
暗殺者と爆弾魔の共通点?ルイージ容疑者とユナボマー(セオドア元受刑者)の共通点を分析する
・生命保険会社社長を銃火器で殺害したルイージ・マンジョー二容疑者はセオドア・カジンスキー元受刑者(アメリカで3人を爆弾で殺害、そのほか複数名に重軽傷を負わせた爆弾テロ犯。受刑中に死去したため刑期を終えた)の著作「産業社会とその未来」という本を高評価していたことがわかった。詳しくはこの記事を参照。
ルイージ容疑者・セオドア元受刑者の共通点
・ルイージ容疑者・セオドア元受刑者には巨大企業とその複合体を憎んでいるという共通点がある。ルイージ容疑者はユナイテッド・ヘルスケア社を憎む文言をケン・クリッペンシュタイン記者から流失した文章に書いているし、「産業社会とその未来」の書評では石油企業を例に挙げて「彼らを生存のため焼き殺すのに躊躇が必要でしょうか?」と暴力・⚪︎人を大っぴらに肯定する文章を残している。
・両者には犯行に対する反省の念が薄いという共通点がある。両者ともに事件を起こすに至る強固な思想・信条があり、その達成のためには暴力や違法行為も辞さないという政治的テロリズムの発想がある。
ちなみにルイージ容疑者はUHC社長を銃⚪︎しただけでなく、IDカードの偽造・違法な銃の製造などなどといった様々な犯罪行為を行なっていたことが明らかになっている。
・両者には様々な不幸が重なっているという共通点がある。詳しくは後述の「ルイージ容疑者の不幸と怒り・憎しみ」、「セオドア元受刑者の生い立ち」を参照。
ルイージ容疑者の不幸と怒り・憎しみ
・ルイージ容疑者は脊柱もしくは腰椎の手術を受けている可能性が高い(彼のXのトップに彼のものと思しきX線造影が掲載されている)のだが、その手術代に充てる保険金の受給をめぐるトラブルがユナイテッド・ヘルスケア社とあったということが推測できる(UHC社は「そもそもルイージ容疑者は顧客ではなかった」と主張しているが、ウソだろう)。
・2次情報なので確認は取れていないが、この文章が本物だとすると彼の母親も本来必要な脊柱狭窄の治療をUHC社が保険金を出し渋ったがために受けられていなかった可能性がある。
だからと言って⚪︎人が許されるかどうかはアメリカの裁判官と陪審員・有権者たちに任せるとして、彼はかなりの怒りや憎しみをUHC社に向けていたということが推測できる。
セオドア元受刑者の生い立ち
・セオドア元受刑者の生い立ちについて。彼は麻疹症で幼児期に病院の隔離室にいた時期があり、退院後感情が希薄になり家族が心配したという弟の証言がある。幼児期の心的外傷が何らかの人格や認知の歪みを作り出した可能性がある。
・小学校の知能テストでIQ167を記録したという。そのため飛び級するのだが、年上の生徒から虐めを受けていたらしい。
・かなりの恥ずかしがり屋、現代風に言えば「コミュ障」であったためブルーノ・ベッテルハイムが校長の自閉症児の小学校に入学させることをセオドアの母親が検討したという。ちなみにブルーノ・ベッテルハイムの「冷蔵庫マザー」論は医学的に誤った理論であるとされ、現代ではアテにされていない。
・1990年、セオドアの父親は末期癌と診断された後拳銃自殺している。
・ハーバード大学に16歳で入学している。この際大学2年時にCIAのMKウルトラ計画に関わっていたヘンリー・マレーの実験に参加し、信条や小論文を侮辱されその反応をテストされるなど精神的虐待に近い扱いを受けていた。セオドアはこの実験には200時間参加していたことがわかっている。
・ミシガン大学大学院に進学し、複素解析論を専攻した。この頃の体験に関し「ミシガンではどれだけ基準が低いのか?哀れもいいところだ」と大学を見下すような態度をとっている。
・25歳時、カルフォルニア大学バークレー校の助教授となり開学以来最年少の助教授となる。授業は教科書をただ朗読する、質問に一切答えないなどかなりのコミュ障だったという。その2年後に突然辞職し以来数学の研究には関わっていない。
・大学辞職後の2年後(1971年)、モンタナ州リンカーン郡にて有機農法や火おこしなどを活用した自給自足生活を始める。しかし彼が暮らす古屋の周囲が不動産開発によって伐採され始め、1975年からこの近くの工事現場に破壊工作を行っていたという。この頃からキリスト教無政府主義者のジャック・エリュールの著作などを読み社会学・政治学の研究を始めたという。
・社会学・政治学の研究の結果、彼は「自然を守るにはまず産業技術に支えられた社会体制を暴力で壊すことが必要」という新しい政治思想に目覚めたという。
・1978年から1995年にかけて、セオドアは計16個の爆弾を製造し3人を⚪︎害、23人に重軽傷を負わせた。爆弾には“FC“という捜査を撹乱するためのイニシャルが刻まれていた。
・セオドアは「産業社会とその未来」という自信の政治的信条を書いた論文を公表するようマスコミ各社に要求する文章を1995年未明に送りつけた。論文は9月19日にニューヨークタイムズ・ワシントンポストの2紙に掲載された。
・日本にもセオドアの信奉者がいるのか、「産業社会とその未来」の日本語全文訳を制作し公表しているサイトがある。
・1996年4月3日、FBI捜査官がセオドアの小屋を包囲し彼を逮捕した。FBIがユナボマーをセオドアと特定したのは、セオドアの弟・デイヴィッドの密告によるものである。ディヴィッドは「産業社会とその未来」と兄の政治思想・文章の癖に注目し同一人物である可能性に思い至ったという。
・ディヴィッドは匿名での密告を望んだが、FBIの何者かがマスコミに密告情報を流出し後にセオドアに知れ渡った。それ以来セオドアは家族と絶縁している。
・セオドアは彼を心神喪失であるとみなす弁護団の方針を嫌い、そのため弁護団を解任してしまったため審理が停滞した。検察は彼を公判なしで終身刑とする司法取引を提案し、セオドアはそれに同意した。
公判がろくに開かれなかったため、彼の犯行動機や標的の選定といった事件の詳細に関しては明らかになっていない点もある。
・裁判が終わった後、彼は支援者の一人である思想家と面会し「泣いたり喚いたりする奴がいたが、もう司法取引は済んでいる。なんの意味がある?」と発言した。個人的には「人として終わってんな」と思った。
・セオドアの製造した爆弾で負傷して生還したゲイリー・ライト氏は審理中に証人として意見を述べた際、「私はあなたを憎んでいない、とっくに許している」とセオドアを許す発言した。その発言にセオドアは鉛筆を落として聞き入ってたらしい。個人的にこの件を解釈するなら、セオドアは総体的な人格が人として終わってるとはいえ良心の呵責や感情というものが全くなかったというワケでもないのだろう。
断り書き
※こうした人間性が試される事件に触れるとどうしても個人的に言いたいことが多くなってしまうので、「個人的には…」という主観と感情に基づく記述が多くなってしまいました。ご了承ください。