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SONICMANIA2024の感想

ソニックマニアに行きました。台風はギリギリで逸れてくれたのか、演者のキャンセルや交通機関の大きなトラブルもなく楽しむことができて本当に良かったです。クリエイティブマンはじめ、関係各所で対応に追われた皆様に感謝。

観たもの

サカナクション

ライブを観るのは2回目で、かなり久しぶり。一曲目の「Ame(B)」が懐かしすぎて昇天。改めて聴くと、なんかUKだな!と感じました。山口一郎がES-335を掻き鳴らす姿から連想されたのか、「Aoi」の高速ダウンストロークにパンクを感じたのか、はたまたこのあとPhoenixやTESTSETが控えていて耳がニューウェーブの用意をしていたためか。クラブミュージックへの造詣と憧れを持ちながら、それを実現する手段としてはバンド形態にこだわるスタイルがハマっているのは、ケミカルブラザーズもオアシスもルーツはマッドチェスターでありニューウェーブだからなのかな、などと考えていました。サカナクションの場合、そこへさらに日本語詞やJ-POP的なポップさを加えて一捻りしてBOOM BOOM SATELLITESとは異なる解に到達した感じか。一方で、途中のDJセットでの「ネイティブダンサー」や「ミュージック」では、Underworld的なテクノサウンドに全振りもできる地肩の強さも見せる。総じて、ルーツへのリスペクトと邦ロック的訴求力とのバランス感覚の妙を見たライブでした。

ただ、100%余計なお世話ではあるのですが、「完全復活!」みたいなキーワードをちょっと強調しすぎじゃないか……?というのは気になってしまいました。精神疾患の「完全復活」ってそう簡単に言い切れるんでしょうか。そういうのも含めた持続可能な活動モデルを作ったよっていうことなら、まあそうかとはなるのですが、なんか要らん誤解を生みそうだし、本人的にもプレッシャーじゃないのかなあ〜というのがなんとなく不安でした。一方で、やっぱり報道で聞いていた内容を踏まえると、あれだけ生き生きとステージに復帰している姿は間違いなく色んな方の希望になるんだろうな、とも思いました。

Young Fathers

個人的な今回のベストアクト。ヒップホップであり、ゴスペルであり、ハードコアでありノイズでもある、衝撃のライブでした。昨年のアルバムでは、ファンクやR&Bの「グルーヴ」の方法論から逸脱してひたすら性急に走り続けるマシンビートと、そこに渾然一体となりつつポップさも携えて聴き手を煽るコーラスワークに驚愕し、古代の儀式とか呪詛ってこんな感じだったんだろうな……というホモ・サピエンスとしてかなりプリミティブなところから掻き立てられる高揚感を味わったのですが、それが現代のライブセットとしてやってきた感じです。むしろ、「古代の儀式」だからこそライブでフィジカルに叩き込まれることで真価を理解できた気がします。そんな音楽。

ステージには、シンセやギターもあるもののほとんどノイズを流すだけで、それ以外はボーカル4人とドラムがあるのみ。ドラムも通常のドラムセットに比べるとかなり変則的な配置で、その「ドラム」というよりは「太鼓」を叩いているともいうべき即物的な取り扱いには、ドラムの代わりに金属板を打ち鳴らしたノイバウテンにも通ずる、狂気に肉薄する人間の根源的なエネルギーが溢れます(なんならシンセとギターについてもそんな感じで、「変な音を出す道具」みたいな距離感なんじゃないかと思う)。そこに重なるボーカルもまた、ボーカルというよりは4人のMCがそれぞれエネルギッシュなリズムに身を任せた歓喜の叫びでアジテーションしているような在り方で、それにあてられたわれわれ観客もどんどん混沌と熱狂の渦に巻き込まれていく異常な祝祭感が最高に気持ちよかったです。このあたりはちょうど先日のフジロックのTurnstileを思い起こしました。

ただ惜しむらくは少し音量が小さめ(特にローがもっと欲しかった)だったこと……この点の制約が緩そうなライブハウスやフジロックでもいつか観てみたいなと思いました。

Underworld

正直あまりノれませんでした……。曲単位だと好きなものはあるのですが、テクノとかで「クラブで踊る」ではない「ライブを観る」という場合の楽しみ方がなんかピンと来ておらず(ずっと集中して観るにしてはセットリスト内での緩急や展開が感じ取れない……みたいな)、1人だったのもあり後方に座ってケバブを食べながらボーッと聴いているだけの感じになってしまいました。Young Fathersの衝撃で気が抜けていたのもあるかも。

Phoenix

深夜0時を跨ごうという時間帯で、しかも一番大きなステージというわけでもないのに、信じられないほど盛り上がった激熱大団円のライブでした。こんなにライブが熱いバンドだとは知らなかった。

ステージ上の出で立ちは、やっぱり音源や「フランス」という国へのイメージの通り非常にスタイリッシュで、俗な見方をすれば「セレブっぽい」ように見えるのですが、なんというか例えば世田谷でチルいポップスをやってそうな鼻持ちならなさだったり、ストロークスみたいな逆に切れ味鋭いギラつきはなく、全員すごく「真っ直ぐな目」をしていたのが印象的でした。自分たちのカッコよさがそのスタイリッシュさにあることを理解していながら、観客とともに汗を流して盛り上がることも厭わない感じ。終盤の「Funky Squaredance」ではそれまで封印していたクソデカロックギターソロを爆発させ、その勢いのままラスト2曲も爆盛り上がりした挙句客席に飛び込んでめちゃくちゃになりながら大団円を迎える、この勝てるところが一つも無いのに全然嫌な気持ちにならない、むしろガッツポーズで喝采したくなる真っ直ぐさたるや。大谷翔平のロックバンド版。「優勝」というほかありません。

NIA ARCHIVES

前半30分がDJタイム、後半で自分の曲を流してマイクを取るという形式でした。ジャングルの高速アーメンブレイクと、同じく高速で繰り出されるY2K過剰な映像で脳を破壊された末に「So Tell Me...」を歌い始めた時のカタルシスが凄かった。あまり明るいジャンルではないので、他の人ももしかしたら似たような感じなのかもしれないのですが、高速なビートに対してボーカルがむしろ緩慢なところに特徴的なダイナミクスがあるように思いました。加速しすぎて周りがゆっくり見える系の、例えばlainのアクセラみたいにキマったトリップ感と、荒波を軽やかに乗りこなす優雅なチルさのハイブリッドという感じ。ドラッグはまあやったことないけど、高揚感とリラックス感が同時にあるのってこんな感じなのかな。

TESTSET

先日のリキッドルームのワンマンを不覚にもコロって逃したため、リベンジ。めちゃくちゃニューウェーブでした。人力テクノなリズム隊に、バキバキのギターと神経質そうなパフォーマンスのボーカルで「ファンキーなDepeche Mode」という印象が強い。ただ、ここも音量が小さかったのか、ミックスの問題で迫力に欠けたのか、昨年のアルバムを爆音で聴いていた時ほどはノれなかったです。永井聖一のファンとしても、特にギターはもうちょい聴こえてほしかった。

牛尾憲輔 (OST Dance Set)

VJが最悪で台無しでした。内容としては、各曲のアニメの映像が流れる合間に、本人がそのアニメにちなんだ何かをしているような3Dアニメ(例: チェンソーマン→チェンソーを振り回す)が挟まる構成だったのですが、この3Dアニメの出来が非常にチープで、かっこいいアニメの映像の合間にこんな安っちいものを挟めるセンスがよくわかりませんでした。中途半端に各アニメをオマージュしているのも痛々しいし、リスペクトを欠いているようにさえ見えてしまう。そもそも、何が悲しくて自ら低予算アニメになる必要があるんだ。リズと青い鳥とか聲の形でこれやられたらかなり嫌だな〜と思っていた矢先、3D牛尾憲輔がデビルマンになったタイミングでいたたまれなくなって、帰りました。

前々から楽しみにしていただけに残念でした。権利の関係で使える映像が限られていて、合間を埋める必要があった、とかなのかなあ。それにしてももう少しやりようはあったのでは……

おわりに

以上、ソニックマニア2024の感想でした。なんか個人的に良かったやつとハマらなかったやつの差が結構あったなと書いていて思いました。まあそういうのもフェスの醍醐味ですよね。

何はともあれ総じて楽しかったです。来年もまた楽しみにしています!

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