おとなよ、夢を語れ
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盛岡にある画材屋、「アートショップ彩画堂」のご店主は市内でも知られた名物店長がいる。イヤマさんだ。
彩画堂は私が学生の頃ぐらいからずっとある画材屋だ。
前のオーナーさんが数年前に亡くなって従業員だった彼女が引き継いだ。
女性ならではの気遣いやおしゃべりがとても楽しく、つい長居してしまう。色々な年代のお客さんに愛されているお店だ。
近年はギャラリーをやったり、ワークショップのスペースを始めたりと、とても活気がある。去年からは私も水彩教室の場所としてお部屋をお借りしている。
イヤマさんはアツい。
イヤマさんには「壮大な夢」がぎゅうぎゅうに詰まっている感じがあるのだ。
そこにみんな惹きつけられるのだと思う。
絵に描いたような「射手座の女」と言う感じがする。
的を絞って、強く早く矢を放つ。
実は誕生日が1日違いだ。
私も射手座の女なので、やはり矢を放つタイプなのでわかる。
時々何かが「カチリ」と噛み合う感じが心地よい。
10年前、彼女と公募展 ミニアチュールzeroという展覧会を企画することになった。
これはたまたまの雑談から生まれたのだが、今では全国からも応募される作品展となった。
今年は10年目の作品展が催される。私は所詮お客の一人なのでずっと関われる訳ではないのだけれど作品展の“成長”を見ていく様子はとても楽しい。
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いつも書いているのだけれど、私はアーティストではなくて、インストラクターだと思っている。
自分自身が、作り、描いていきたいと思うのもあるが「デッサンやスケッチを学びたい誰か」に道案内をしたい思いがずっとある。
時々、これからの後半生どうしよっかな〜って思ったときに「何か作る系の教室とか学校みたいな場所」を持つのがいいだろうなフンワリと思っている。
もう20年近く前になるけれど、教員時代に細々とやっていたブログがある。そこに、「いつか“大人のための美術準備室”のような場所作りたい」と言うようなことを書いていた。
意識はしていなかったけどこれは多分、長いこと考えている夢なのかもしれない。
今日それと似た様な話をイヤマさんとしていたのだが、「やっぱり美術(工芸)が学べる大人の場所が必要だよね」という話題になった。
今、全国的に画材屋とか本屋が潰れているという話が聞かれて久しい。自分の身近なところを言うと、自分が卒業した大学の学部学科は改変されて美術教育を目指す人の受け皿が岩手県にはなくなってしまった。
学校美術でも、授業数が削られたり、非常勤の講師で回しているところも多くなって、「美術の面白いところ」を味わうことも昔よりはずっと少なくなっている。そこに来て「生成AIの時代」がもうすぐそこまで来ている。でも実際は、絵を描きたいとか習いたいとか、やってみたい、っていう人は少なくないのだ。
今は動画配信もあるからいくらでも独学ができる。メーカーからのダイレクトな情報も得られる、SNSもある。
でも常に絵の具やスケッチブックが店舗にあり、比較でき、そして、絵を学ぶ機会がある、と言うことは代え難い財産であるとも言える。
最近、盛岡の良さ、について考えてみたときに、「アートや芸術全般を愛する人たちのコミュニティによって支えられているのだな、ということを実感する。
先日の紺屋町のマンションの件もそうだけれど、建築は壊して仕舞えばそこで終わりだ。
街によって醸成された文化や思想を継承することも途絶えて仕舞えばそこで終わりになってしまう。影響がすぐには見えにくいから注意深く考えていかないといけない。
なんでもいいから「面白そうなこと」をやる。
当たり前だけど、「面白そうなこと」というのは、ほとんど間違いなく面白い。
叶うかどうかは別として、夢というのは広く、大きく、色々な人に語っておくのが良いと思った。
彩画堂店長のブログはこちら
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