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【陽だまり日記】じんわりポトフで、おつかれさま。
朝、家から出て数歩のところで、気づいた。
足の爪先が冷えきってしまっている。
その時に思った。
今日の夜は、あったかいポトフが食べたい。
夜、会社から出て数歩のところで、気づいた。
手足がすっかり冷え切ってしまっている。
その時に決心した。
今日の夜は、あったかいポトフを食べよう。
揺るがない気持ちを胸に、帰宅と同時にキッチンへ転がり込む。
冷蔵庫を開けるとキャベツが無かった。
ちょっとくじけそうになるけれど、ええい、白菜で代用すればモーマンタイ。
人参とじゃがいも、玉葱、エノキに、それから厚切りベーコン。
次々に食材を取り出していく。
それにしても、厚切りベーコンってなんて素敵なんだろう。
ハウルの動く城のようなハムエッグも夢のようだけれど、煮込んでとろけさせた肉厚のベーコンは絶品に違いない。
にんまりと唇を緩めつつ、野菜を切り始める。
まずは玉葱。
半透明の瑞々しさをスライスすると、あっという間に涙目になる。
それから人参、じゃがいも、エノキを少し大きめに、ベーコンは言わずもがな、ちょっといつもより大胆に、豪華に、思い切って分厚くカットする。
小さな両手鍋に、オリーブオイルを垂らし、にんにくのチューブを少々。
香りが立つ頃に玉葱を入れ飴色になるまで炒めると、じゅわんと期待が高まる。
とろとろの玉葱が焦げないように注意しながら鍋に敷き詰めるように野菜やベーコンを並べてゆく。
水をなみなみと注いでコンソメを沈めたら、あとは弱火でことことと煮るだけ。
スープを煮る時間と言うのは、幸福を連れてくると思う。
不思議とちょっと心に余裕ができるのだ。
洗い物も済ませて、こまごまとした家事も、いつもより軽やかに片づけて仕舞える。
暫くして、ぐつぐつ音を立てるお鍋を開けると、朝から焦がれていたポトフが出来上がっていた。
お気に入りのスープカップによそって、食卓に並べる。
ふわっと湯気が立ち上る中、両手を合わせる。
スプーンは、木製のものがよろしい。
あつあつのジャガイモを救い上げて息を吹きかける。
口に運ぶとほろっとほどけた。
はふはふ、火傷しないように少しずつ、少しずつ。人参も玉葱も味わい深く、にんにくのお陰か体があたたまる。
厚切りベーコンは、言わずもがなじわりと甘い。
そして、お肉を食べている!、という満足感を連れてくるから最高です。
あっと言う間にぺろっと食べ終え、迷いだす。
あー、おかわりしたいな、もう1杯だけ。
だめかな、食べすぎかしら。
でも、今日も頑張ったし、とっても美味しくできたし、なんせ、とっても美味しいのだから仕方ない、仕方ない。
そうして、立ち上がってキッチンへと向かう。
自分を労って、たっぷり甘やかして、はふはふする。
あー、おいしい。
今日もよく生きました。
お粗末様、おつかれさま。