世界五分前仮説と陰毛

陰毛が生えたのは何歳くらいの時だったっけというのが思い出せない。

いつ生えたんだろう。

多分小学生の高学年から中学生になるあたりのどこかだとは思うが、はっきりと覚えていない。

陰毛が生えるというのは思春期の少年にとって大事件であったはずなのに、そのあたりのことを全く覚えていない。

陰毛が生えた記憶がないのだ。

陰毛が生えてきた記憶がない、ということはだ。

もしかしたら僕にはまだ陰毛が生えていないのではないか。

そういう風に考えることもできる。

しかし僕は成人男性だし、パンツを下せば今実際に陰毛が生えていることを確認できる。

つまり、いつの間にか陰毛が生えていた。

そういうことになる。

世界五分前仮説、というのがある。

この世界は五分前にボヨヨーンと突然始まったんだぜ、というのを否定することができない。

そういうやつだ。

いや5分より前の記憶がある。そう思うかもしれないが、お前にその記憶が植え付けられた状態で5分前にボヨヨヨ〜ンとできたかもしれんだろ。

と、そういうやつだ。

話を陰毛に戻そう。

この陰毛は5分前にニョキニョキ生えてきた。

僕はその説を否定できない。だっていつ生えたか正確に覚えてないから。

6分前までは陰毛がなかったんじゃないか。

5分前に陰毛がニョキニョキ生えてくると同時に、今まで陰毛が生えていたような偽の記憶が脳に形成されたのではないか。

5分前まで僕には陰毛がなくて、銭湯なんかに行くたびに

「あいつ陰毛無いなあ」

などと思われていたのかもしれない。

僕は銭湯にはよく行くが、その度に自分の陰毛の確認なんか別にしていないことに今気がついた。

前銭湯行った時、陰毛あったっけ？

さっきトイレ行った時は？

当たり前のようにあると思い込んでいたけど、確認はしてないぞ。

あったっけ？

なんだか怖くなってきた。