『立川談春独演会 2022』熊本県立劇場
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ポスターにある『九州吹き戻し』は2012年頃、
イムズホールに隔月で来ていた頃(!)から度々自ら話題にはしていて、
都度、期待する通の客から拍手が送られていた。
が、同時に毎回「長くて難しくて面白く無い噺」とも評して、
結局福岡周辺では演りそうで、演って無かった、と思う。
大ネタらしい事は分かったが、何時か、かけてくれると思い
以後、調べもしなかった。
それを、どう言う経緯があってかは不明ながら
舞台である熊本で語った今回。
やはり、最初に
「長くて、難しくて、面白くなくて…」と前置き。
予習せずに聴いた感想は
「なるほど、当時なら通な落語ファン以外からは中々反響が得られにくいかも」。
ここ数年で話芸を聴く客のリテラシーが確実に上がった今なればこそ、
の判断だろうか。
それは、やはり、松之丞~伯山効果と思うのだが。
いや~、聴けて良かった。
『幇間もち 揚げての末の 幇間もち』など
主人公『きたりの喜之助』の解説が冒頭にあり、
江戸から肥後熊本まで流れて行った理由の談春流の解釈も。
毎度の解説・脚注が好き。
談春が語る妄想設定に「ヤクザ辞めたくなったな」とこぼす
『ソナチネ』の村川を思ったり。
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しかし、その後はそこまで虚無的では全く無く、
佐平次っぽかったり、無邪気だったり。
夜中、旦那に「直ぐにも江戸に帰りたい」と言い出す辺りは、
先を知らなかったから恐ろしい想像をした。 夜中の相談は怖い。
(詳しくは双蝶々を確認)
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勿論そうはならずに千五百石積みの船、今で言うタンカー?に乗船が許されて出航、凪いだ海での船頭とのやり取り、言い立てがあり、
そして大暴風雨によるパニック描写へ。
結果、テーマは談志が色紙に添えたフレーズ
『人生、成り行き』と言う事か。
落とした後のトークで、談春が
「(談志から?)演るように言われた」と語ったネタが
『包丁』『おしくら』『九州吹き戻し』『札所の霊験』の4本。
『包丁』の迫力は記憶にあり、『おしくら』も確か、聴いた気が…??
『札所の霊験』は当時の松之丞が「圓生で聴いた」と何度も語っていた。
が、談春では聴いたことがない。
談春の『札所の霊験』をまたいつか楽しみにしよう。
遡って。
枕は世界情勢をある業界に見立てての見解。
からの、『三方一両損』では、
わざわざこんな事件に奉行直々に出張って来るのは何故かと推理、
大岡越前の異常性も焦点に。そりゃそうか。
お白洲での膳部の場面で、
大家に「尾頭付きの鯛を婆さんに持って帰りたい」と言わせる。
『宮戸川』とか『替り目』とかでも表される、
最近の談春の愛妻家ぶりは何なのか。心温まるなぁ。