気球フェスティバル
「うお~~。でっけえこんのすけ!!大迫力だな!!お、あっちには明王の気球もあるぜ!!」
オレは祭が好きだ。
「すごいすごーい!!テレビで見るより大きい!!」
蛍も楽しそうに喜んでる。来てよかった。
「君らはしゃぎすぎやわ。ただのおっきな風船やん」
国行はこんなこと言ってるけど本当は楽しんでるの知ってるんだぜ。だいすきな蛍と一緒だからな。
「国行はなんにも分かってねえなー。あの中にはたくさんの熱が入ってるってテレビで言ってたんだぜ。気球ふぇすてぃばる、まさに熱い祭!!最高じゃねえか!!」
「国俊は祭やったらなんでもええんかいな……よう盛り上がれるなあ」
「別にいいだろ」
ちらっと横目で蛍を見ると、さらさらできらきらな髪をなびかせながら、こんのすけの気球をじっと見ていた。
「ねえ、あの気球って何人乗れるのかな?」
「さっき気球乗り体験の看板出てたけど、2人までって書いてあったぜ」
「へえ、俺乗りたいなあ。高くて遠いところ、行ってみたい!!早く行こう!!」
「……うーん、まあ、蛍丸がそう言うならしゃあないな。……よいしょっと」
そうか。
蛍と国行は気球に乗って2人だけでどこか遠い遠いところまで行っちゃうんだなーって、ふと、なんでか分からないけどそう感じた。
ほんの少し寂しいかもだけど、オレは1人でも平気だから。
「何ぼーうっとしてんねん」
「早く行こう、国俊!!」
「え?いや、オレはここから見てるから2人で乗ってくれば……」
「はあ、3人で乗らな来た意味あらへんやん」
「定員が2人でも3人で乗るの!!ぎゅうぎゅう~って、国行のつくるお弁当みたいに!!」
ため息をついてぶっきらぼうに言う国行と、かわいらしくはしゃぐ蛍を見ているとなんだかおかしかった。
「……そっか、オレたち軽いからイケるよな、3人でも!!」
心臓らへんに熱い何かがこみ上げて、泣きだしたいような嬉しくて走りまわりたいような色んな気持ちがふくらんできちゃって、このまま体がふわふわと浮いていきそうだった。
オレが気球になって、蛍と国行を色んな遠いところまで連れてってあげたらもっともーっと楽しいだろうなー、なんて。
気球フェスティバル・END
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