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【快活】まり2・フリーシナリオ
前の話→
アルプスヴァルドの地で、絶世の美少女、まりに会った私。
一期一会だったはずが、運命のめぐりあわせ(を自分の意志でつないで)、またまりに会っているのはなぜなのか。
カワイイからである笑
彼女の前では、何がいいとか、ここがいいとかそういう表面上の言葉は無意味。
圧倒的かわいさの前には、他の言葉は何もいらないのだ。(たぶんね)
他の言葉で彼女を語れるようになる日はいつだろう。そんな日は来ないかもしれないが、、、。
予約ボタンを押した瞬間、すべてが動き出した。
スマホの画面を見つめながら、頭の中にはただひとつの言葉、、、。
かわいい。
それだけ。可愛さの暴力。
こんなかわいいことあんなことやこんなことをする時間が過ごせるなんて、
期待しかない。
隕石落下跡
この日は午後の予約。
どうせならアルプスヴァルドを堪能しようということで、
早朝から車を走らせ、隕石落下跡をたどる一人旅。
山奥の一本道を、俺の車だけが走っている。
左右には深い森、遥か遠くに見えるのは、そびえたつ山々。
前方の道はどこまでも続いていて、まるで終わりがないかのようだった。
窓を全開にして、思いきり歌う。どうせ誰もいない。
俺の声は森に吸い込まれ、エンジン音と混ざり合って、どこまでも響いていく。
この道はどこまで続くのか。ただ一つ確かなのは、たどり着く先にはまりがいるということだけだ。
あと数時間後には、まりに会う。
今回の俺の準備は前回の比ではない。
隕石落下跡からまりと会う予定のホテルまでは100km以上の道のりである。
オープニングへ
道中、文房具屋に立ち寄り、色鉛筆を購入した私は、手書きの冊子を作りあげ、まりの絵も描く。
制服がはだけて、スポブラとスポーツ用ショーツが見えているやつだ。
そう、読者のみなさんはワタシの記事のコメントに「スキ」したときに見たことがあるかもしれない。
この絵はこの時にかいたものである。
郊外の田園風景が広がる一本道。
車を停めて外に出ると、静かすぎるほどの静けさに包まれる。
風が、遠くの草をさわさわと揺らしている。視界の端には、時折、軽トラがのんびりと走り抜けていく。
空は青く澄んでいて、遠くの山々がぼんやりと浮かんで見えた。
こんなのどかな場所にポツンと建つホテル。
ここで、まりと会う。それだけで、この風景が特別なものに思えた。
そうこうしているうちに時間がやってくる。
今回は、ドアを開けてこんにちは、なんてベタなことをするつもりはない。
俺の秘技の一つ「かくれんぼ」を仕掛ける。
ドアに貼ってあるメッセージには「鍵あいてるから入って」の文字。
そして、まりは部屋の中に隠れている俺を探すことになる。
とはいえ、ホテルで隠れることができる場所など早々ない。
ベッドの脇に不自然に盛り上がった布団をみつけたまりが近づいてくるのを感じる。
がばっ。
満面の笑みを浮かべたまりの顔。
床面レベルに転がった私は、しゃがんだまりの股間をとらえる。
黒!?!?こ、これはっ?
「あー、今日ははいてるんだー」
くっ、男の敵パンツだった。ガードが固い。
まりの本日のいで立ちは、ガーリーだった昨日とは打って変わってとてもラフな格好。
原色ペイントのような柄の黒Tシャツに、黒のミニスカート+男の敵パンツ。
この日のメインイベントは「フリーシナリオ方式」。
俺が用意したカードから、まりに好きなものを選んでもらう。
全部は選べないからこそ、どれを選ぶかにその人の個性が出る。
えっちな筋トレ
まず、まりが選んだのは、「えっちな筋トレ」。
「どうやってやるのー?」
「まずはお手本を見せよう!」
まずは腹筋である。
いたってシンプル。腹筋しながらキスするのだ。
まりが足先を抑えてくれて、俺が起き上がるたびに、唇が触れる。
ここで、優しいキスになるように腹筋の力で上体を制御するのが、愛ってヤツである。
その瞬間、ふわっと香る彼女の匂い。特別な香水はつけてない。でも、彼女の香りそのものが魅力的なのだ。
交代して、今度は俺がまりの足を抑えてまりが腹筋。
彼女の顔が近づいてきて俺にキスをしては、離れていく。
腹筋のはずなのに、イチャイチャしている。まりは楽しそうである。
次は、お姫様抱っこスクワット。
これは、俺がただ頑張るというやつである。
やることはいたってシンプル。まりをお姫様抱っこして、その状態のままスクワットを続けるだけだ。
「重いよ!」
と笑いながらも、腕の中でまりは軽い。
俺がスクワットするたびに、まりは小さな声で笑う。
「がんばれー」
そういってキスをしてくる。よくわかっている。
こういうとき、キスなんてされたら男は限界突破するものだ。
「こんな筋トレ、男女の部活でやったらみんな頑張るよね!」と笑いあうまりと俺。
スポブラセットのコスプレ姿に身を包むまりのスレンダーでしなやかな肢体が映える。
教えて!あなたのお話
次にまりが選んだのは「教えて!あなたのお話」。
何のことはない。腕枕しながらいろんなお話をするだけである。
お互い、相手に聞きたいテーマを決めて、交互にお話しを進めていく。
初恋、初体験、妻、子ども、、、そんなような話題を進めていく中で、
まりの「キスの女神」ぶりを知ることになる。
「初恋っていつなのか線引きが難しいと思うけど、幼稚園のときからなんかあったよ」
「ほうほう」
「なんかさ、お昼寝の時間ってあるじゃん?」
「あるある、寝ないやつ!でも寝ちゃうやつ」
「そうそう。その時間とかでさ、男の子とお布団に潜り込んで、中でキスしてたんだよね」
「マジか笑」
プロフィールで「キスしちゃうからね」と謳う彼女。
それは、ただのアピールだけでなく、彼女そのものであるのだ。
もはや、まりの性癖=キスといっていい。
そんな幼少期の話を聞いて、「なるほど、キスの女神ここにあり」と確信した。
これはもう次に選ぶのは「ベサメ・ムーチョ」しかない。
ベサメ・ムーチョ
「Bésame Mucho(ベサメ・ムーチョ)」。
「たくさんキスして、今日が最後の夜のように」とスペイン語で情熱的に歌い上げるこの歌。
もうこれしかないだろって流れである。
YouTubeで「ベサメ・ムーチョ」の動画をまりと一緒に見るのだ。
そこに映るのは、世界中のカップルが情熱的にキスを交わすシーンの数々。
官能的なギターとピアノ、そしてボーカル。男声バージョンも女声バージョンもいいこの曲は
世界中のキス集を引き立てる。
隣で、まりが興奮しているのがわかる。
俺たちも、負けじと情熱的なキスを交わした。動画に負けるわけにはいかない。
曲が終わっても、まりの唇は俺を離してくれなかった。
「もうシナリオいらんよね」って、自然と流れに身を任せる。
まりが目を潤ませながら俺を見て、でも恥ずかしそうに目をそらす。たまらない。
昨日とは違い、今日は時間をかなり長めにとってある。
じっくりゆっくりねっとり。お互いもう何も言わなくてもすることは決まっていた。
元気でね
「元気でね。」
別れ際、彼女は神妙な顔をして言った。
その奥にある感情が少しこみ上げているようにも見えた。一瞬「泣いてる?」とも思ったが、そんなことはなかった。
こんな時、俺は何を言えばいいのか。いや、何も言う必要はないのか。
このアルプスヴァルドの地に来ることはそうそうないだろうし、そのような用事もさすがにでっち上げられない。
また会えるよ、という嘘も。もう会うことはないだろう、という的確な未来予想も無粋でしかない。
こういう時にも何か言わずにはいられない俺は、なぜか彼女の前髪をほめた。「今日のこれ、かわいいよね。」
「ふふっ。ありがと。」そういって、彼女は歩いて行った。
彼女に書いてもらったメッセージカード。そこには、「出会ってくれてありがとう。」とあった。
ありがとうは、こっちのセリフだ。
アルプスヴァルドの地で出会った女神。
ただただかわいく、そして楽しかった。
もう会うことはない、とは言い切れない。だが、その可能性はとても低い。
ただ、それでも楽しかった時間というのは変わらないし、
まりという素敵な女の子がいたというのも変わらない。それだけは確かである。
さて、帰るか。帰り道だって立派な旅である。
私はBesame Muchoを歌いながら高速を走りつづけたのだった。
次の話→
奇跡は捻じ曲げてでもつくるもの