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国内のガイドラインに絡むCOIがヤバい件について:前編

皆さんこんにちは、にゃんでもにゃ医です😇😇
6月以来久しぶりの投稿です😇
今回はこちらのお題でやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします😇



編集履歴
2024/09/28 初投稿
2024/09/30 「癒着弁当が質の低い医療と関連している⁉️」を追加


経緯

なぜこれを書こうと思ったのか…詳細は忘れてしまいました😇
6月まではコンスタントに毎月noteを書いていたのですが、いいネタも思いつかず、ずっと書けてなかったんですね。あ、前回のnoteをまだ読んでない方はぜひ読んでみてください😇

そんで最近日本のガイドラインの話でTwitterが盛り上がっていたのがきっかけだった気がします😇

米国のガイドラインが信用できるかはとりあえず置いておいて、日本のガイドラインは微妙という認識はワイにもありました😇

イワケン先生の影響が強いですね😇😇
臨床を始めてからは日本のガイドラインも読むようになっていたのですが、やはり海外のガイドラインやUpToDateと乖離している記載も多く、むむむ…となることが多かったんですよね。
日本のガイドラインの質が低いというのはイワケン先生とかワイのお気持ちではなく、データ的にもそうなっていますね、少なくとも2019年までは😇

435621002031https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34217818/

ただ、自分はいままで文献を読むときにCOIはそれほど気にしていなかったんですよね。ところがあまりにもんんん?な推奨を稀によく見かけるので、COIを確認してみるとやっぱりCOIの影響がなかなかありそうだったんですよね😇😇


で、Twitterで皆さんに聞いてみるといろいろありそうだったので調べてみようとなった…んだったと思います😇
ちなみにこの製薬マネーデータベースは氏名を検索するとその先生がどれくらい製薬会社から報酬を受け取っているのかがわかるすばらしいサイトなので、皆さんも使ってみてくださいね😇😇

今回のお題のメインディッシュは国内の各種ガイドラインがCOIの影響をどのように、どれくらい受けているかを明らかにすることですが、このnoteでは前菜として目次にあるような内容をやっていきたいと思いますので、よろしくお願いします😇ちなみに本編でのCOIは基本的に経済的COIのことを指しています😇

後日後編として各種ガイドラインに切り込んで行きますのでお楽しみに😇😇

良い診療ガイドラインとは

いきなり横道にそれますが、良い診療ガイドラインとはどんなものかをまず確認しておきましょう😇😇
結論から言うと、GRADEシステムに則って作成されたガイドラインですね。ワイもよくわかってないのですが、我らが南郷先生のこちらのページに詳しくまとまっています😇

http://spell.umin.jp/EBM_materials_GRADE.html

こちらもわかりやすいです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/cra/32/3/32_177/_pdf/-char/ja

あとはやっぱりMindsですね😇日本のガイドラインを参照するのはもちろん、先ほどのGRADEアプローチやガイドライン作成・評価についても詳しく書かれています。

ガイドラインの評価についてですが、AGREEⅡという評価ツールにそって評価することになっています。上記の日本のガイドラインの質を調べた研究でもこちらのツールが使われています。

ところで、上記のようにちゃんとした手順で作られたガイドラインを診療ガイドラインclinical practice guildelines(CPG)と呼び、ちゃんとしてないものを診療ガイダンスclinical guidanceと呼んで区別しましょう、という話がありますね😇
今回はすべてまとめてガイドラインとしています😇なんなら学会からの(ただの?)提言も取り上げています😇


ガイドラインはCOIの影響を受けるの?

さてさて、そろそろ本題に近づいていきましょう😇
結局ガイドラインの推奨はCOIの影響を受けるの?という話ですよね😇
まずガイドラインとCOIの実態についてですが、ガイドライン作成者の多くはCOIがあるという話がありますね。
こちらはAmerican College of Cardiology/American Heart Association guidelines の17のガイドラインでは56%がCOIがあった、というもの😇似たような報告は多くありますね。

そしてCOIは過少報告されているという話も結構ありますね。
こちらはアメリカ腫瘍学会の診療ガイドライン作成者において、COIはないと報告された著者のうち93%は実はCOIがあった、というもの😇😇これは悪気があったのかなかったのか、どちらにしても問題ですが😇

あとはどれくらいもらっているの⁉️というのも少し気になりますね😇
日本の医学系15学会の理事たちは2016-2020の間に平均して15万ドルの報酬を製薬会社から受け取っていて、プライバシーを理由に学会はCOIについて公表していない、という報告があります😇😇まあ5年で15万ドルは学会の理事にもなると妥当なんでしょうかね😇😇

こちらはガイドラインではなく臨床研究とCOIについてですが、臨床研究において著者のCOIがあるとCOIがない場合と比べてよりCOIのある製薬会社の製品について好意的な結論を出す傾向があるようです😇
さらにはCOIの過少報告も製薬会社に対する好意的な結論と関連があるようです😇

こちらは先ほどの日本のガイドラインの質を評価した研究の二次解析です。COIの過少報告はガイドラインの質と負の相関を認めた…おお、よかった😇
しかし、ガイドラインの推奨における投票権を持つ者で過少報告者が13%を超えるとガイドラインの質の低下と正の相関を認めたと😇いずれも有意差はないですが、興味深いところですね😇

こちらの研究はうつ病の薬物治療のガイドラインにおいて、質の高いガイドラインや推奨と関連する因子を調べたものです。関連を認めたものの一つとしてCOIの適切な処理があげられています。適切な処理とは単にCOIを開示するだけではなく、COIのある者を推奨の投票から外したり、そもそもガイドラインの著者から外したりする対応のことですね😇COIゴリゴリの著者がいると質が下がってしまうんでしょうか😇😇

他にもいろいろあるようですが、とりあえずこの辺で😇
まとめると、ガイドライン作成者と製薬会社のCOIは結構多い、COIの過少報告も結構多い、COI自体やCOIの過少報告はガイドラインの推奨に影響するかもしれない…という感じでしょうか😇😇

国内学会とCOIについてひたすら研究している先生がいた…

上記の論文たちを調べていたら、あることに気がつきました。

Connected Papersを使って論文を調べていたんですが、Murayama先生という方が米国・日本の学会やガイドラインとCOIについて鬼のように論文を書いておられることに気がつきました😇
かなりの数があって全部はまともに読めてないんですが、日本感染症学会のものはちゃんと読んでみました😇

自分は無料で読める環境ではなかったので71ドル払って読みました😇なぜそこまで読みたかったのかというと感染症学会のCOIはスゴイという話を聞いていたからです😇😇

で、読んでみると以下のことが書いてありました。

  • 日本感染症学会(JSID)の2014年から2022年に出された12のガイドラインにおいて、91%の著者に経済的COIがあった

  • 12のうち11のガイドラインでは、過半数の著者が製薬会社から報酬を受け取っていた

  • 2016年から2020年の間で、ひとりの著者あたりの製薬会社から支払われた報酬が一番高かったのはClostridioides difficile感染症ガイドライン(平均174,135USドル)で、続いてMRSA感染症ガイドライン(平均119,954USドル)であった

  • ガイドラインの委員長は平均して一人当たり100,499USドルを受け取っており、非委員長の著者は平均して20,569USドルであった

うーん、この額が高いのか低いのかすら良くわからないですね😇Murayama先生のほかの論文を読み込む元気はなかったので、皆さんは以下の論文でご自身の領域が絡むものはぜひ読んでみてください😇
全部読まれた方はどの学会が一番エゲツナイか教えてください😇😇😇

関節リウマチガイドライン

食道がんガイドライン(コメント)

日本泌尿器学会ガイドライン

糖尿病ガイドライン

日本腎臓病学会ガイドライン

気分障害ガイドライン

アレルギー性鼻炎ガイドライン

日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会

日本皮膚科学会ガイドライン

C型肝炎ガイドライン

日本消化器病学会ガイドライン

日本循環器学会ガイドライン


日本血液内科学会


でも製薬会社の弁当を食べても肩入れなんかしないもん!

またちょっと横道に逸れます😇
関係者じゃないとわかりにくいかと思いますが、日本では(海外でも)製薬会社から薬剤等の説明をしてもらい、その間に製薬会社からもらった弁当を食べる、というイベントがあります😇
このイベントって医師の処方に影響あるんですかね😇😇
その辺に興味があり、以前はこんなnoteを書いたりはしていました😇

https://note.com/nyandemonyai/n/n50e5091f122c

皆さんにも聞いてみました😇


興味深いことに、弁当を食べている医師は影響しないという回答が多いのに対し、弁当を食べない医師は半々の回答ですね😇
これはどのように解釈すべきなのでしょう😇😇😇
解釈は各々に任せます😇
ここで我らがイワケン先生の製薬会社弁当に対するコメントをみておきましょう😇😇

いやはや、手厳しいですね😇

結局のところ、「製薬業界を全否定するのは間違っている」と宣う連中のほとんどは、単に製薬業界からの接待を正当化する方便として、そのようなセリフを使って言い訳しているにすぎません。そうやって、製薬業界が主催する薬の説明会(と称するお弁当配布会)や、新薬発売1周年記念講演(と称するアゴアシつきのパーティー)や、社内勉強会の講師(と称する接待)にのこのこ出かけるエクスキュースにしているのです。

ところが、多くの医者は「自分たちはMRにはだまされない。ちゃんと情報を取捨選択して吟味している」(だから、MRから接待されたっていいんだ)と言います。「自分たちはダマされない」と固く信じこんでいる人物は、詐欺師にとってもっともたやすく騙すことができるカモだというのに。騙すのが難しいのは「おれは騙されているんじゃないか」と常にビクビク怯えているような人物なのですから。
 「自分はカモにされているんじゃないか」とビクビクするような人物が、そもそも賭場で丁半張るようなリスクを冒すでしょうか。ありえません。君子危うきに近寄らず。そういう人物はだから、MRの巧みな新薬説明会や、新薬発売記念パーティーや、講演会、ランチョンセミナーの類には近寄らないのです。「自分が騙されていない」と確信している人物だけが、諸肌脱ぎにギャンブルに走るのです。

こちらもイワケン先生ですが、いやはや、なんというか、手心というか😇😇
まあでもTwitterを眺めていると、強制的に参加したくもない薬剤説明会に参加させられるので、弁当ぐらい食わせてくれという意見もあり、なるほどなと思いました😇😇
上述のように、ワイは昔イワケン先生に陶酔していたので、上の教えを忠実に守っています😇
というか、まともな総合診療科は薬剤説明会を開催しないし、まともな総合診療医は弁当を食べません😇
薬剤説明会を開催している総合診療科は多くの場合アレです、特異度はまあまあ高いです😇😇皆さんの病院の総合診療科はどんな感じでしょう😇
これは総合診療とか家庭医療界隈に限った話であって、他の診療科のことはわかりません、念の為😇😇
総合診療界隈と製薬会社の関係はJPCAの影響も大きいですかね😇製薬会社を完全に排除している学会は他にはないでしょう😇😇あったら教えてください😇

関係ない話ですが、以前はイワケン先生からたまに引用されたりリプが来たりしていたんですが、最近全くなくなってしまって悲しいです😇
ミュートされていなければいいのですが😇😇😇

話を戻しますが、弁当と医師の処方の関連を示す研究はチラホラあるようです😇観察研究のシステマティックレビューではありますが、食事等の企業からのpaymentsは処方と関連していることが示唆されています😇

上記のシステマティックにも含まれているこちらの研究も興味深いです😇薬説で飯を食う医師は同種薬の中で宣伝された薬剤を処方することが有意に多くなると😇
よりリッチな飯だと宣伝された薬剤の処方がより多くなったと😇😇😇
やっぱり癒着弁当は大事ですね😇😇

さきほどのMurayama先生の論文ですが、製薬会社からの食事提供等が抗がん剤処方増加と関連していたという話もあるようです😇

癒着弁当が質の低い医療と関連している⁉️

フォロワーの方から興味深い論文を教えていただきましたので紹介します😇

こちらはアメリカのコホート研究で、腫瘍内科医への製薬会社からの食事や謝金等のpaymentsと、推奨されない、もしくは低価値の処方との関連を調べたものです😇
ここで取り上げられたのは去勢感受性前立腺がんに対して推奨されていないデノスマブ、低リスク化学療法における好中球減少症予防に対して推奨されていないG-CSF製剤、そして乳がんや肺がんにおけるパクリタキセルとの比較で、優位性がないにもかかわらず使用されている薬剤であるナブパクリタキセルです😇
製薬会社からpaymentsを受け取った医師は受け取ってない医師と比べてそれらの薬剤の処方が多い傾向がありました😇😇

もう一つはこちらです😇

こちらもアメリカの研究で、ガイドラインで勧められていない関節へのヒアルロン酸注射と製薬会社からのpaymentsの関係を調べたものです。
やはりpaymentsを受け取りはヒアルロン酸注射と関連が見られました😇
興味深いことに、支払額が多くなるとよりヒアルロン酸注射を行う可能性が高くなるという結果でした😇😇
著者たちは製薬会社からのpaymentsはlow-valueケアのリスクファクターなのではないかと考察しています😇😇

いやーどうなんですかね😇調整できてない交絡因子もあるかもしれませんし😇😇
しかし用量依存性があるかもしれないとなると、もしかしたらもしかするのかもしれませんね😇😇
こういう話もありますし、微妙な?薬剤を売り込みたかったらやはり弁当はより豪華にしたほうがいいんでしょうね😇😇
あれ、金額とかに制限があるんでしたっけ、しりませんけど😇😇

後編は各ガイドラインに切り込んでいきます!

いかがでしたでしょうか😇前編はこれにて終了です😇
Twitterにてご感想、ご批判等どしどしお寄せください😇
そして後編では実際にピックアップしたガイドラインについて切り込んでいきます😇そのラインナップを置いておきますね😇

  • 市中肺炎診療ガイドライン2024(日本呼吸器学会)

  • 急性・慢性心不全診療ガイドライン2017年改訂版 (日本循環器学会 / 日本心不全学会

  • 2型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム第2版 (日本糖尿病学会)

  • DIC診療ガイドライン2024(日本血栓止血学会)

  • ゾフルーザの使用についての新たな提言(日本感染症学会)

どうでしょう、皆さんが気になっていたものはありましたでしょうか😇
選考基準としては基本的に自分が読んでこの推奨はどうなんだろう…と思っていたものをピックアップしています😇そして次のステップとしてCOIを確認してみる、という流れになっています😇
市中肺炎ガイドラインは読んだことがなかったんですが、ある薬剤のCOIがヤバいというご意見を複数いただいたので読んでみました😇
読んでみると実際ヤバくてですね、⁉️⁉️な薬剤を激推ししており、(一部の)著者たちはその製薬会社からまあまあな額を受け取ってますし、そしてその薬剤の第3相臨床試験の著者とガイドラインの著者が結構被っているという…😇😇
といった話を後編でしていきたいと思います😇お楽しみに😇😇


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