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KIRIN キャリア教育活動(Day1, 2)
はじめに
働くとはどういうことなのか、自分はこれからどんな人生を歩んでいきたいのか
就職活動を始めて多くの不安な気持ちに駆られる中、このキャリア教育活動の募集を見つけた。
自分の将来を思い描くきっかけになるのではないかと思い、参加を決めた。
本活動では、「一番搾り とれたてホップ生ビール」を中心に、「ホップ畑から製造、広報、営業」というKIRINの業務について、上流から下流までを広く学ぶ。
この記事では、8月上旬に行われた Day1, Day2 での活動をまとめようと思う。
Day1 キリンビール仙台工場
Day1 では、ビールの基礎的な知識を学んだ後、仙台工場の見学をした。
ビールの基礎知識
はじめに、キリンの歴史とビール造りについて学んだ。
ビールの主原料である「麦芽」と「ホップ」の香りや味を体験しながら、ビール製造のプロセスを想像した。
麦芽は、まさに麦の香りが強く、食べてみるとクッキーのような香ばしさを感じた。
ホップは、ペレットになったものと、収穫から 24 時間以内に凍結させた粉末の香りを体験した。ペレットはハーブのような青っぽさを濃密に感じた一方で、凍結ホップはペレットに比べて爽やかな香りがした。
加工方法によってここまで香りに違いが現れるのかと大変驚いた。
製造されたビールは、パッケージングの工程で、こだわりが詰まったデザインの缶やビンなどに充填される。ここでの品質管理の徹底する姿勢やその考え方は、この2 日間の活動で最も印象深かったことの一つである。
「品質劣化を最小限にする」、「品質の均一性を確保する」
KIRINがこのような目標を掲げる背景には、
「工場では 1 本/数万本 だが、お客様にとっては 1 本/1 本 である」
という考え方があることを知り、お客様一人一人を大切にすることの重要性に改めて気付かされた。
いざ、工場見学へ!
ビールの基礎知識を学んだ後、実際に工場で働く社員の方々に解説をしていただきながら、実際に製造エリア(醸造エリア・パッケージングエリア)を見学した。
はじめに、醸造エリアで麦芽とお湯を混ぜる工程を見学した。工場内は温度管理がされているため、熱気がすごかったことが印象的であった。
麦汁濾過やホップの投入、煮込む工程を経て、次にパッケージングエリアを見学した。ここでは醸造エリアで造られたビールが、我々がスーパーでよく見る缶に充填される様子を見ることができ、一気に親近感が湧いてきた。
ここで、座学で学んだ品質管理の徹底ぶりを実感することとなる。
充填する前に容器のチェックが入るが、その際、「入味」や「割れ」の確認を機械と人がダブルチェックを行っているのだ。
ほかにも、ここまでするのかと驚くような、「工場の安全と商品の品質の管理」に関わる気づきが得られたが、気になる方は是非この活動、または工場見学に参加して実感していただきたい。
クラフトビールについて
工場見学から戻り、副工場長からクラフトビールについての講義を受けた。
クラフトビールを飲んだことがなかった私は、高価で飲みづらいイメージを持っていたが、クラフトビールが生まれた経緯やその製法の違いを学び、是非飲んでみたいと思った。
Day2 遠野市・一関市にて
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遠野のホップ畑を見学!
Day2 では、まず新幹線で岩手県遠野市へ向かい、遠野で7年間ホップ栽培を経験している里見さんの畑を見学した。
ホップ畑に到着する寸前、他の畑とは大きく異なる、人間の背丈を超えるほどの高さのある植物が見えた。まさにそれがホップだったのだ。
13 m まで伸びるつるを調整して 5.5 m の高さにして作られたホップの壁は大変迫力があった。
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「摘んだホップを割ってみてください」という里見さんの言葉通り、半分に割ってみると、中に見える黄色い粉末「ルプリン」の華やかな香りが広がった。
工場でペレットや凍結ホップを嗅いだときに感じた青っぽさはなく、爽やかで柑橘のような香りがした。「香水に欲しい!」と思うほど好きな香りであった。
「今年は昨年よりも芯があり、重みがあるため、期待できる」という里見さんの言葉もあり、このホップで造る「一番搾り とれたてホップ生ビール」はどれほど豊かな香りと味わいになるのか、とても楽しみになった。
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ホップ畑の見学をする中で、里見さんのホップ農家を営む上での悩みや、工夫して取り組んでいることなど、様々なお話を聞かせていただいた。
① ホップやタバコのような主要でない作物は、専用の機械が大変高価であること
② 収穫までに殺虫剤を散布可能な回数や日数が決まっており、病気や害虫の対策に苦労していること
③ ベテラン農家に栽培の方法を聞いても、土質が異なることで伸び方や生育度合いが違うため、自らで正解を見つけ出さなければならないこと
上記以外にも多くの問題に直面しながらも栽培を続ける農家にとって、
KIRINが安定した値段で購入してくれること
そのホップを使用した商品に「遠野産ホップ使用」と表記され、全国で販売され
ること
はやりがいの一部になっているのだろうと感じた。
これまでビールは「大人の飲み物」という認識が染み付いていた私は、ビールを進んで飲んでこなかった。しかし、今回のホップ畑の見学を通して、ビールとその香りや苦味の素となるホップの魅力に気付かされた。
ビールへの苦手意識がある方ほど、生のホップの香りの豊かさを体感してほしい。きっと「自分が飲めるビールを探したい」とビールへの興味が湧くはずだ。
遠野醸造 TAPROOM
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ホップ畑を後にして向かったのは、遠野駅から徒歩 3 分のところにある
遠野醸造TAPROOM。
店内にはホップ畑の写真がいくつも飾られており、奥には小さなビールの発酵タンクがいくつも並んでいた。
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遠野醸造TAPROOMは「コミュニティブルワリー」として誕生した。ここでは、農業や地域が抱える課題を解決したいという思いから、ホップを軸にした新しい産業に取り組む株式会社 BrewGood の代表・田村さんにお話を伺った。
ホップの生産地である遠野には
① ホップ農家の高齢化への対応
② 加工施設や機械の老朽化による修理
③ 生産組合の維持
④ 面積あたりの収穫量の安定化
以外にも多くの問題が山積している。
田村さんは、課題解決だけでなく、「遠野をビールの里」にすることを目標に、ホップ栽培を守ることで、農家だけでなく観光をも守りたいという志をもって活動している。
約1 万人が来場するホップ収穫祭・サイクリングツアーなどを通じて地域経済の活性化を進めながら、遠野の応援者を増やしていく。ふるさと納税などにより集まったお金で施設改修やホップ畑拡大支援を行うことで、ホップ農家の課題を解決するとともに、新規就農者の採用・育成を強化していきたいとのことだった。
また、持続可能なホップ栽培を実現することを目的に、研究をしながら醸造が行える、新たなブルワリーの立ち上げを進めているというお話を伺った。
このブルワリーでは、「これまでの取り組みの延長線ではできないことを実現したい」と希望に満ちた表情で話されていたことが大変印象に残っている。
世嬉の一酒造
最後に訪れたのは、一関市にある世嬉の一酒造である。
こちらは日本酒を造るための蔵であったが、リニューアルを行い、現在は「いわて蔵ビール」というブランドでクラフトビールの製造に取り組んでいる。
ここでは、麦芽が異なる4種類のビールを試飲させていただき、その特徴やクラフトビールの歴史を学んだ。
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試飲させていただく中で、最も軽い味わいで飲みやすかったのはヴァイツェン(画像 左端)であった。しかし、時間が経つと最も苦手と感じていたスタウト(画像 右端)の強い苦味がマイルドになっており、大変飲みやすくなっていた。
味が変化した原因は何だと思いますか?
それは「温度」です。
この事実にはとても驚いた。これまで飲んだ中で、温度によってここまで味が変わる飲み物はあっただろうか。
世嬉の一酒造では日本酒とビールの製造方法の違いから、使用する麦芽や温度によるビールの味わいの違いまで、幅広く学ぶことができ、大変貴重な経験をさせていただいた。
最後に
Day1, 2 を通じてお世話になったキリンビール 仙台工場の皆様、関係者の皆様に改めてお礼申し上げます。
この2 日間でビール作りの奥深さと、KIRINと作り手のビールへのこだわりを実感した。
Day 1 で訪れた仙台工場では、ビールの基本的な知識と、醸造からパッケージングまでの、KIRINの品質への強いこだわりを学んだ。
Day 2 で訪れた遠野の畑・醸造所では、遠野の活性化と国産ホップの強みを活かしたこれからの産業展開について、数多くの興味深いお話を聞くことができた。また、世嬉の一酒造では、マイクロブルワリーだからできることを最大限活かした製造方法を学ぶことができた。
これまで「大人の飲み物」と敬遠してきたビールを飲んでみたいという思いが生まれただけでなく、遠野醸造の新たなブルワリーが完成した暁には、是非足を運び自分ができることで日本産ホップの盛り上げに関わりたいと考えるようになった。
今回訪問したホップ畑で収穫されたホップの仕込み式が今から楽しみでならない。