ウォーハンマーRPG第4版用シナリオ「Forest of Hate」感想兼レビュー
当然ながらネタバレ注意。Cubicle7から2023年10月に発売されたウォーハンマーRPG第4版シナリオ、「憎悪の森(私家訳)/Forest of Hate」をGMした記念で、感想をかねたレビュー記事を残します。PLとしてセッションにご参加頂いたAMTさん、にわりんさん、りおさん、黒影さん(順不同)、ありがとうございました。
環境
オンラインボイスセッション。ソフトはFVTTを使い、プレイタイムは3人~4人パーティで合計約10時間程度かかりました。ペースとしてはかなりゆっくりめに回したつもりなので、他グループだともう少し短くなるかも。
良いと思った所
・貴重な4版の「2番目のキャリア」用単発シナリオ
・エルフ、人間、ドワーフの異文化衝突を味わえる
微妙だと思った所
・本編の構成、レイアウト
・NPC画像の少なさ
【良い点1】:これが欲しかった!かゆい所に手が届くレベル帯
公式シナリオとしてかなり珍しいレベル帯用に作られているのが嬉しい。筆者は「ユーベルスライク冒険集」の掲載シナリオを繋いだキャンペーンを運営している。一人のPCがウッド・エルフ(貴族)で、XPが溜まり二番目のキャリアに就くキャラクターがパーティ内に何人かいる状態だった。そんな時に、ウッド・エルフを主観に置いたこのシナリオが発売されたため、無理を言ってこのシナリオをキャンペーンに挟むことにした。少なくともウォーハンマーRPG4版のCubicle7(以下C7)公式から発売中であるUbersreik Adventuresシリーズなどの単発シナリオ群を眺めてみると、「キャラ作成+初の冒険」の抱き合わせが流れ的に自然で美しいせいなのか、PCが金欠で冒険の動機付けが容易なためか、最初のキャリア用(0~875XP)に難易度が調整されたものが多いように見える。なので本シナリオは、そんな数回単発の冒険を終えたPC達が遊べるシナリオを探すGMにとって良い選択肢となる。筆者は以前、GMとして2版の「呪われし道」キャンペーンを4版にコンバートしたのだが…2版で複数回攻撃をもつクリーチャーを4版でどう表現するかなど、今一つ難易度調整が分からず、戦闘があまり手ごたえが無かったように思えた。データ面はC7から無料公開されている能力値や技能・異能コンバート資料によりカバーされていたが、そのような戦闘の肌感覚は実際に2版をプレイしないと得られないだろう。というわけで、中級以上での戦闘難易度調整については迷子になっていたのだ。だが、このシナリオは現行版の良き難易度指標となり、だいたいの感覚はつかめたと思う。
【良い点2】:疫病と種族間の確執を重点に置いたプロット
森を歩きまわるだけなのに、面白い冒険になるのか?などと最初は思ったが、そんなことは決してなかった。このシナリオの大まかな筋立ては次の通りだ:エンパイア北方、ノードランドで最近、疫病騒ぎが起きている。PC一同は慈悲の女神・シャリアの修道士から治療薬の捜索依頼を受け、ウッド・エルフが住まうローレローンの森に向かう。PCたちはノードランドの人間とエルフ間の政治的緊張やバラまかれるプロパガンダ、疫病の感染リスクといった困難を乗り越えて治療薬の発見と、疫病の真相を究明しなければならない…。
舞台の森林地帯は滅多に人間の前に顔を出さない(エンパイア全土の人口比で約1%!)、ウッド・エルフの居住地で魔力が満ちている。そのため、他種族との文化的な確執が期待され、また混沌に近しい魔法の存在が身近で予想のつかなさがよく現れ、地域設定が大変魅力的だ。シナリオの背景を読むだけでローレローンのウッド・エルフ(エオニルと言うらしい)や土地の歴史に少し詳しくなれて、得した気分になった。
【不満点1】:本書の構成
ここでこのシナリオの不満点を述べよう。GM中、このシナリオ本文を読んでいて情報の参照性に難を感じた。本書の構成は大まかには以下のようになる。副書としてハンドアウト、ローレローンの森の地図(PL用/GM用)が付属する。
1.背景情報
2.冒険中に行ける各拠点情報
3.遭遇
4.付録(治療薬や病気のデータ、ノードランドで行える冒険外活動など)
5.NPCとクリーチャーのデータ
本シナリオはサンドボックス形式のため、一部のイベントが場所によらずどこでも起こせるような、GMのカスタマイズ性が高い仕組みになっている。そのため意図的に2と3が分けられていると考えられる。一外に何が良いなど確たることは言えず、GMによって好みが分かれる所だと思うが、個人的には2と3に分けられている内容を精査するか、もう少し記載位置を考えてほしかった。また、PCが〈世間話〉噂話の表も普通の物理本ならまだしもこのシナリオは2024年3月現在pdfのみの販売なので、すぐにページをめくれるようにできていない(しおりはあるが…)。そんな仕様なのに、イベントを構成するために必要な情報が〇ページの左段末行、この拠点の情報は〇×ページの右段中央などというように散っているため、冒険を準備する時はやりたくないパズルゲームをやらされ、煩わしく感じた。
【不満点2】:NPCの画像が少ない
NPCのキャラ画像のラインナップが欠けていると感じた(特に悪役側)。プレイグベアラーのムルチロット/Mulch Rotやケイオス・スポーンに変異した後のダールローハン/Darlorhanの画像は流石に欲しかった。サンドボックス形式なので、戦闘が起こらない可能性があるからそこを考慮したのかな?でもそれならノードランド林業ギルドのギルド頭、オズワルト・コシェラー/Oswalt KoshelerはPCとほぼ必ず接触するし、やはり不足感が否めない。
この冒険のセッション準備に関するポイント
GMとして冒険のオンラインセッションを運営した経験に基づいて気付いたポイントやアドバイスを以下に記載する。私的にプレイする前提で書いたので、配信などで収益化を考えているなら、著作権上クリアな画像素材を集めるなど、一部違う方式を考える必要だろう。
・シナリオの記載通りに遊ぶなら、拠点情報と、そこで起こす遭遇をメモ書き程度であらかじめ組み合わせておき、大まかなフローチャートを描いておく。作れるなら、pdfで個人的なしおりを作るなど、とにかくボタンひとつでイベントの全容が参照できるようにすればOK。筆者はOnenoteを利用しました。特に序盤の拠点となるフォーストファスト砦/Forstfastと、西のエルフの聖域に行ける崩れた橋/Fallen Bridges、コル・イマモール遺跡/The Ruin of Kor Immamorは頻繁にパーティが訪れる可能性の高い場所であるが、意味なくそこでしか起こりえない描写・イベントと、施設の情報が離れた所に記載されているので、それをひとつにまとめることをオススメする。
・一部を除きNPCの顔画像が無いので、それっぽい画像をネットで検索して探そう。疫病を撒く手助けをしたノードランド林業ギルド/Nordland Forester Guildのギルド頭、オズワルト・コシェラー/Oswalt Kosheler、邪神ナーグル/Nurgleのレッサーディーモンであるプレイグベアラー/Plague Bearer、ケイオス・スポーンに変異後のエルフの大魔導士、ダールローハン/Darlorhanの画像はpdfに載っていないが準備しておいた方が良い。絵が描けるGMなら、アシュリアンの息子団/Sons of Ashrylanの白黒を基調とした半仮面のエルフレンジャー姿(説明文だけでカッチョいい)は、是非とも挑戦してみてほしい。当然、"wood elf ranger"で検索してもらった画像でも問題ない。
・プレイグベアラーやツリーキン/Treekinは原作ゲームのウォーハンマーファンタジーバトルや40kのコマの写真を利用すると良いだろう。プレイグベアラーは特に最近発売された、マジック・ザ・ギャザリングの40k統率者用セットに混沌の軍勢クリーチャーとして、美麗なイラストとともに収録されているので、チェックしても良い。このシナリオのプレイグベアラーは全員剣(プレイグソード)を所持しているので、画像は剣のような武器を持っていればベスト。ツリーキンはエイジ・オブ・シグマーのものも見つかりやすく良いかもしれない。
・森の精、スパイト/Spiteも登場頻度が高い。説明文では枝でできた小さなエルフや、甲虫の姿をしているとのことなので、stickman とかで検索かければ割と見つかる。絵にこだわらなければ、映画ブレアウィッチプロジェクトのスティックマンも(動画や画像が結構転がってるし)良いかもしれない。混沌の影響を受けた「狂ったスパイト/Maddened Spite」は説明文を見る限り、ヴィクトリア湖の蚊柱やスズメバチの画像などでも良いだろう。
・筆者のように戦闘には各クリーチャーのコマを置き、D&Dのようなスクエアマップを多用する場合のアドバイス。序盤の戦闘マップについてはランダム遭遇用に森っぽい背景が一枚あれば十分だろう。マップを自作するなら、隠密を多用したいPC向けに隠れられる茂みをいくつか用意してあげよう。黄金森/Golden Woodも用意するなら、安直に同じ森のマップ画像を黄色っぽく色調補正するだけでそれらしくなる。そもそもそんなに戦闘は発生しないはずなので、使用頻度は低いはずだが念のため。最後の戦いの舞台となりうるアメンヴェール/Amenveilと腐れ森/Tainted Woodは可能ならば用意するべきだ(アメンヴェールはシナリオに図があるが、戦闘マップというより施設の地図、といった趣き)。腐れ森は邪神ナーグルを彷彿とさせる淀んだ緑で単色化。別レイヤー(win11のペイントなら、なんと画像を複数レイヤーで扱える)でカビの画像を透明度を上げて散らすのも面白いかもしれない。
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