麻雀の点数計算の簡略化について
Xの麻雀TLにて定期的に話題になるが、麻雀の点数計算の簡略化についての私見を記す。
経緯としては、麻雀の点数計算が複雑なため初心者が麻雀を始めたり、始めて以降に継続していくことの壁になっているという意見がある。これについては私もそういう一面はあると思うし、少なくとも初心者や初級者が混ざる場(麻雀教室や健康麻雀、普段麻雀をしない層の入るセットなど)では簡略化したり、熟練者がフォローすべきであると考える。
だが、上記のような環境ではない場(競技麻雀や大会、フリー雀荘などある程度の熟練者がプレイする場)では従来の点数計算で行うべきだと思う。その理由を述べていこう。
※ここでいう点数計算の簡略化とは、
符計算をなくし、一飜1000点、二飜2000点、三飜4000点、四飜8000点(満貫)のように計算していくもの
を想定している。
1.役の価値が変わる
符計算を用いない場合に影響を与えるものとして役の価値の変化があるだろう。
例えば三暗刻という役がある。その名の通り手牌の中で三つの暗刻を作る役であり二飜役である。この役はそれを構成するための性質上、最小でも12符がプラスされる役だ。
では門前での三暗刻と、二飜分になるタンヤオピンフの点数を比較してみよう。(子の点数での比較とする)
三暗刻→(最小)3200点
タンヤオピンフ→2000点
現行ルールでは同じ二飜分でも、三暗刻はタンヤオピンフの1.6倍の点数になるのだ。これを簡略化した点数計算をした場合、同じ点数になってしまいただでさえ成立条件が難しく出現率の低い三暗刻の価値が下がってしまう。
これは極端な例として出したが、符が高くなりやすい役(混一色やトイトイ等)にも影響があるだろう。
2.手牌構成の価値が変わる
一九字牌の明槓子は16符、暗槓子は32符になる。
これをそれぞれ30符の一飜の和了点数と比較してみよう。
30符一飜→1000点
明槓子含み→(最小)基本符20符+16符=36符、切り上げて40符で1300点
暗槓子含み→(最小)基本符20符+32符=52符、切り上げて60符で2000点
となり、明槓子含みの手牌では1.3倍(あと6符つけることが出来れば1.6倍に)、暗槓子含みの手牌では2倍の点数になるのだ。簡略化した点数計算の場合全て同じ点数になると考えると、槓子の価値が大きく下がってしまうことがわかるだろう。
勿論他の符がつく形、待ちも同様だ。
3.門前、鳴きの価値が変わる
門前とは副露、つまり鳴きの入っていない手牌のことだ。面前、メンゼンと表記される場合も多い。
なぜ門前の価値が下がるかというと、門前の場合は符に門前加符という符のボーナスが10符つくのだが、点数計算を簡略化した場合にはこれがなくなってしまうのだ。
例えば
門前のタンヤオのみ→(最小)基本符20符+門前加符10符+ピンフではない時は最小でも必ず2符がつく=32符、切り上げて40符一飜で1300点
鳴いたタンヤオのみ→(最小)基本符20符のみだが、現行ルールでは20符の和了は例外として30符として計算するため1000点
となるが、これが同じ点数になる場合、門前の価値が下がり相対的に鳴きの価値が上がり、大きくゲーム性に影響を与えるだろう。
4.点数計算を覚えること=強くなることである
点数計算を覚えるということは、自身の手牌の価値や相手の手牌の価値をより正確に知れるということである。それは何を切るかという麻雀のプレイングに大きく寄与することだろう。
例えば下記の条件、手牌があるとしよう。
さて、この時に南が捨てられた場合、大明槓をするだろうか?実はこの南は大明槓することで6400点の逆転条件を作りやすくなるのだ。
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基本符20符+南の明槓子16符で計36符、これにあと6符追加すると42符で切り上げて50符、ダブ南赤の三飜で6400点になる。
6符追加するには5p9p西の内の二つをポンする、9pか西をポンして愚形の待ちにする、他パターンは省略するが様々なパターンがある。
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点数計算が出来ない場合、混一色ダブ南赤のにしたり(手作りに時間をかける)、門前で手を進めたり(鳴きを放棄することで和了までの時間がかかる)、立直をしてロン和了しにくくしてしまったり、実際は逆転条件を満たしているにも関わらず他家からのロン牌を見逃したりして、トップになる機会を減らしてしまう恐れがあるのだ。
あとこれは私見だが、麻雀をそれなりの頻度でやっている人でも点数計算を完璧に出来る人はそんなに多くない。Mリーグのようなトッププロが集まる舞台でも稀に点数計算のミスが起こる。点数計算が出来るということは、麻雀においてドヤれる成長を自覚し楽しさを感じられるポイントの一つではないだろうか?
結論
上記の理由により、単純に点数計算を簡略化すると麻雀のゲーム性への影響が大きく、私を含む現行ルールのファンにとってネガティブな変更であるため(そう、結局自身の好き嫌いである)基本的に私は点数計算の簡略化には反対の意見をもっている。
因みに点数計算は小学校の算数レベルの知識があれば習得可能なものであり、点数自体を暗記するにしても30符40符50符のそれぞれ一~三飜×親と子の2パターンの計18パターンで充分であり、さらにロンとツモの場合を分けるにしても36パターン程度(厳密には30符40符だけで充分で中には同じ点数になるパターンもあり、ツモパターンはざっくり割り算で出してもよいし、暗記する数は減る)ので麻雀が好きだけど点数計算わからないという人はぜひチャレンジしてみて欲しい。
点数計算の簡略化案
とまあ、点数計算について反対の意見を表明してばかりでは建設的ではないので、今まで記してきた点数計算な簡略化の問題点を解決するべく、個人的な提案をしていこう。
因みに三人麻雀の様々なルールを参考にしている部分が多々あることを先に述べておこう。
1.役の飜数の変更
手役構成上、符のプラスがある手役の飜数をあげてしまおうという案である。
上で例に出した三暗刻なら二飜から三飜にしてはどうだろうか?もしかしたらこれは三暗刻の価値が上がりより出現しやすくなるかもしれない。
2.門前の強化
前述した通り、門前加符がなくなることで門前の価値が下がり相対的に鳴きの価値が上がってしまうことに対しての提案である。
門前で和了した場合に「門前清」という一飜役をつけるのはどうだろうか?(門前清とはそもそも鳴いていない手牌の状態をさす麻雀用語である)
考え方としては門前加符をそのまま役に格上げしてしまおうということである。
実はこのような符を役に格上げするルール変更は前例がある。嶺上開花だ。
元々は嶺上牌でツモ和了すると追加で符がつくものであったが、嶺上開花という役に変更になった歴史がある。そのため嶺上牌でツモ和了した場合にはツモ符がつかない(役に格上げされたため)のだ。※簡略化のためツモ符がつくルールも存在する
これなら門前の価値が担保されるのではないだろうか?
また別の案として、前述の役の飜数の変更にも関わるが喰い下がり役の調整はどうだろうか?
例えば混一色を門前で三飜、鳴くと一飜など今まで鳴くと一飜下がっていた役を二飜下がる様にするのはどうだろうか?門前の価値が上がることだろう。
3.点数自体の数え方の変更
東天紅のように1役1点で、現行のように満貫まで飜数が増えるごとに倍々になっていく乗算式ではなく、4役なら4点のように加算式にしてはどうだろうか?符計算などなく役を数えるだけで点数がわかるので初心者もわかりやすい。
勿論、役の飜数の変更やツモ和了時、ロン和了時のバランス調整等は必要ではある。
4.ドラを増やす
いっそのこと満貫以上の和了ばかり発生するようにインフレさせてしまって符計算をなくす、もしくは符計算の発生する頻度を極端に下げてしまってはどうだろうか?
近代麻雀で以前に連載していた「ミスターブラフマン」という漫画は、点数計算が出来ないため必ず満貫以上の手を狙う(例えば立直タンヤオドラ1の手はツモ和了しないと満貫にならないため、他家から出た場合に見逃す)人物が主人公だ。この主人公のように点数計算はできないが満貫以上ならばわかるというプレイヤーは多いのではないか?満貫以上さえ分かればなんとかなるなら初心者にとっての壁は緩和されるのではないだろうか?
総括
点数計算簡略化の案を4つ挙げさせてもらったが、当たり前だがそれぞれに何らかの問題点はある。そう、問題点があるのだ。それこそ麻雀をそれなりに打ってきたプレイヤーなら何個も思い付くことだろう。
点数計算を簡略化する、と単純に言ってみても現行ルールのゲーム性になるべく影響を与えないようにするのは案外難しいことだと思う。ゲーム性が変わってしまっても別に良い、という意見もあることだろう。
しかし、変えた時に競技人口が増えるのか減るのか、正直私にはわからない。しかし変えた時は、確実に麻雀というゲームは形を変えてしまうのである。はたしてこのリスクとリターンは見合っているのか。そもそもそのリスクは本当に切り捨ててよいものなのか。
だから私は初心者が入るような場は特例として点数計算を簡略化をし、そうでない場は現行ルールをベースとするべきであるという意見である。
(点数計算の中身だったり、なんでツモったときそういう払い方するのかとか、そもそも麻雀のルールの成り立ちや歴史とかも調べてみると面白いので、麻雀好きな人は調べてみてね)
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