授乳が大変すぎて、“おっぱい”について調べてみた
事の発端は、乳腺炎になったこと。
乳腺炎とは母乳をつくる乳腺が詰まったり細菌に感染したりで炎症を起こす事、授乳をはじめて日が浅い人がかかりやすく授乳中の約3割の方が罹患するという。
大きめの白斑を助産院で開通させてもらってなんとか切り抜けられたかなと思った矢先、わたしの場合はおっぱいの付け根の腋に近いあたりが痛み出してあれよあれよとおっぱい全土に広がった。身体を動かすすべての筋収縮がおっぱいに連動しているようで、何をしてもおっぱいが痛む。
見事な連動具合で笑けてくる。
そして案の定39度を超える熱を経たタイミングで流石に医療の力を借りて抗菌薬にて鎮静化を図る。熱は引いたもののおっぱいが部分的に赤くなり、あぁ、本当に炎症してたんだなとしみじみした。
全身の筋収縮をおっぱいで感じていたとき、熱が少し引いてきたタイミングで、ふと「何でこんな苦しまなあかんねん」という思いが沸々と湧いてきた。
「乳腺炎ってそもそも何ぞ」
「他の哺乳類にもあるのかこれは」
乳腺炎についてはインターネット記事や体験談も数多くでているけど、「乳腺炎ケアガイドライン2020(一般社団法人日本助産学会)」が症状について、経過時間別の対応の判断ポイント、症例と必要な処置がわかりやすくまとまっていた。いつの時点(どういう症状の場合)でどこに相談すればよいのかの参考になるのでおすすめ。
▼乳腺炎ケアガイドライン2020
https://www.midwife.or.jp/user/media/midwife/page/guilde-line/tab01/nyusenen_guideline_2020_2.pdf
ここからPDFで全部読める
他の哺乳類もやはりヒト同様に乳腺炎には悩んでいるようで、イヌ、ネコだけでなくモルモットやハムスターも症例は出てくる。
原因もうつ乳(おっぱいがたまること)と細菌感染の両方があるのも同じでヒトよりも衛生面から細菌感染由来が多い印象であった。
そして特殊なのは、牛。そう乳牛。
子以外に飲ませるために乳を出してくれている。時折牛乳が生産過剰になって消費行動を促すニュースがでるが、その深刻さがようやくわかった気がする。おっぱいは溜められないのだから、出さねばならぬ、飲まねばならぬ。
牛よ、ありがとう、、
牛の乳房炎は感染性細菌のものもありそれらは一つの乳首から始まりその上下左右と個体全域にそして別の個体にと、広がっていくようで生産量の激減につながるので畜産農家さんはさまざまな手法でスクリーニングをしているそうだ。
おいしい牛乳には牛と農家さんのたゆまぬ努力があるのだ。
畜産農家さん、ありがとう、、
そして面白いのがおっぱいの成分。
その生き物の生存戦略が授乳スタイルとおっぱいの成分に表れてきている。ヒトやウシ、ウマは水分が80%の薄いおっぱいだけど、タテゴトアザラシは水分が40%以下の濃いおっぱいだ。これは生まれた子どもの生育環境に関わっており、ヒトウマのようにゆっくりと親と共に成長していく場合と、寒冷地や海の中などの環境で素早く皮下脂肪をつけていかなければならないことの違い。
また冬眠中に出産するホッキョクグマやヒグマはおっぱいの栄養分が糖質ではなく脂質が多くこれは冬眠中で食事をとらない親クマの血糖値を下げない工夫なのだとか。
ちなみに授乳期間が4日で終了するズキンアザラシは授乳を通じて母から子どもに10キロの体重移動があるらしくて考えるだけでげっそりである。
これらの話は帯広畜産大学の浦島先生が研究されており他にも同じ霊長類でと子育てのスタイルにより成分が異なったりなど面白い例がたくさん紹介されているので興味ある人は以下記事を読んでみてほしい。
うさぎタイムズ
〈特別寄稿〉うさぎの濃いおっぱい(浦島匡)
https://www.ferret-link.com/usagitimes/milk/
乳を与えて子を育てること、吸われると出るという仕組みは単純だけど奥深い。
今回はヒト以外の動物について思いを馳せてみたけど、ヒトの文化的な背景による違いとかも調べてみたいなと思った。
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