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日本のデザインにおける「間」 空白が生む美しさ
おはようございます! ウェブデザイナーのYoshiです。
デザインにおける「余白」についての記事を少しシリーズ化して書いていこうと思っています。「余白」ってホントに抽象的でわかりにくいですが、その中にデザインの本質があるような気がして、なんか自分の前職の作業療法士の思考と似ているなと感じることがあります。
ちょっとこれは、話すと少し長くなりそうなので、機会があればお話しできるといいと思っています。
気を取り直して、今回は、日本のデザインにおける「余白」「間」について考えていきます!!
1. 日本文化に根ざした「間」の考え方
静かで落ち着いた空間に身を置いたとき、何とも言えない安心感や心の安らぎを感じたことはありませんか?それは、日本のデザインに根付いた「間(ま)」という独特の美学に触れたからかもしれません。
「間」とは、物と物の間に生まれる余白や空間のことです。ただの「空白」とは違い、その中に豊かな意味が含まれています。たとえば、茶道では、簡素な空間とわずかな装飾で、静けさや集中が引き出されます。この「余分なものをそぎ落とす美学」は、日本ならではの感性といえるでしょう。
また、能楽の舞台では、音や動きの「間」が大きな意味を持っています。ただ沈黙しているわけではなく、観る人に想像の余地を与え、その瞬間を特別なものにしています。このように、日本の「間」は物理的な空間だけでなく、時間や心の中に生まれる余韻を大切にした考え方なのです。
2. 「間」がつくる空間の静けさ
「間」がつくる静けさや調和は、日本の建築や庭園デザインによく表れています。たとえば、障子や襖(ふすま)は、光を柔らかく通しながら空間を仕切るアイテムです。完全に区切るのではなく、ふんわりと「曖昧に分ける」ことで、空間全体がつながりを持つようになります。また、窓から見える景色も、額縁の中の絵画のように美しく設計されています。
庭園ではどうでしょうか。枯山水(かれさんすい)庭園を思い浮かべてください。石と砂利だけで表現されたシンプルな景観ですが、そこには静けさと壮大な自然への敬意が感じられます。この庭園の魅力は、実際に何かが置かれている「部分」だけでなく、その間に生まれる「空白」にあるのです。余白を活かしたデザインだからこそ、見る人が自由に意味を感じ取り、心を落ち着けることができるのです。
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(枯山水は水を使わずに山水の趣を表した庭園)
日本の「間」は、自然との調和を大切にする文化から生まれたともいえます。人間がすべてを支配するのではなく、あくまで自然を尊重し、そこに寄り添う形で空間を作る。この考え方は、日本らしさそのものだと思いませんか?
3. 現代デザインに受け継がれる「間」
日本の「間」の美学は、現代デザインにもその精神を受け継いでいます。たとえば、日常使いの陶器や器を扱う「中川政七商店」の商品には、「余白」を意識したデザインが多く見られます。器そのものはシンプルでありながら、色や形の微妙なバランスが美しさを際立たせており、使い手に「間」を感じさせる余韻を残しています。また、包装もシンプルにまとめられており、使う人が商品そのものに集中できるよう配慮されています。
建築の分野では、安藤忠雄さんのコンクリート建築が「間」の美しさを現代的に表現しています。彼の代表作である「光の教会」では、コンクリートの硬質な壁面と、そこに差し込む十字架の光の「間」が融合し、静けさと神聖さを感じさせます。余計な装飾がないシンプルな空間設計だからこそ、光や影が空間に与える影響が際立ち、訪れる人々に深い感動を与えます。
さらに、プロダクトデザインの分野では、日本の家電メーカー「バルミューダ」が「間」の精神をデザインに落とし込んでいます。たとえば、同社のトースターは、シンプルで洗練されたデザインの中に、わずかな曲線や余白が巧みに取り入れられています。その余白が、機能性だけでなく、使う人に特別な「体験」を提供してくれるのです。このように、装飾を削ぎ落とし、必要な部分だけを研ぎ澄ませたデザインには、日本特有の「控えめな美学」が息づいています。
現代では、情報があふれ、効率性が優先される中で、人々は「静けさ」や「癒し」を求めるようになっています。そのため、「間」を意識したデザインが注目されているのです。物を詰め込まずに余白を残すというデザインは、目にも心にも余裕を与え、多忙な日常に心地よい安らぎをもたらしてくれます。
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シンプルで抽象的だが、深みのある製品が私の中の何とも言えないエモーショナルな感情をくすぐる
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薄暗い中協会に差し込む光の十字架が神聖さを際立たせている
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バルミューダのランタン、「シンプル=洗練されている」と感じるフォルムのバランス。柔らかさはフォルムの曲線が生み出す空間から私が何かを投影しているのか?
結び:日本の「間」が未来をつくる
「間」の美学は、日本人が古くから大切にしてきた心の在り方を表しています。それは、「詰め込む」ことではなく、「あえて余白を残す」という考え方。忙しい現代社会において、この「間」がもたらす静けさや自由は、私たちにとってより大切なものになるでしょう。
あなたの周りにも、「間」を感じられる空間やデザインがきっとあるはずです。それが、静かな部屋の光の加減であったり、お気に入りのシンプルな道具であったり。そうした小さな「間」が、私たちの日常を豊かにしてくれるのです。
日本人の美意識が生んだ「間」という考え方は、私たちのあらゆる生活場面で素晴らしいアクセントになっていると感じました。このような視点で日常生活を覗いてみると新たな発見ができるかもしれません。
普段の何気ない日常に新しい風を取り入れ、人生がより楽しくなるよう意識したいものです。
ウェブデザインを通してそれを少しでも実現できるよう精進します!
では、また次回!!