメーカーになればいよいよ持って移民大臣の座を土産にする可能性すらある。

レイバーは特に移民に対しては反対の立場を持っているため、移民大臣のポストを明け渡す可能性が高く、ナショナルはその逆だが、次も与党になれないとなるならば、「後でどうにかすれば良いんじゃないか」と言うくらいののりで移民大臣を明け渡す可能性があるし、もしかすると「移民大臣を渡せばアイツラはこっちに来る」というわけのわからない論理で2大政党が動いてしまい、ウィンストンピータースが移民大臣だけでなく更に何かしら手に入れてしまう可能性すらある。

ニュージーランド・ファーストの反移民ポリシーは全政党の中でも軍を抜いている、と言うよりは明確に反対の立場を示している。

他の正統は国政政党であり、移民というものの現実を理解しているので「バランスの取れた移民政策を」としか言わないが、彼らは「永住権を取れるまでは最低5年は必要」であるとか「全キウィを調べてそれでもいないなら初めてワークビザくらい厳しく」というようなことを言っている割には、学生ビザはガンガンに出そうとするなど、どう考えても外国人を食い物にしようとしているようにしか見えない。

日本の政党についてはよくわからないが、ニュージーランドの政党は「言ったことはやろうとするし、可能なら実現させる」が基本路線なので、ウィンストン・ピータースは仮に国が滅ぶとしてもやるだろう。

つまり次回の選挙で最も重大なのは、ニュージーランド人が「もうキングメーカーは作らない(そしてもうレイバーには投票しない)」と決断することが大事だが、かと言って安定多数をナショナルが取ればやりたい放題なので、大体6:4くらいで議席を分けるのが良いのではないだろうか。

万が一ニュージーランド・ファーストが移民大臣の座をとったら何が起きるだろうか?

例えば、今の永住権審査は一旦全てキャンセルとして改めて申請し直せ、ただし新しい基準で、というようなことすらするかもしれない。また、Resident VISAからPermanent Resident VISAへの切り替えについても異常に厳しいルールを設定する可能性すらある。

例えば今は2年間に渡って年の半分以上生活すれば良いところを5年間に渡って年の80%以上にするなどだ。

また、Permanent Resident VISAを取得したが海外にいる人たちのビザを一気に無効化する可能性すらある(今は無効化されることはない)。

もしこうなればニュージーランドという国はこれまで以上に牢獄と化してしまうことになるので、これから移住を目指すという奇特な人がいるならば次回の選挙には注意したほうが良いだろう。

そういうわけでニュージーランドに来ることはおすすめしない。

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