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環境政策の提言 ー「人新世の資本論」 + 近代社会の維持と環境負荷の逓減を両立するための枠組み作り
「人新世の資本論」の著者、斎藤 幸平氏は技術革新による脱成長経済と環境対策の実現は不可能と考えるが、将来のコンピューター、および機械類全般をより消費電力の少ない次世代の機械に置き換えることは近代社会を維持しつつ環境対策を実現するためにも必要不可欠であると私は考える。
「シンギュラリティーは近い」より
レイ=カーツワイルが「シンギュラリティは近い」で指摘しているようにプロセッサーの1素子辺りの消費電力は指数的に減少していて、30~40年代の間には2020年の1/100の消費電力にまで減ると予測している。2040年を期に旧来のプロセッサーを最新式の物に全て代替すれば、パーソナルコンピューターやサーバーに由来する環境負荷を最大で99%削減することができる。
それを実現するためには、
①2040年を期にすべてのコンピューターを新式のコンピューターに代替する枠組みを整える
②2040年以降はコンピューターの製造に伴う環境負荷を減らすため、製造数×単位当たりの環境負荷という係数をもとに製造制限を設ける
③製造制限の他、例えば従来の1割以上の電力を消費する様に設計したコンピューターには使用制限を義務付けるなど、製造した新式コンピューターの使用法にも制限を課す
以上の抜本的な対策を実現しなくてはならない。
新式コンピューターへの代替を目指した国と企業の枠組み作り、新式コンピューター導入以降の環境負荷の逓減を維持し続けるための製造・使用の合理的な制限、この3条件がコンピューターに由来する環境負荷を大幅に削減しつつ近代社会を維持するための大前提となる。プロセッサー以外にも、より環境負荷の少ない機械へと現行の機械を代替しかつ生活水準と環境負荷の逓減を維持するための枠組みを作ることは2040年以降の文明社会を維持するために欠かせない公共政策の1つであると私は考えている。