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英語100年(第1次世界大戦の遺産ヴェルサイユ条約100年)(2019年2月)

そもそも、欧州においての共通語は言うまでもなくラテン語だ。欧州におけるラテン語の優位の時代は18世紀初頭まで続いた。1714年にスペイン王位継承戦争が終結した際、神聖ローマ帝国とフランスのあいだにラシュタット条約が結ばれる。

本来ならラテン語で記すところを、フランス側がごり押しでフランス語でこれを記させ、以後、フランス語が外交用語としての地位を確立した。その時代は第1次世界大戦まで続き、パリ講和会議などもフランス語が使われた。

ちなみに日露戦争の講和のポーツマス会議でもフランス語が使用され、日露間の実際の停戦協定もフランス語だった。NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』でも、本木雅弘演じる秋山真之がロシア軍艦に乗り込み停戦の話をする際に、フランス語で通訳されているシーンもあった。


しかし、1次大戦で欧州大陸が主戦場となったことでフランスの国力は疲弊し、相対的に本土は無傷だった英米の地位が高まった。当然世界の覇権もアメリカの優位にうつる。パリ講和会議以降、多国間交渉における英語の外交用語の地位が確立し、2次大戦により、圧倒的な優位を不動のものにし、現在に至る。

逆に言えば、英語が国際公用語としての地位を確立してからまだ100年しか経ってないのだ。現に、オリンピックのIOCや、サッカーのFIFA等はフランス語を第一公用としており、英語仏語で解釈が分かれる際の仏語の優位が明文化されている。

これは、100年以上前からの歴史・伝統を引継でいるからで、特にアメリカが圧倒的な干渉の余地のない文化芸術の国際分野では、この傾向が実は欧州にはある。欧州勢の陰湿なこうしたアメリカへの軽蔑を筆者は読み取る。米欧間の言い知れぬ緊張を読み解くカギでもあるように感じる。


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