わたしがオバさんになったら、常務になりたい
「もうオバさんじゃないんですか?」という問い合わせは、この先一切受け付けかねますのでご承知置き下さい。
貧乏アラサーのわたしは、あまりの金のなさに落ち込み、結構な闇マインドで土日を過ごした。
なんせ金がない。
いい年こいてこんな情けない焦燥感に駆られるとは、人生何があるかわからない。
働くしかないアラサーと14位の常務
本日、わたしの担当クライアントたちと、接待でゴルフコンペに行ってきた弊社の常務。
いつものスーツ姿とは異なる、ゆるキャラ感を彷彿とさせるなんかかわいいニットべストに包まれて帰社した彼は、わたしを呼んだ。
行くと、「これ、あなたがどうぞ」とほほ笑んでいる。
何かと思うと、「14位」と書かれた白い封筒。
そうか。
常務、きょうのゴルフは14位だったんだ。
へたっぴなんだ。(謝れ)
「業務で行ってきたのに、ゴルフはとても楽しかったし、細々した実務をやってくれてありがとう、手間賃だと思って」
へたっぴだと思われていることも知らずに(謝れ)、常務は優しく言った。
中身も知らないまま受け取り、上司に報告したら、「シュガー(苗字)が貰いなさい」と言う。みんな優しいかよ。
そのまま袋はカバンにしまい、気が付けば一日が終わった。
帰りの車に乗り込むと、ふと常務の袋を思い出した。
中身が気になって、その場で開けてみる。
なんと
JTBナイスギフト10,000円分
テッテレー!!!!!である。
「テッテレー」とは何の音か知らないが、アラサーのやすこが思わず口外するほどに興奮した瞬間だった。
折しも、泣きっ面に顔面パイを喰らい、5万円という大学時代の家賃に匹敵するような大金を一瞬にして失っていた。
まさに「ナイスギフト」
これ以上のナイスなギフトなど、わたしは人生で貰った経験がない。
圧倒的ナイスギフトに、わたしは完全に射抜かれ、しばし呆然とした。
大人になると、こんなことができるのか。
こんなことができるのが、大人なのか。
常務は、袋の中身が気にはならなかったのだろうか。
14位で10,000円も貰えるなんて、1位の人は何を貰ってんだろうか。
ナイスギフト、どこのお店で使えるんだろうか。
めくるめく疑問が、浮かんでは消えた。
常務のような、大人になりたい
博識でおちゃめ。
机の上が信じられないくらい汚いが、みんなに愛されている。
そのうえ、ナイスなギフトをさりげなく部下にもたらす。
ゴルフが14位だなんて、誰が気にした。
(お前だわ)
なんて素敵なのだ、と思った。
きょうのわたしがご機嫌なのは、常務のおかげ。
いつかわたしがオバさんになったら、常務のような大人になりたい。
博識で、おちゃめで、欲のない。
さりげなく部下にハッピーをもたらす、ニットベストの似合うおじさん。
14位でありがとう。