里山の春
桜色、紅梅色、桃花色、春はきれいでええなあ。こないな日はゆっくりお昼寝でもしていたいんやけど、蛍丸と国俊が休日どっか連れてけ連れてけってやかましかったさかい、せっかくやしこの前Googleマップで見つけたお花見スポットに行ってみるか思て、アパートから少し車で行ったとこにあるまあまあ閑静な里にお散歩しにやってきましたとさ。
「桜の樹の下には屍体が埋まってるんやで」
2人を少し怖がらせてみたらおもろいかも思て、こんなん言うてみた、けど
「へー」「ふーん」
なんや意外と反応薄いなあ。
「……じゃあ、桜の樹の”上”には生きてるなんかがいるってことだよな」
そうきたか。国俊は、というか小学生はたまに突飛なこと考えはるなあ。
「生きてるなにかって何!?たぬきとかがいるの!?国行、見たい!!俺、たぬき見たい!!見せて!!」
あらら。蛍丸ったら大興奮してもうた。こうなると止まらへんさかいしゃあない。
「ほら、肩に乗りーな」
しゃがんでから蛍丸を肩に乗せて、落ちないように足をしっかり掴んで、よいせ、と立ち上がる。
「どや?」
どうせなんもあらへんやろうけど一応聞いてみる。
「うん……生きてる……」
「お!なにかいたのか!?」
なんやろ、自分も顔を上げて樹の上を見てみるけど、なんもあらへん。なんぼ目ぇ凝らしても満開の桜の花しか見えへん。
「俺よりちっちゃないのちがたくさん、”あたし生まれたのよ、かわいいでしょ?”って咲いてる」
「おお!!すっげえ!!蛍に似てるなそいつ!!」
「俺はこんなにちっちゃくない!!」
ああ、なんて尊いんやろう。おもんない考えをした自分に泣けてくる。
「大人になるって、かなんわ」
いつの間にか、小そう呟いとったみたいやけど、2人とも新しい生命に夢中で聞こえへんかったらしおす。よかったわあ。
暫く堪能した後、車の中。
「また来ようね!」
「次は桜の下を掘ってみようぜ!恐竜の化石とかでてくるかもな!」
「そらええなあ。博物館に寄贈したら儲かるやん」
あり得へん話やけど、まあ屍体がでてくるより夢があってええわなあ。
里山の春・END
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