夜明け

夜が明ける/西加奈子著/新潮社

夜は明ける。
地球が何かで動きを止めない限り、誰のもとにも朝は訪れて暮れて夜が来て明けていく。等しく。生きている、呼吸をしている全てのものにそれは平等に。

とても苦しい話だった。読みながら多分歯を食いしばることが何度もあった。
クソ真面目に不器用に生きざるを得ない人。思わぬことで減る選択肢。その増減は、その時点で選ぶことすらできない。若く幼く先は果てなくいがために、選ぶことができない。手に取ることしか、それを掴むことしかできないから、掴んで必死に必死に、明けて暮れる一日を越えていくことだけに注力していく日々。越えていく為に削る自分自身。削ることを厭わず、削っていることを時には誇りにすら思う日々は、いつしか自分を壊して、壊れていることに恐怖を覚えて、立ち止まることも恐ろしくて。
何かから零れ落ちる恐怖。世間、周り、今の仕事、環境が、止まれば全てが終わるような、焦燥感。けれど限界を迎えた肉体は、停止せざるを得ない。目を開けていることがどんなに苦痛でも、呼吸をすることが疎ましくても、身体は生き続ける。
己の中にある闇に呑まれず、対峙し続けること。辛い。しんどい。逃げたい。逃げてもまた戻ればいいと、それは徒労では終わらないということ。
自分ではない誰かの言葉に振り回され、救われる。営みは重たく温かく苦々しく苦しい。

白夜の地でアキの夜はきっと明けたのだと思いたい。

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