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【陽だまり日記】サンデー・カフェタイム
成人の日の今日は、晴れ風が吹いていた。
北から吹いてくるそれは、冴え冴えとして、明るくて、透明だった。
私が出歩いていた時間帯が、正午の少し前だったからか、振袖姿の若い子はあまり見当たらなかった。
もしかしたら式の真っ只中だったのかもしれない。
大人になって久しい。
成人式に出席していた私は、慣れないツケマツゲに、目をしぱしぱさせていたのを覚えている。
……正直言うと、普段と違う目の重さに気もそぞろで、誰とどんなことを話したか覚えていない。
あの時代は、兎に角、髪もまつ毛も盛ることがトレンドだった。
今の「映え」とは違うあの「映え」は、とうの昔のことになっているようだ。
今日の私は、カフェに居た。
生来のインドア気質の私としては、これは貴重なことなのである。
と、言うのも、すてきなお誘いがあったのだ。
「キッシュの美味しいカフェが、あるよ。」
「なんとポタージュもついてきます」
「珈琲も美味しいよ。」
「一緒にどうかな。」
私のツボが、ようく分かっておられる。
かくしてお家からイソイソと珍しく出てきた私。
明るい日差しの差し込む店内で、ぬくぬくとしながらお目当てのものを頼む。
「ナツメ、髪、伸びたね。」
「……最近、奇抜な髪型にしたい気分。」
「するの?」
「と言いつつ、たぶん、しない。」
若いあの頃にチャレンジしておけばよかったな、なんて何でもない話。
ゆるい、くだらない、会話の中で、運ばれてきたプレートは、もう、目で見るだけで美味しかった。
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ポタージュは滑らかで甘みがあって、とろんと幸せの味がした。
キッシュは小ぶりに思えたけれど、チーズにトマトにほうれん草、それからベーコンとぎゅっと中身が詰まっていて、むしろ此れでちょうどよい。
パイ生地が、むしろパン生地に近くて食べ応えがあったからかもしれない。
なんでもない話は続く。
言葉を重ねて、頷いて、なんでもないけど、何でも無くなくて。
此れは、私達にとって定期的に必要なことなのだ。
コーヒーカップの底が見えて、暫くして、ようやく、店を出た。
晴れ風に、珈琲の香りが溶けてゆく。
若いカップルに、ご夫婦に、学生さんたち。
レッスンバッグを持った母娘に、孫と歩くおじいちゃん。
いろんな人生が、同じ明るい道を、それぞれ歩いていた。
ゆっくりと私達も歩き出す。
やっぱり奇抜な髪型にしてみようかなぁ、と言ってみる。
隣のその人は、笑ってくれた。