見出し画像

あゝ忘れがたき小倉の人よ①小倉牝馬ステークスって何ですか?

暦を眺めけるに聞きならはぬ名ありてぞ問はむ。
「小倉牝馬競走」とは何やと。

世は受験シーズン真っ只中ですから、学生諸君の勉強の一助になればと今回は古語で書いてみようと考えましたが、やっぱり読みにくいのでやめておきます。
一応、書いた部分だけ現代語訳すると次のようになります。

競走カレンダーを眺めたところ、聞きなれない名前があったので尋ねてみます(係り結び)
「小倉牝馬ステークス」とは何ですかと。

初めて見るレース名です。
調べてみると、小倉牝馬ステークスとは愛知杯を引き継いだ新設重賞だそうです。
ちなみに元の愛知杯のほうは、京都牝馬ステークスを引き継いで三月に引っ越しになったらしく、なかなか、ややこしい話ではあります。
ボクは、週に重賞がいくつかあっても1レースしか買わないのですが、新しいもの好きということもあって、今週はこの小倉牝馬ステークスを買ってみようと思います。

ノスタルジックな新設重賞

中山のAJC杯には、かのダービー馬が出てくるようですが、小倉牝馬ステークスは裏開催で、しかも土曜日に実施される牝馬限定の重賞とあって、枕詞がいくつあっても足りないほど、しんみりと落ち着いた印象です。

そもそも北九州という土地自体がノスタルジーを感じさせる場所なのです。
「門司港レトロ」で知られる門司港は、明治初期に貿易港として開港しました。
今ではその賑わいは失われましたが、かつての栄華の面影を残す建造物が市内に数多く残されています。
もっと古くは源平の時代、壇ノ浦の戦いで平家が滅んだ際、幼少の安徳天皇が小倉に落ち延び、この地で亡くなったという話を聞いたこともあります。
表舞台から離れた地で行われるこのレースは、北九州のイメージそのものと言えるでしょう。

和布刈公園めかりこうえんの小高い丘の上から、夕焼けに染まる関門海峡を見おろせば、遠い日の思い出が心に浮かんできます。
小倉牝馬ステークスは、戻らぬ日々へと人をいざなうレースなのです。

あゝ忘れがたき小倉の人よ

ボクにも、ふと思い出す人がいます。
名前は覚えていないのですが、スラッと背が高くて髪の長い、細面できれいな人でした。
歳は27、8でしたでしょうか。
アナウンサーの鷲見玲奈さんに似ていたと思います。
どこかのお店で出会い、話が盛り上がって気に入られたのでしょう。
その年は、しょっちゅう会う約束をして、あちこち出かけたのを覚えています。
もちろん純粋に友達としてです。
良いところのお嬢さんでバレエやオーケストラが好きらしく、そういうのを観に行きました。
趣味を教えると、自分もやってみたいというので、春の頃は高原で乗馬を楽しんだり、冬には信州へスキーに出かけたりもしたものです。
でも、いつごろからか便りが届かなくなりました。
そういうときは大抵、ボクに飽きたか、恋人ができたかだと心得ているので、それ以上あえて連絡することもせず、それっきりになってしまったのです。
早い話がフラれたのですね。
たまに旅先で風に吹かれていると、そのときのことを思い出すことがあります。
そして「あの娘は元気にしているかな」と彼女が暮らす街のほうを向いて、旅の空に幸せを祈ってみたりするのです。
まぁ、ボクはこの手の話には事欠かないので四方八方、祈ってばかりいるのですが。

懐かしい馬を買ってみる

つまり小倉牝馬ステークスとは、忘れがたい馬を想い、もう一度、馬券を買ってみるというレースなのです。
出馬表をご覧になってみてください。
今では買わなくなってしまったけれど、あのときはよく応援馬券を買っていた。
きっと、そういう馬の名前を見つけることでしょう。
あなたが気にかけなくなって久しいあの馬は、遠い小倉の地で今もまだ健気に走っているのです。
そんな馬を思い出し、もう一度、馬券を買ってみる。
そういう楽しみかたもあると思います。

それで今、思い出しましたが彼女は横浜の娘さんでした。
小倉どころか、わりと近場なのですが、どっちも港町だし、まぁいいかということにしておきます。

いいなと思ったら応援しよう!