アファンタジアに「無意識(自覚なし)のイメージ的な何か」は存在するか? (その1)
2025年1月10日、著名なアファンタジア研究者であるジョエル・ピアソン教授らによる興味深いアファンタジア論文が出版された。
【論文】脳活動画像の解読によって明らかにされたアファンタジアにおけるイメージのないイメージ
【原題】Imageless imagery in aphantasia revealed by early visual cortex decoding
https://www.cell.com/current-biology/abstract/S0960-9822(24)01652-X
この論文の大まかなハイライト(見どころ)を以下に意訳する。
※意訳の内容は一切保証しません。自己責任でお読みください。意訳を鵜呑みにせず、オリジナルのソースと照らし合わせてお読みください。
なお、以下文中の【🍅】印の箇所は私の個人的なコメントです。
意訳
fMRIによる脳の初期視覚野(V1)解読によって明らかになったアファンタジアにおける意識の外にある何らかの視覚的表現
今回の研究では、ファンタジア群(14人)と非ファンタジア群(18人)の二つのグループが、ある「刺激」を目で見たとき、あるいはその「刺激」のイメージを試行した(つまり心の中で「刺激」を視覚化しようとした)ときの脳の一次視覚野(V1:視覚情報をあたかも画像のような形式で処理する脳の領域で視覚処理のエンジンと呼ばれる部位)の活動を撮影し、アファンタジア群と非アファンタジア群の脳活動画像に類似点や相違点があるかを調べた。また「刺激」が何であるかを脳活動画像から解読(覗き見)できるかを試みた。
【知見1】
輝度の高い(つまり明るい)イメージを試行したときの瞳孔反応や、感情的な物語に対する皮膚電気反応といった生理的な指標において、非アファンタジア群は客観的な反応を示したが、アファンタジア群は反応を示さなかったことが確認された。つまり、アファンタジア群の脳活動は反応を引き起こすほど強くない可能性が示唆された。
【🍅これらはピアソン教授らが従来から研究してる知見】
【知見2】
アファンタジア群と非アファンタジア群の両群で、ある「刺激」を目で見たときのV1活動を比較したところ、アファンタジア群の活動は非アファンタジア群よりも弱いことが確認された。(これが何を示唆しているのかは不明)
【🍅なるほど、弱いのか】
【知見3】
アファンタジア群と非アファンタジア群の両群で、ある「刺激」を目で見たときのV1活動パターンと、その「刺激」のイメージを試行したときのV1活動パターンを比較したところ、非アファンタジア群では両方のパターンが類似していたが、アファンタジア群では類似していないことが確認された。つまり、非アファンタジア群では両方のパターンが同じ神経表現に基づいていることが示唆されており、一方で、アファンタジア群では両方のパターンは異なるプロセスとして処理されている可能性が示唆された。
【🍅これは興味深い発見】
【知見4】
アファンタジア群がイメージを試行したときV1に活動があったことを確認した。これは、アファンタジアの原因は視覚情報を処理する脳領域(特にV1)が活動していないことに起因するという従来の仮説を覆す結果となった。また、このときのV1活動は意識に昇らない(つまりイメージの主観的経験がない)ことが確認された。
【🍅こちらは従来から示唆されていた知見だが、あらためて強調】
【知見5】
アファンタジア群がイメージを試行したときのV1活動を分析し、そのイメージの「刺激」は何だったのか?(つまり何のイメージを試みていたのか?)を解読することができた。つまり、そのイメージに固有の表現がV1に存在することが示唆された。また、このときのV1活動は(おそらく活動が弱すぎるか歪んでいるため)意識に昇らないことが確認された。なお、心の中のイメージを第三者が解読したとは言っても、それは限定条件下における単純なケースであり、心の中の詳細を覗けたわけではない。
【🍅この発見はアファンタジア研究 2.0 の幕開けになるかもしれない】
【知見6】
アファンタジア群が視界の片側でイメージを試行したとき、同じ側の脳が活動してることが確認された(同側性という)。一方で、非アファンタジア群では反対の側の脳がより活動していることが確認された(対側性という)。通常、脳の活動は対側性(左側の視野にあるものは右脳が処理し、右側の視野のものは左脳が処理する)に基づいているが、アファンタジア群ではこれが逆転して同側性の活動が強くなることが確認された。つまり、アファンタジア群と非アファンタジア群とでは脳内の処理方法(配線や信号伝達の違い或いは信号強度の違いなど)が異なっている可能性が示唆された。
【🍅こちらの発見も非常に興味深い】
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