生成AIによって「既存の仕事は代替されるが、新しい仕事が生まれる」ということに対して
ここについて色々なレポートや本などを読みながら、思考を整理しています。
情報量が膨大な中で、また様々な意見があり、こういった思考を整理する際には「間違っていたとしても、あえて自分はこうだと思う」というスタンスを取ることが理解を深めるのに大事なステップだと思っているので、
忘れないように、2024年1月時点での、自分の考えのスタンスをまとめていきます。
スタンス
ChatGPTをはじめとした、生成AIの技術によって仕事は徐々に補完されていき、そこからさらなる技術的なブレイクスルーと市場圧力によって、代替されていくと考えている。個人的にはLLM/LMMの衝撃が大きい。
現在のところ、テキストの生成を通して部分的な作業を任せることができる。単純な文章の生成だけではなく、知識・論理的な思考・拡散的な思考の補助にもなるので、その応用は幅広い。
補完から代替へ
2024年1月のところでは、思考補助やコーディングなど、補完的な意味合いで使われることが多く、代替される仕事領域はあまり目立つところはない気がしているが、以下のような観点で、今後より実用性が伴うものになってくると話は変わってくる気がする。
人間による最終チェックの形骸化
より違和感のない文章を生成することができるようになり、現在のAIっぽいテキストではなく、ライターが書くような読ませる文章、整理された文章を書くことができる。こうなると、人間が手直しする必要性が失われてくる。人間が最終チェックするという行為の形骸化が起き、必然と代替的な形に置き換わる。
ドメインの理解ができるような仕組み
LLM自体の性能向上に加え、扱えるトークン上限の増加と、推論コストの低下。そしてドメイン知識(その作業における必要な前提知識)を事前に渡すシステムが民主化すると、会社の中で発生する特有な作業が、代替可能になってくる。
自律的な作業プロセスの精度向上
いわゆるAIエージェントと呼ばれる、文章生成を通して人間のように思考をさせ、状況に応じて判断・タスク実行をして、一連の作業プロセスを完結する仕組みによって、非定型な作業系が徐々に代替可能になってくる
ロボットの実用化
人間のように繊細な作業ができるロボットが出てきて、複雑なタスクを解決できるようになると、物理世界での作業がロボットによって実行可能になる。人手不足&ロボット導入の制約(法律的な側面など)を受けない業界と、家事作業領域(支払える予算が大きい)から、徐々にロボットが浸透していく。
そんな遠くない未来な気がする。コスト面が二次的な導入ハードルになるんじゃないかと思っていたけど、結構低コストで実現している事例も出てきている
This mobile robot is able to open doors, drawers, and fridges in the wild, generalizing to scenes not seen during training time. The skills look less impressive than ALOHA, but they're actually fully autonomous.
— Jim Fan (@DrJimFan) January 26, 2024
Core idea is simple: do RL *at test time*, use CLIP (or any… pic.twitter.com/V9E4vIYcRo
ロボットのメンタルケアへの進出
感情面でのロボットは、まず物理的な作業タスクから徐々に代替されていき、その次は感情的なケア領域へも実用化されていくはず。顔表情などから相手の感情などを数値化し、それを元に適切な感情ケアを会話、仕草などを通して行なっていくという方面は出てくるはず。
家事ロボットに「会話もできる機能」をつけるのは容易なはずで、機械と会話するという行為への違和感は徐々に失われていく。
そうなってくると淡白な見た目ではなく、より愛着が持てるようなビジュアルにこだわった(メンタルケア的なところを見据えた)ロボットのニーズが出てくるはず。
人間に残される仕事は何か
そうなってくると「人間に残される仕事は何か?」と言った話が出てくるが、個人的には以下の領域になってくると思っている。
大きな影響を及ぼす意思決定を下す責任
政治的なところはもちろん、ロジカルだけでは決めきれない&大きな影響を及ぼすような意思決定領域は人間が判断していくと考えてる
例えば、サービスの細かな施策改善はおそらく改善フローの自動化が起きてくる可能性が高いが、会社として資金を投資して新規事業を立ち上げるフェーズ等では、AIはあくまで補完的な立ち位置で介入し、意思決定は人が行う等。
顧客/お客さんとの関係性を築く領域
取引先相手が人間である場合、ロボットが対応するということへの違和感/嫌悪感(誠意が感じられないなど)みたいなところのマインドセットの変化は結構時間がかかりそうな気はしている。
一方で、メリット/デメリットでサービス導入を決められやすい領域は、ここの置き換えは早いのかもしれない。
また営業は「サービス導入によってこんな課題を解決できますよ」と言ったコンサル的な側面も持つため、もしかしたら性能の良いAIを利用して、そのコンサルの精度を上がる(取引先の課題解決へAIを貸し出す、みたいな見方もできる)ことによって、違った受け取られ方になる可能性もある
法律的な制約などで人間が対応しなければならない領域
まず日本においては雇用が保障されているので、正社員である限り簡単には代替されないはず。
そのため生成AIによる社内業務の改善にテコ入れする動機がどれくらい生まれるのかは未知数ですが、どのみち市場圧力によって改善せざるを得なくなるんだろうなとは思ってます。
業務改善によって余った人手に対して、より裁量権のあるクリエイティブ領域を任せるようなリスキリング的な方向性にいったり、あるいは社内政治がより濃くなってくるのかなとは思ってます。
また法律で人が介在する必要がある領域についてもいくつかあるはずなので、ここら辺は技術的に代替可能であってもまだまだ残り続けるんだろうなと思っています。ちなみにChatGPTに聞いてみると以下が挙がりました。
![](https://assets.st-note.com/img/1706403889800-WFS7Qc8prp.png?width=1200)
生成AI時代におけるデジタル領域の差別化となる要素は何か
今後技術が加速していくと、プロダクト開発・マーケティング・運用オペレーションなどの側面がより高速に行われ、ゆくゆくは機能的な差別化が起きにくくなるんだろうなと考えています。
この状況において差別化となるのは、以下の要素だと思っています。
どれだけ多くの人に利用されているか
人間が利用者である限り、機能的なメリット/デメリットでの判断で利用するものを選ぶ人はおそらく少数なのかなと思います。どちらかというと「利用者数の多さ」や「周りの評判」などから選べれていくはず。利用者がすでに多いという資産は、引き続き差別化として効いてくるはず。
その人のデータ資産をどれだけ保持しているか
利用に応じてデータが蓄積していく系のサービスだと、他サービスの方が機能的に良かったとしても移行ハードルが高まります。
例えば、マネーフォワードやNotionとかは結構強いんじゃないかなとかは思っていたりします。個人的に利用しての感想です。
マッチングであれば、どれだけ商品数を掲載できているか
ECサイトであれば掲載商品数、転職サイトであれば求人数など。商品を掲載するための裏側は、掲載のための取引があり、ここら辺は生成AIが出てきても、高速には対応できない領域かなと思っています。
サービス体験の評価データ(→評価モデルの精度)
生成AIによって改善プロセスが自動化された時代となった時に、高速な改善サイクルのボトルネックとなるのは「新しい改善施策をリリースしてみての結果を取得する」ということかなと思っています。
そのため施策をオフライン(開発環境上で)で事前にシステマチックに評価するための「評価モデルの質」が鍵となってくるんじゃないかなと思っています。そのためには評価指標の定義・評価データの取得、そしてデータの量が重要です。
詰まるところは、「どれだけ多くの人に利用されているか?」という要素がここにも効いてくると考えています。
新しく生まれる仕事は何か
産業革命でもあったように、技術革新によって既存の仕事が代替される一方で、新しい仕事が生まれてくるという現象がありました。
「既存の仕事がなくなっても、その分新しい仕事が生まれてくるから雇用的なところは大丈夫なのではないか?」みたいな話はよくあるんですが、それは結構楽観的な思考なのではないかとモヤモヤしてまして、色々と考えました。
ここら辺はこれからちゃんと勉強するので、浅い知識をベースとした思考になっているという前書きを書いときます。笑
技術では対応できない領域
産業革命時代で新しく生まれた仕事を考える際の一つの観点としては、「技術革新によって生まれた新しい作業フローの中で、"技術では対応できない領域"に雇用が生まれた」ということだと思います。
機械工業による大量生産プロセスの中で、「ハンドルを回す人が必要」であったり、「特定の機械の監視やメンテナンスを行う技術者が必要」となるなど、機械単体では対応できない領域に人間の役割が生まれました。
今回の生成AI技術においてもそれは同様であると思っているのですが、果たして「発展した生成AI技術(主にAGIと呼ばれるもの/あるいはそれに近いもの)では対応できない領域とは何か?」という点が気になっています。
AGIは人間以上の高度な専門性を有しており、おそらくスケール可能でもあり、デジタル領域における思考/作業速度がはるかに高速であり、人件費よりもコストが安くなるでしょう。
「新しい仕事が生まれた時に、その新しい仕事において人間しか対応できない作業とは何か?」という問いは一つ考えるべき観点なのかなと思ってます。
また短期(1~5年とかのレベル)で見た時に、おそらくまだ人間が対応しなければならない作業というのは色々とある気がしますが、「代替された仕事に従事してた人と、新しい仕事で求められる要件が果たしてマッチしているか?」また「新しい仕事ではどれくらいの雇用ボリュームがあるのか?」は、気になるところです。
雪崩的に生まれてくる新しい仕事
産業革命時には、工場内の労働者だけでなく、生産物の流通や管理に関わる仕事も新たに生まれました。
物流の管理、品質管理、販売やマーケティングなど、製品の生産から消費者への配送に至るまでのプロセスには、様々な専門知識や技能が求められるようになりました。
このように新しく生まれてくる領域は、雪崩的に繋がりを持って生まれてくるのかなと思います。つまり何が生まれてくるのかはあんまり読めない。
ただその上で「新しい仕事が生まれた時に、その新しい仕事において人間しか対応できない作業とは何か?」という前提に立って、人間の仕事(あるいは金銭的な報酬をもらって行う活動)として残り続ける領域について考えると、より範囲は狭められるのかなとは思います。
個人的には「エンタメ領域」が中心となっていくんだろうなと思っており、アスリートが人間の身体的制約の中で挑戦し、それを観戦する中で生まれている熱狂のような形はあるんだろうなと思ってます。「人間を熱狂させることができる表現者」的な人ですね。
で、ここら辺からは飛躍するんですが、表現者のフォロワーとなる人たちによる活動(いわゆる推し活)が、多くの人間にアプローチする際の効果的なマーケティング施策のような機能となり、推し活をしていると金銭的な報酬が発生するといった新しい経済の形があるんじゃないかなとは思ってます。
例えばFortniteで新しいワールドを作って、利用数に合わせて報酬がリターンされる仕組みであったり、GPTsのレベニューシェア制度とかも個人的にはそういう新しい経済圏の一つかなと思って見てます。現在はクリエイターに寄ってはいますが、口コミを広めていく、利用してみての感想を伝えるなど、より多様な領域に広がっていく気がしてます。
こうしたことが新しい仕事の形となった時に、産業革命で専門知識が新たに求められたように、また違った能力が求められてくる気がしてます。それが個人的には「好きなことに対して熱中/熱狂する力」なのかなと考えてます。
終わりに
2024年1月時点での思考はこんなもんでした。個人的にこれからは以下の本を読みながら、より思考を深めていければいいなと思ってます!