猫ふつうより愛をこめて
犬派?猫派?と聞かれれば猫派なのだし、猫好きだと思っていた。
しかし、インターネットで保護猫活動や、猫のために環境を万全に整えてお迎えする飼い主さんの漫画を読んで、その素晴らしさに頭が下がると同時に…
猫好きだなんて恐れ多くて名乗れないな、こりゃ猫ふつうだな…と思い、今では猫好き改め「猫ふつう」と自負している。
我が家の猫
うちには現在、3匹の猫がいる。
しぃ:13歳のオス。気に入らないと即猫パンチをするため、息子から恐れられ「しぃさん」と敬称つきで呼ばれている。
カービィ:5歳のメス。大型種並にでかいが心は優しい。カビ山と呼ばれている。
あんこ:3歳のオス。一番体が小さいのに一番態度がでかい。内弁慶。
今はもういないが、うめという心優しきメスの猫もいた。
この猫たち、み〜〜んな保護猫。
しぃさんとの出会い
しぃさんと初めて出会ったのは、大学生のころ。夫(当時は彼)と一緒に夜帰宅していると、突然夫が言う。
猫がいる!!!!!
夫は無類の猫好きだ。でも猫を飼ったことはなかった。だから、突然テレパシーを受信したかのような夫を見て、あぁついに、猫飼いたすぎてイマジナリー猫チャンを…と思った。
ところが、夫に連れられ公園を覗くと、なんとそこにはダンボールに猫ちゃんが。体はきれいだったので、捨てられて時間が経っていないことは明らかだ。
子猫を抱き上げ、すぐに帰宅した。飼う以外の選択肢がなかった。出会ってしまったのだ。
子猫は三頭身しかなかった。大きさからしておよそ生後三週間か。
しぃと名前をつけて、飼うことにした。
光の速度で猫のトイレを用意した。写真にあるような普通のトイレだ。しかし、トイレはできるのに、一人でトイレに入れない。一般的なトイレの入り口が高すぎて、小さい子猫ではトイレに入れなかった!
ごはんも、乳歯が生えていないのでカリカリが食べられず、しばらく哺乳瓶で猫用ミルク→カリカリを粉砕してミルクをかけたもの→カリカリを砕いたもの、とステップを踏まないといけなかった。
しぃさんを獣医に見せたところ、お腹にヘルニアが見つかった。おへそのところの筋肉(?膜?)がふさがらず、腸がそこから飛び出しかけていて、お腹がポコンと膨れているようだった。
これが原因で捨てられたのかもな…と思った。1匹だけ他の猫と違うから、だから捨てたのかな。こんなに元気でかわいい子猫を。悲しかった。
オスだったので、去勢手術とあわせて開腹し、臍ヘルニアを縫ってもらった。幸い、これ以降全く、全く、全く病気もせず…超完全元気な猫として暮らしている。臍の筋肉がなかっただけで、メチャメチャ元気なのである。
うめとの出会い
しばらくして、私と夫は結婚し、小さいアパートでしぃさんと共に暮すことにした。ある日、近所を散歩していた動物病院で、生後八ヶ月の猫の里親募集をしている張り紙を見つけた。それがうめだった。
しぃさんに友達ができるといいなと思って、譲り受けるために連絡をした。生後まもなくから八ヶ月も動物病院で可愛がられてきたうめ。越してきたばかりの私たちは怪しまれた(そりゃそうだ。その動物病院にかかったこともなかったので、病院からすれば身元不明の二人だよね)
結果的に、猫を使った犯罪者ではないという理解を得られて、うめを譲ってもらうことになった。
しぃさんは今まで人間と暮らしたことしかないからか、自分を人間だと思っているようで、突然現れた猫に対して、なんだこいつは!?とメチャメチャ怒っていた。
うめは、突然怒り出す先輩にビビって、ユニットバスのツルツルの壁を垂直に登った。
ちょっとでも近づこうものなら、シャーッ!!!!!!!!と見たこともない形相で怒っていた。こわい
はじめは仲の悪かった二人だが、しぃさんがまぁ…いっか…と諦めたあたりで、写真くらいくっついて寝るようになった。仲はよくないけど、無関心というのが近いかもしれない。
カービィがきた!
しぃとうめと夫婦で暮らしていたが、引っ越して子どもが生まれた。猫のはでなくて、私ども夫婦の息子です。
動物病院の先生を何人も血祭りにあげ、恐ろしすぎて爪を切れないしぃさんが赤ちゃんの息子とどうなるか心配だったものの、赤ちゃんという存在を理解したしぃさんは、全く牙をむかなかった。
息子が転ばず歩けるようになるまで、引っ張られても押されても抱きしめられても、しぃさんは全く抵抗することなく息子を見守った。そのころ巨体に成長したうめは、たびたび息子のクッションにされていたが、彼女もまた健気に耐えた。
そんな息子が幼稚園にあがったころのことだ。登園すると、「息子くんのお母さん!!」と呼び止められた。
「猫がいるんです!!」
幼稚園のとなりの公園に、猫が捨てられていたそうだ。そんなこと、ある!?あった。
幼稚園で飼うわけにもいかず、我が家で保護できないかと頼まれた。徒歩通園しているご家庭のうち、今すぐなんとかなりそうなのは我が家だけのようだった。
了解です!ダンボールください!と、子猫をダンボールにしまった。幼稚園児が大量にまとわりつく。「猫みせてー!!!」「猫ちゃんビックリしちゃうから、ダメなんだよ〜」「猫みせてー!!!」「逃げちゃうからね、ごめんね〜」と、集まった園児で身動きがとれず、頭上に猫ダンボールをかかげて断る私。ダンボールの中で恐怖から鳴く子猫。お母さんが取られてしまった!と泣き出す息子。阿鼻叫喚ってこのことかぁ〜と思った。
帰り道、徒歩通園のママ友に声をかけられた。
ママ友「ぴいこちゃん!何そのダンボール?」
ぴいこ「猫!なんか、幼稚園の隣に子猫いたらしくて」
ママ友「え!?それで預かってきたの!?どうして!?なんで!?」
どうしてって、そりゃ私が聞きたいよ。なんだかよくわかんないけど、預かることになったのさ。
ひとまず日中の家事や用事をすべてキャンセルし、動物病院へ向かった。院長先生は、なんと同じ幼稚園の同級生のパパさんだった。
院長「息子くんと同じ幼稚園ですよ!よろしくお願いします〜。猫ちゃん飼ってたんですね」
ぴいこ「家に二匹いるんですけど、この子は幼稚園隣の公園に?捨てられていた?らしく?さっき預かってきました」
院長「エッ!?!?!?!?」
いやホントにえ?だよね。子猫は診察の結果、ノミもついていないし健康状態もよく、本当にさっき捨てられたばかりのようだった。
子猫は生後1ヶ月くらいか、乳歯が生えていてご飯を食べられるようだった。写真は、うちにきてすぐに猫ベッドを占領した様子。
幼稚園の先生たちは、見つけた責任感からか里親を探して声をかけてくれていた。Y先生のご家庭で引き取ってくれそうだったが、帰宅した息子が子猫にカービィと名付け、「Y先生のおうちに連れて行かないで」と大泣きしたので、うちで飼うことにした。
先住猫たちは子猫に戸惑っていたが、あまりにも人懐っこいカービィに根負けし、たびたび面倒をみてやることになった。
人間はといえば、うめとカービィの柄が似ていたので、あちゃー、とは思っていた。見分けがつかなかったらどうしよう…と思いつつ育て始めることになった(しかしこれは杞憂だった。案の定大きくなったらめちゃめちゃ似てしまい、Google Photoも二匹を間違えて認識するほど似ているのだが、見ればわかるし、見なくても触ったかんじでわかるようになった)
どちらがどちらかわかりますか。左がカービィ、右がうめです。
猫の関係性が変わる
これまでしぃとうめはお互いに無関心だったが、カービィがきたことで3匹となり、関係が複雑になった。突然の侵略者に、しぃとうめは前よりも仲良くなった。
うめは強いしぃさんが怖くておとなしくしていることが多かったが、カービィを積極的に毛づくろいしてあげたりと世話を焼くことが多く、すごく優しい猫になった。
二匹のときと三匹のときで、こんなに変わるのか!
カービィは天真爛漫、自分が世界で一番自由かというように振る舞っていた。あまりに自由すぎてエアコンの上に飛び乗って降りられなくなったり、しぃさんにお前はうるさい!と教育的指導猫パンチをされたりすることもあったが、元気で活発な猫としてすくすく育っていった。
保護活動をしている友人との出会い
その後、幼稚園の委員会活動に参加することになり、そこで出会ったママ友がTちゃんだった。
Tちゃんは前から私のことを知っているようだった。
Tちゃんは猫の保護活動をしていて、家には保護した猫が数匹いる。カービィの里親としても一度声がかかったようで、どうにもならなければ引き取りますと言ってくれていたのだった。
カービィちゃんがぴいこちゃんのおうちで飼われることになってよかったよ、と言ってくれた。
Tちゃんの話によれば、周辺ではタヌキが出没するため、カービィが一日誰にも保護されていなければ、夜には食べられていたかもしれないとのことだった。
タヌキが子猫を食う、というのも衝撃だった。もしかして、カービィより小さかったしぃさんも、あのとき夫が猫だ!!!していなかったら食べられていたのかも…。
Tちゃんの活動は、猫を預かったり、動物病院に猫を連れて行ったりと多岐にわたった。これが全て、Tちゃんが猫を愛する気持ちからの手弁当で、一銭も出ていない行為だというのに驚いた。
大きなスーパーに猫がいたときに、連絡したら捕獲器を持って現れてくれたこともあった。
なんとなしに家族になったしぃさん、うめ、カービィだったが、Tちゃんとの出会いによって、もしかして猫たち・人間にとっても、すごく幸運な出会いだったんじゃないか?と思うようになった。
うめとの別れ
うめは典型的な、「避妊したメスの太り方」をしていると指摘された。心臓に負担がかかっていたのだろう…
ある日突然、心臓発作で亡くなった。
カービィが成猫になっても毎日甲斐甲斐しくなめてあげたり、猫たちを代表して「まだご飯もらってません」と飼い主に言いに行くご飯係をしてくれたり…しぃさんと二匹でいたときは引っ込み思案でしぃさんに遠慮しがちな猫だったのに、三匹になってから優しい面が表に現れて、うめってこんなに優しい猫だったんだ、と感心するほどだった。
うめは、夜中に起きていた私に甘えたあと、急に苦しんですぐに逝った。つらい時間はごく短かったと思う。
葉物野菜が大好きだったうめ。おやつはあまり食べないが、キッチンで小松菜を切っていると必ずねだってきた。ペット葬儀屋さんの提案で、小松菜をもたせて旅立っていった。
引っ越しとうめロス
うめが亡くなってから、我が家は引っ越しをした。カービィはうめがいなくなってしまったことによるストレスで急激に太ってしまった。親のように育ててくれたうめが急にいなくなってしまったことを、理解したのだろうか…。
うめがいなくなってから、しぃさんとカービィ2匹だけになってしまったことで、また猫の関係性は変わった。
うめが担っていたご飯係を、しぃさんが行うようになった。猫が鳴く、というのは人間に話しかけるときだけ、というのはご存知だろうか?外の猫はほとんど鳴かないらしい。敵に見つかると危ないからだ。
これまでしぃさんはほとんど鳴くことがなかったが、うめがいなくなってからというもの、ごはんどきを鳴いて知らせるようになった。うめがいたころはしぃさんにもじゃれていたのに、途端にしぃさんとはよそよそしくなってしまった。
三匹が恋しい
引っ越して家が広くなったし、猫は三匹いたときのほうが猫同士の関係がよかったこともあり、新たに猫を迎え入れることを検討していた。
他の猫たちは全員保護したり譲り受けた猫だったので、新たな猫も保護猫を譲ってもらおうと考えていた。
でも……しぃさん、うめ、カービィは拾ったり、動物病院の張り紙を見たりと、「出会ってしまった」という面が大きかったのに、自分たちから譲ってもらうなんて、それっていいのかな?出会ってないんじゃないかな?という思いが、私達の頭の中によぎっていた。
保護猫団体を見て回る
出会ってないのでは…でも、飼えるなら飼ったほうが、猫のためにも幸せなのではないか…。思考はグルグルとしていたが、とにかく保護猫団体をまわって見てみることにした。
これまで猫は偶然我が家にきたことが多く知らなかったが、保護猫の団体もいろいろな種類があった。家庭に譲ることを前提とした猫カフェ、野良猫を保護している団体などなど。
団体によっても、譲渡先の条件が「一人暮らしはダメ」などのごく厳しいものからゆるいところまで、いろいろだった。
いくつか見て回ったが、ある保護猫団体がぜひ見に来てください!とおっしゃってくれたので、お邪魔することにした。
子猫との出会い
その団体は、長く保護活動をしていて、動物病院とも提携していた。地域猫は手弁当で去勢・避妊をしていたし、地域猫として見守り対象になっていない猫であれば捕獲し、去勢・避妊手術を施して新たな家庭に譲っているとのことだった。
猫は春先に繁殖するとばかり思っていたが、最近はなんとほぼ通年で子猫が発生しているとのこと。栄養や気温も関係しているんだろうか。
その団体でも、何匹も子猫がいる状態で、譲渡先が悪人でなければぜひぜひもらってほしい、というくらい猫余りの状況だったようだ。
そんな中、とりあえず何匹か見てみて、と小部屋に通された中にいたのが、この黒猫だった。
部屋をめちゃめちゃ元気に走り回り、高いところにも登るし、人にも慣れていた。同じ黒猫の兄弟猫も一緒に保護されていたので、猫同士の礼儀(?)も出来ているようだった。
お試しで我が家にきたあと、そのまま我が家で譲り受けることになった。
あんこ
黒い子猫は、息子によりあんこと名付けられた。あんこはオスで、保護団体で早期去勢をしてもらっていた。元保護猫で去勢した証、耳に桜の切れ込みが入っている。
あんこは持ち前のパワフルさ(…もとい…後にわかるが、本当に可愛いがわがまま大爆発な猫だったので…笑、持ち前の図々しさで…)カービィのパーソナルスペースに入り込んだ。
譲り受けた当初、疥癬を患っていたために毎日薬湯に入れられていたあんこだったが、シャンプー後にショボショボになっていた姿を哀れに思ったのか、カービィが毎日舐めて乾かしてあげていた。
うめが亡くなり、うめから注がれた愛情を、あんこに注いであげているようだった。カービィってこんなに優しかったのか…。猫三匹による関係性から、またカービィの新たな一面を知ることができた。
しぃさんもあんこに寛容で、というかもう年のせいなのかもしれないが、あんこの狼藉をすべて許していた。あんこのわがままっぷりはひどく、しぃさんのお尻に噛み付いたりじゃれたり絡まったりしていたが、ずっと耐えていた。
しぃさんが初めて他の猫である、うめと一緒に暮らし始めたときは、シャーシャーと威嚇しまくっていたが、あれから3匹目の猫を受け入れたしぃさんは、もうどんな猫がきてもびくともしなくなっていた。
しぃさん、カービィ、あんこは、今日も仲良し。
これからもずっと大好き
今いる猫もうめも、全部保護した猫だった。
生まれたのが病院なのか軒先なのか、どんな暮らしをしていたのかもわからない。親がどんな猫で、どんな種類だったかもわからない。
でも、かわいい猫であることには変わりない。
猫好きなのか?といわれると、保護活動ができるほどのバイタリティがないし、人間の家族のほうが優先、というのはどうしてもある。だから、猫好きとは名乗れない。
だけど、これから先も、我が家で受け入れられる猫は受け入れていくと思う。
猫ふつうより愛をこめて、これからもずっと大好き。
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