芝居の可能性と生み出した物語への愛 〜『池袋裏百物語』〜 ①
9月12日に行われた朗読劇『池袋裏百物語』の昼公演をアーカイブにて観劇した。本当は実際に現地で公演を観たかったものの、このご時世でワクチンもろくに打てていない状況なので、やむを得ずオンライン配信の視聴となってしまった。それでも、とても満足感のある作品だったので感想を書き記しておきたい。
インターネット上の“呪い”を蒐集している「都市伝説ゼミ」の明烏准教授と助手の久陽のもとに、山本と名乗る男が訪れた。
山本は、ダッカという配信アプリで人気の「池袋裏百物語」の配信主・エドにかけられた呪いを解いてほしいという依頼を持ちかける。
エドの配信が、数年前に実際にあった「池袋百物語」の再現であることに興味を持った明烏は、百話目が語られるという劇場に向かうが――。
(上記公式HPよりあらすじ引用)
俳優陣の芝居に痺れた・・・
12日昼公演の出演声優陣は以下の通りである。(敬称略)
・明烏准教授:下野紘
・久陽(明烏の助手):林勇
・江戸:榎木淳弥
・桜庭:狩野翔
・山本:天﨑滉平
明烏と久陽は、さながらホームズとワトソンのような関係。物腰柔らかで聡明、でも他人を寄せ付けないような若干の危うさも感じさせるような明烏。それに対して、我々観客と同じ目線にあり、ときどき「カットイン」して明烏の話をわかりやすくかみ砕いてくれるのが助手の久陽といった具合だ。
そしてそれらを見事に表現している、下野さんと林さんのお芝居が素晴らしい。最近某アニメの影響で「汚い高音」のイメージが定着しつつある下野さんの、穏やかな語り口という珍しい引き出しを見せて頂いたのと、林さんの演じる親しみやすそうな感じの久陽が個人的に好きな感じだったのもあり、とても良いコンビを演じ上げておられた、という印象を持った。
江戸の「池袋裏百物語」配信をプロデュースする、ガラの悪い、チンピラのような男、桜庭を演じるのは狩野翔さん。これは個人的な事情になるのだが、私は最近アイドルマスターSideMの3rd LIVE(幕張公演)のBlu-rayで朗らかな笑顔でソロ曲を披露していた狩野さんを観たばかりだった。とてもじゃないが同一人物とは思えなかった。お恥ずかしい話、狩野さんのお芝居のイメージがSideMのキャラクターのイメージで固定されてしまっていたので、これを機にもっといろいろなお芝居の引き出しを観てみたいなと思った。
また、天﨑さん演じる、江戸の配信の熱狂的なファン、山本のネット弁慶陰キャ感もとてもよかった。江戸に心酔するあまりオタク特有の早口で隙あらば推し語りしてしまう感じとか、推しの為にやってあげてるみたいな謎の使命感に囚われている感じがリアルに「やっかいなオタク」で、自分のオタクライフを反省した。そんな彼のオタクムーブも物語の流れをがらりと変えることになるので、これからアーカイブなどを観る方は心して観て頂きたい。
林さん、狩野さん、天﨑さんに関しては、まだどのようなお芝居をされるのか未知数なところがあったので、この作品が3人のお芝居に触れるきっかけになったし、下野さんに関しても、この作品を通じて私の中のイメージとは違う方向性のお芝居を観ることができたので、非常に収穫のある体験となった。
さて、まだ語っていないキャストが1人いるが、ここからは本編の内容に触れる可能性があるのと、熱烈な推し語りが始まってしまいそうなので、ここで一旦区切りとさせて頂きたい。
>その②へ続く。
※9月20日まで全公演のアーカイブが購入・視聴できるので、ご興味ある方は是非…
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