
がんサバイバーになったぼくが、“旅人”に戻るまで【2話】初受診
このnoteは、世界を旅するコアラ顔の著者が、日本への長期帰国中に発覚した“がん”を乗り越えて、また大好きな旅に戻るまでの軌跡を綴る物語です。
1. 病院検索
7月も終わりに近付いた頃、ようやく重い腰をあげ、病院に行くことを決めたぼく。
しかし、怪我や病気で病院にかかったことなんて10数年は無いうえに、約7年ぶりの日本での生活である。
最近の日本の病院事情などまったく知らないぼくは、たまたま別件でやりとりをしていた看護師として働く友人に聞いてみることにした。
彼女によると、まずは検診センターか病院かを受診すること、そしてどうやら今は、基本的にどちらを受診するにしてもジェンダーに配慮しているのが普通らしい。
一応受診前に電話で相談してみたら、とアドバイスをもらったので、まずは以下を基準にしつつ、Google Mapで病院を検索していくことにした。
①あまり規模の大きくないところ
②職場近辺は避ける
③家から電車やバスで乗り換えせず行けるところ
①は、極力ほかの患者さんと顔を合わせずに済むように。
②は、仕事柄、近隣に顔見知りが多いので、鉢合わせたり目撃されることのないように。
③は、もし通院が必要になった場合に通いやすいように。
それらの条件と合わせて、Google Mapのクチコミも参考にしつつ、候補を2つに絞ったぼくは、そのうち評価の良い方へ電話をかけてみることにした。
2. 電話相談
やや緊張しながら番号をタップすると、電話はすぐに繋がった。
気になる症状があって受診を検討していること、自身がトランスジェンダーなので、極力ほかの方に会わずに行ける時間帯があれば教えてほしいことなどを順序立てて聞いてみる。
すると、その小さなクリニックは、乳腺外科のほか甲状腺科も兼ねていて、甲状腺科を受診する男性もよく訪れるのだという。
そのため、待合室で他の方と居合わせたとしてもまったく不自然ではないこと、それでも気になるならば、受付日の一番最後の枠を予約して受診するのがいいと、物腰の柔らかな受付の方が教えてくれた。
乳腺外科のクリニックの待合室には女性ばかりと思い込んでいたぼくにとって、男性も訪れるクリニックもあるのだと知れたことは、受診のハードルをさげてくれる大きな助けになった。
絞り込んだもうひとつの病院のHPをもう一度見てみると、そこには「甲状腺科」の文字はなかったので、ぼくは電話をしたクリニックに行くことに決め、数日後に予約を入れたのだった。
3. いざ受診
8月3日の朝、ぼくはJRで数駅離れたところにあるクリニックへと向かった。
クリニックは、いくつかの医療機関が入った4階建のビルの中にあり、外から見てもどの医療機関を受診するかはわからない作りなのだが、その点もここを選んだ理由のひとつだった。
エレベーターが目的の階に到着し、フロアに降り立つ。
大きく深呼吸をひとつすると、ぼくはクリニックへと足を踏み入れた。
エアコンの効いた待合室には人影はなく、少しホッとしつつ受付を済ませ、置いてある椅子に腰かける。
このクリニックでは、受付時に番号札を渡され、診察室の中以外では名前を呼ばれることもないようだった。
これまで膨大な量の情報収集をしたおかげで、これから行われるであろう検査や、予想しうる結果の数々が次々と頭に浮かび、緊張が高まっていく。
そしてついに、受付を奥へ進んだ先にあるドアから現れた看護師さんから声をかけられ、いくつかある小部屋のひとつに案内された。
4. 問診と検査
小部屋に入るとドクターが待っていて、いくつかの問診があり、続いてマンモグラフィーとエコーの検査をすることになった。
別の小部屋で看護師さんから渡された検査着に着替え、検査技師さんにマンモグラフィーの機械の前へと案内されるぼく。
ここまで来たらもうまな板の上の鯉、心を無にして、されるがまま進むだけだ。
技師さんに、お腹やら脇やら背中やら、絶対に胸ではないようなところからも肉を寄せ集められ、器用に胸を板の間に挟み込まれ潰されていくのだが、これがまぁ痛い!
痛いと噂には聞いていたけど、本当に痛い!!!
「痛いですよねー?でももうちょっと潰していきますねー!」
「は、はい・・・(まだいくんかい・・・)」
違和感のあった右側に比べれば、左側は少しマシだったけど、どっちにしろ痛いものは痛いので、できればもうやりたくないものである。
マンモグラフィーを終えると、次はエコー検査のため、別の小部屋へと案内された。
エコーは痛くないかわりに、場所によってはくすぐったくて、それはそれで耐えるのが大変だった。(ぼくは、マッサージすらくすぐったくて苦手なのである)
なんとかくすぐったさに耐えつつ、モニターに映る画像を見ながらドクターの説明を受ける。
どうやら違和感のあったあたりには、約2センチほどの腫瘤があり、モニターには輪郭のはっきりしない黒い影が映っているのが、ぼくからも見て取れた。
何かあるだろうことはわかっていたので特段驚きはしなかったけれど、改めて画像として体内の状況を目にすると、変な感じがした。
そして、ぼくが目にしたその画像は、これまで情報収集する中で見てきた、いわゆる“悪性腫瘍”と呼ばれるものの特徴を持ったエコー画像にとてもよく似ている気がした。
このとき、ぼくはモニターを見つめながら、考えうる最悪の結果を静かに覚悟したのであった。
【3話】へつづく
おまけ. FTM,FTX等でも行きやすい乳腺外科
もし、乳がんかもしれない?と思ったとしても、受診にいたるまでのハードルが高いのが婦人科系のクリニック。
今回は乳腺外科の場合に限るけれど、実際に病院検索や、受診をしてみてわかったことをまとめておこうと思う。
①乳腺外科だけでなく他科診療もしているところ
②乳腺外科として、独立した建物でないところ
③受付などで、名前を呼ばれる心配のないところ
※ただし、人それぞれ悩むポイントは異なるし、ぼくが行きやすいと感じたところも、別の誰かにとっては行きにくいポイントにもなり得るので、そこはご了承ください
①は、ぼくが行ったところのように甲状腺科も併設していたりすると、男性も受診するので、普段社会的に男性として過ごしていたりする人の場合は行きやすくなるかなと。
②は、(ぼくが気にしすぎなのは承知の上だけれど)クリニックに出入りするところをもし目撃されても、何科に行ったかわからないし、自分が足を運ぶうえでも気持ちの面で少し気が楽になるので。
③は、自認する性別と名前(から予想・判別される性別)が噛み合っていないなどで名前を呼ばれたく無い人向けだけれど、病院に行きたくない理由の一つになるので、その心配のないところを選んでいくのがいいかなと。
今は、個人情報保護の観点から名前を呼ばない運用のクリニックも多いので、GoogleMapやその他のクチコミでの事前チェックがオススメ。
※ぼく自身は、2022年に改名したため、この点は今回は検討材料とせず
参考になる日が来ないといいけど、もしもの時にどこかの誰かの参考になれば幸いです。
このnoteは、ガンと向き合う管理人こあらの軌跡です。
気軽に「読んだよ!」のサイン代わりに「♡」(いいね)を押していただけると嬉しいです。
※noteのアカウントを持っていない方でも「♡」(いいね)は押すことができます。