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【快活】幕間2・アルプスヴァルド行特急
メトロヴィア発アルプスヴァルド行きの特急列車。そこに乗ろうとした私は、衝撃の光景を見る。満席なのだ。
座席を確保できたものたちは安堵の表情を浮かべ、私を含め、確保できないものたちは殺伐とする。そこに楽しい会話は存在しない。
私以外は全員外国人という多国籍なデッキに立ちながら、私はこの事象が何ゆえ起こっているのかを考察する。
三連休最終日。ではあるが、外国人には関係ないだろう。
二月下旬。って何かあっただろうか?梅はちょうど今か?
ウインタースポーツ?まだまだイケそうだな。ああ、最近雪に塗れてないな。
申し訳ない。私は理由を知っているのだが、あえて、考察している振りをした。私が知っていることはただ一つ。
まりの存在である。
この三連休、彼女はアルプスヴァルドの地に降臨している。
そこに、彼女を中心とした重力場が形成されているのである。まりという天体がアルプスヴァルドの中心にあり、私のように、軌道計算を繰り返しながらランデブー軌道を取り始めるものもいれば、純粋にその引力により、人が人を呼ぶ連鎖反応的な因果に絡めとられて、無関係な旅人たちがアルプスヴァルドに人が向かっているのかもしれない。
私もまた、まりランデブー軌道に乗るものであるが、明確な意志を持って近づくものである。
軌道交差予定時刻は15:00。もしアルプスヴァルドに異常な引力が発生していたら、それはただの偶然ではない。まりと私が再び交わる、その瞬間に生じる歪みなのだから。その時は、どうか優しい目で見守っていてほしい。