見出し画像

Data散文

もう何もかも駄目だ、逃げるしかないと思いながらスーツケースに荷物をまとめ、持ち物を整理した。いらない書類にハサミを入れ、3TBのHDDを久しぶりに開きデータを移す。

そこにあったのはわたしの軌跡であって、わたしはいつもものすごいスピードで、逃げてしまう。去ってしまう。置き去りにしてきたたくさんの人たちが、「Film」と書かれたファイルのなかで微笑んでいる。17歳の頃、写真家になりたいと思った時期があった。

誰も彼も、置いていってしまったように思うこともある。誰も彼も、わたしより前を歩いているように思うこともある。彼らの今の名前も、連絡先もなんにも知らない。他人がただ、笑っている。

今いる場所は、そろそろ出なくちゃいけない。
だけど一体、何処へ。

こんなのが一生続く。タバコを巻きながらレコードを聴く。世界一危ないわたしと、世界一危ない家で。

写真に写る彼らはいまも、笑っていれば良いと思う。

わたしは疲れた。早く死にたい。


いいなと思ったら応援しよう!