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だし巻き卵はお弁当界のアイドルだ

「甘いのと塩っぱいのどっちがすき?」

だし巻き卵を食べる時、必ずと言っていいほど聞き、聞かれる項目。

ちいさい頃からだし巻き卵が大好きだったからこの質問には即答していた。

「絶対甘いの!」

お弁当に入ってる甘いだし巻き卵はすごくすごく大好きで愛しい存在で、最後に食べるのだと堅く決めていた。
ショートケーキの苺みたいなポジション。お弁当界のアイドル、しかも不動のセンター。総選挙1位。

大人になってから、こんなにもだし巻き卵がすきなのだと自覚した。思い返すと、あぁこの頃には確実にすきだったなと納得するのだけど、お弁当に入っていなくてもすきだったことにすこし驚いた。

できたてのふわっとした状態もすきだし、冷めて甘さが引き立った状態も美味しい。
お醤油をちょろっと垂らして大根おろしと一緒に食べるのも、甘塩っぱくさっぱりと気分が変わってこれまた美味しい。

お店のメニューでだし巻き卵があると絶対に頼んでしまう。メニューの中からいち早く発見する能力をたぶん持っている。
大体のお店がメニューを見ただけでは、甘いのか塩っぱいのかわからない。テーブルに届くまでとてもドキドキする。内心はすきな人の到着を待っている時くらいドキドキしてる。

テーブルにだし巻き卵がやってきた瞬間はまだそれが甘いのかどうかわからない。とても美しい、もはや神々しい黄金色の巻物がどんと卓上に乗る。食べることは置いておいて、じっくりまじまじと鑑賞していたくなる。

ずっと鑑賞していては冷めていく一方でだし巻き卵にも失礼なので箸を取る。
ふわりとしただし巻き卵は箸で持ち上げると、だらんとすこしうなだれる。
これがキーホルダーになったら確実に買っている。推しのキーホルダーだ。もちろんカバンにつける。

いよいよ運命の瞬間。

甘い。

甘いよ…!!!!

ふんわりしてお出汁の香りもしつつ、適度な甘さ。
何度食べても運命の出会いを果たしたかのように感動し悶える。

1人で一本くらい余裕で食べられるけれど、それはグッと堪えてみんなにもこの幸せをシェアする。もしかしたらちょっと名残惜しいような寂しい顔をしながらお皿を渡しているかもしれない。本当は全部食べたいんだもの。

だし巻き卵は正義。ずっとそばにいてくれる味方。一生添い遂げていきたいと思う。大好きです。

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西村隆ノ介
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