フリーレンの見た世界の美しさ
静かな人間賛歌たるアニメ
葬送のフリーレンが28話で一旦の最終回を迎えた。
流行りのジャンルと穿った目で見た一話目から引き込まれ、アニメ全話見た感想をつらつらと語っていけたらと思う。
友人に始まった数話の時フリーレンをおすすめした際「これは主人公の魔法使いと勇者のラブストーリーでしょ?死者と会える展開は興ざめだ」というニュアンスのこと言われ、それがずっと引っかかっていた。
勿論友人に悪意はないし、世の中に広がる二次創作から見たりあらすじ、キャラクターが好きで物語を見る人にとっては勇者ヒンメルの軌跡を追うフリーレンの恋物語なのだろうなと感じるのかもしれない。
勿論、その節が無いとは言わないし、最後の締めくくりは好きだったんだなで終わるのかもしれない。ただ、それ以上にこのフリーレン世界の人間模様や世界観、フリーレンの心情等過去と現在にもっと焦点を当ててほしいと僕は思っていた。
フリーレンにとっての勇者ヒンメルは魔王を倒したいと夢見ながらどこか諦め、引きこもっていた自分を冒険に連れ出してくれた存在だ。
様々なことに気づかせてくれた人間である勇者ヒンメル。この物語は彼の死をきっかけにフリーレンが思いのほか彼にもらったものが沢山あることに気づき、彼を世界が忘れる前に、彼の思い出をたどることにした話だ。
ヒンメルや勇者一行によって救われた村や人々のささやかな記憶のなかに残る彼と共に、記憶や意志に背中を押され人間は成長していった。
徐々に風化する記録と記憶ではあるものの、彼が成し遂げた偉業とやり続けた善たる行動は子から孫へと引き継がれていき、彼が居なくなった今も語り継がれ、そしてまた憧れに突き動かされ勇者や魔法使いを志すのだ。
そんな彼との思い出と、フリーレンの師匠フランメの記憶。
花畑を出す魔法を一番好きな魔法といい、ヒンメルの幼い記憶にも残る伏線回収になったのはとてもよかった。
全てのことは繋がっていて、一つでも消えていたら今のこの状態はない。だれか一人でも欠けていたら出来なかったこと。
もし今後世界がヒンメルのことを忘れてしまったとしても、彼の行った魔王討伐までの10年とその生涯の旅路から枝分かれした人間は、世界は、こんなにも美しいのだと。この旅を通してフリーレンと一緒に感じたような、そんな話だった。
アニメではまだ死者に会える都市にたどり着くまでは描かれなかったので、今後本当にヒンメルに会えるのか、会った時フリーレンは何を話すのか。
今から楽しみで仕方がない。