郷愁のしゃこえび
子供の頃の夏のおやつに、シャコエビがありました。茹でたしゃこを笊に盛り上げ、姉と競うようにして食べたものです。食べたら、しっぽを指に挿して遊ぶところも、毎回の定番でした。
東京で、シャコエビが寿司ネタになっているのに驚いたものです。
「え、あなた、いつの間に出世したの。私のおやつだったじゃない。」という感じです。茹でて殻をむき、ツメをつけたシャコエビの寿司は、美味しいけれど、私が食べたいのは、元気に動いているシャコエビ(当時は、生きたものを売っていました)を塩茹でしただけのもの。シャコエビの甘みと茹でた塩の味が、なんとも美味しく10尾くらいペロッと食べてしまいます。剥きながら食べるので、手がかゆくなるので濡れ布巾で手を拭きながら食べるのです。
私は宮城の出身なので、カニも生きて動いているのを買ってきて、おやつに茹でてもらって、食べていました。生きたのを茹でたのは、本当にカニの甘みが美味しくて、塩茹でしただけで美味しいのです。
大人になってから、かに酢の存在を知りました。姉が、「あれは、鮮度のいいカニにはいらないよ。」と言っていますが、私もそう思っています。
生きたシャコエビやカニを買って食べるには、殻の剥き方を知らなくてはなりません。子供は、なんでも自分でやりたがる時期があるから、実家の母は一度教えてくれただけで、後は自分で剥いていたように思います。
関東で暮らすようになって、生きたシャコエビを買う機会もなくなりました。たまに生きたカニを売っていたりしますが、宮城の子供時代と比べて高いので、あまり買っていません。
更に昔、亡くなった大叔母の子供時代は、「貧乏だから米が買えない時があって、えびやカニを食べてたの。」と言うことでした。昔は、沢山採れて、安かったのでしょうね。息子さんに「かあちゃん、それ贅沢っていうんだぞ。」と言われたそうですが。
時々、カニ食べ放題の飲食店や旅館の案内を見つけて、子供を誘うのですが、却下されます。「それ、元を取れるのおかあさんだけだから。私は剥くの下手だから、ろくに食べられないよ。」と、言われて。
私の子供時代のようには、カニを食べさせてあげられなかったから、剥くのが上手くないのかしら。いや、一人っ子だから、私が剥いたのをあげていたから、いけないのかな。