あの人、理解できひんという時点であなたの負けだ。ニューヨーク編④
Jack Nicolson / Bloodythirsty Butchers
https://www.youtube.com/watch?v=60hYAK8wcKw
当時、この歌とアボガドにハマっていました。
朝目覚めると台所でいいやわらかさのアボガドを半分に切り、
宇宙人の触覚の先っぽみたいな種をとって半分は冷蔵庫に。
もう半分をもってロビーの机に。腰をおろして一息つきます。
僕の定位置からは机をはさんで向こう側にドアが一つ見えます。
そのドアは特に朝は全開なのでした。
ドア向こうの8畳ほどの部屋にはマットレスが一つ。他に家具はありません。
そこにルームメイトの白人男性と女性が服も着ずに寝ています。
いつものモーニング・ビューです。
僕は紳士なのでドアをノックしてから閉めます。
このルーティーンもいつの間にか当たり前になっていました。
彼の名はケビン。イタリア系の端正な顔立ちにビール腹がチャームポイントです。
アボガドの食べ方もこの歌も家具の断捨離も彼に教えてもらいました。
性格は底抜けに優しく、なぜか毎朝Blue Moonを渡してくれました。
彼は教科書に出てくる英語も出てこない英語もなんでも教えてくれました。
ギターが大好きで、朝っぱらから酔っぱらった声でオリジナルソングを歌ってくれました。
全ての歌の名前は「Nana」で歌詞も「Nana」だけでした。
BECKのコユキが生前のエディの曲を耳で覚えてましたが、僕の耳には彼の曲が完全に染みついてます。
そしてそのうち僕は学校へ、彼はどこかへと出かける、この流れが日課の一つでした。
日課はもう一つありました。夜になると彼が女性を一人連れてくるのです。
彼が連れてくる女性は色んな肌色をしていて色んな国籍を持っていました。
おかげさまで僕は自己紹介と隠し事がうまくなりました。
僕の乏しいボキャブラリーで彼とは色んなことを話しました。
彼は僕がわかるような英語でなるべく話してくれました。
彼とのルームシェアをして何週間かした日のことです。
その日の夜、彼は誰も連れてきませんでした。
彼と祝杯をあげ、何杯か飲むと彼が言いました。
「ほんまはこうやって男と飲んどるんが一番おもろいんやけどなぁ。」
意外な一言でした。そして自分は性依存症だと告白してきました。
夕方ぐらいになるとどうしようもなく沸き立ってきて誰かに助けを求めるのだと言っていました。
「自分はまさしく悪い大人の手本やでな」と彼は笑ってましたが、その時の目は弱々しく本当の助けは別の方法にあることに気づいてるようでした。
苦しみと快楽の同時進行って結局は苦しみしか残らへんのかなぁ。
そんなことを思いながら、次の日の朝からは大事にドアを閉めるようになりました。
彼とはなぜか連絡先は交換しませんでした。
なので彼の今は全く知りません。
でもなぜかどこかで会いそうな、そんな感じがします。
僕はどんどんと年をとっていく訳で
作るものはどんどんと色褪せる
君がその先大人になっても
悪い大人の手本でいたいんだ
自分も当時のケビンと同じぐらいの年齢になりましたが自分は誰かの手本になれているのでしょうか。
現在、訳ありで人生二度目の教習所に来てて久々のクラッチで頭がいっぱいの僕を誰かが手本にしてくれてたらいいなぁ。
次回は国際結婚から学ぶケッコンについて書きたいと思います。
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