あの人、理解できひんという時点であなたの負けだ。ニューヨーク編③
Fuego / Bomba Estéreo
https://www.youtube.com/watch?v=MZXlgNMDK3E(和訳Ver.あり)
通っていた語学学校では午後から選択クラスがありました。興味があるクラスを一つ選択して英語を学ぶというものです。僕がとっていたのは「Pop Music class」で音楽から英語を学ぶクラスでした。このクラスでの学習方法は今の僕の授業にもすごく影響しています。
このクラスでコロンビア人バンドBomba Estéreoのボーカル、リリアナと出会いました。ちなみにこの歌はサッカーゲームFIFA10のメインソングです。この歌は攻撃的ですが違ったメロディラインのものもあります。
「ラテンミュージックは踊りが基本やさかい」と言う彼女の歌声に合わせて僕は教室でよく踊っていました。
みなさんにとってコロンビアってどんなイメージでしょうか。
ワールドカップでのコロンビア戦、コーヒー…これぐらいで詰まるんじゃないでしょうか。実際に僕もそこまで国の情報は知りません。
しかし僕はコロンビアと聞くとリリアナの他に三人のコロンビア人を思い浮かべます。二人とはニューヨークで、もう一人とはペルーで出会いました。ペルーで出会ったコロンビア人に関してはペルー編で書こうと思います。
少しアメリカでの生活に慣れてきたころ、学校でコロンビア人の男の友達ができました。ヒゲが濃く、体がガッチリとしたコンバットパイロットでした。彼は世界中を戦闘機で飛び回ってるそうで休暇中に短期で語学学校に来たと言ってました。
僕は多少のスペイン語ができたので意気投合し、ある日、台湾人数人とコンバットパイロットとクラブに行くことに。
しかし二件目のクラブの入口で「アジア人は入れへんさかい!」と堂々とした人種差別にあいました。僕は「まだこんなのあるんやなぁ」と笑ってしまいましたが台湾人のまじめな女の子たちは泣き出し、そのまま流れ解散に。
そこでコンバットパイロットが「親戚がこのあたりに住んでるんだ。行くかい?」と誘ってきたので僕だけついていきました。
そこは普通の高層マンションだったのですが深夜だったこともあり、恐怖の館のような不気味な雰囲気でした。
10階ぐらいの部屋に入ると中年のでっぷり太った魔女みたいなおばさんがいて、優しく話しかけてくれました。その間に友人は部屋の奥の方にスッと入っていきました。
魔女は僕がスペイン語が話せることがわかると気に入ってくれたようで飲み物を出してくれたり、マッサージをしてくれたり。
「マッサージチェアーに座って。目を閉じて。はい、リラーックス」
そう言われて数分経つと寝落ちしそうになりました。
しかし寝るわけにはいかぬと目を開け魔女の方を見ると、あら大変。
片手に注射をもってます。
「んノー!!」
僕が叫ぶと「リラーックス。リラーックス。」となだめてきます。
「んノー!!」「リラーックス」「んノー!!」「リラーックス」
問答が何度かリピートされた後、魔女は僕の手をつかみ魔女の胸に押し付けてきました。
魔女の言葉の「リラ」の部分が「セ」に変わった瞬間、ビートルズ顔負けの「ヘールプ!」を叫んでました。
しかしコンバットパイロットは助け船ならぬ助け飛行機を出してくれません。
そこで僕は魔女を思い切り突き放してドアに駆けました。しかしドアの鍵がちゃんと閉まっていて手間取る間に魔女は起き上がってきました。
ようやくドアが開きましたが魔女は追ってきます。エレベーターまでの通路はけっこう距離があります。僕は朝原宣治さんばりに太ももを上げ下げして駆けました。魔女はまだ追ってきます。
「エレベーターさん、エレベーターさん。どうかこの階に止まっててください」
テクマクマヤコンのリズムで願いながらボタンを押すと願い通りドアが開きました。素早くドアの「閉」ボタンを押し間一髪逃げ切ることに成功しました。
魔女は透明のエレベーターのドア越しに僕をずっと睨んでいました。
エレベーターを降りて駅まで走っていきました。僕はそこで気づきました。靴を忘れたことに。
その翌日から学校にコンバットパイロットは来ませんでした。何度メッセージを送っても返ってきませんでした。
学校の先生に聞くと「国に帰る」と言っていたそうです。
きっと今も僕の靴を履いて元気に空を飛び回っていることでしょう。
軽率やったなぁ。
海外で人を信じるって難しいなぁ
日々、人を見る目を鍛えないとなぁ。
眠らぬ街のサブウェイで眠れぬ想いを抱きながら帰りました。
振り返ってみて。
今だったらもう少し別の対応ができたかなぁと思いますが。若かったなぁ。
でもこんな経験をさせてくれたコロンビアは僕が最も行ってみたい国の一つです。
次回は性依存症ニューヨーカーとのルームシェアです。
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