紀行文〜ゆふいんの森号にのったこと~

7月29日。
6歳の息子が「自由研究に列車のことを調べたい」というので、思い立って出かけることにした。

「何に乗りたいのか」ときくと、「ゆふいんの森号」という、ちょっと高級な列車の名を挙げたので、内心、金銭面で面倒さを感じたが、件の列車は中にビュッフェを持ち、由布院産の地ビールが飲めるというので、普段は重い腰を少しだけ軽くしながら出かけることにした。

ゆふいんの森号。
博多~由布院~大分~別府間を1日に3便ほど走る、JR九州一押しのD&S列車の先駆けとなった高級観光列車だ。(D&S=デザイン&ストーリー)有名なのは「ななつ星」「或る列車」、最近は「かんぱち・いちろく」というD&S列車もある。詳細はぜひググってほしい。

博多でラーメンが食べたかったので、わざわざ由布院まで別便で出かけ、由布院から博多へ。博多から特急で自宅に帰るプランをたてた。朝から飲める。電車だから。


朝10時。普通列車にのって由布院へ向かう。
夏休みとはいえ、各駅停車のディーゼル車は乗客も比較的少なく、4人掛けのシートを息子と二人で座ってもまだ座席には余裕がある。

ガタン、ゴトンと列車は動き出す。
はじめ、市街地を通っていて灰色が多かった車窓は、次第に緑色へと変わっていく。水田が多く、緑色の稲穂が風に揺れている。
川も市街地の整備された姿から、石や岩がごろごろとした上流の姿に変わっている。水の流れはおだやかで、夏の太陽を反射してきらきら輝いていた。

息子は窓の外を見て、何かを考えているようにも見えるし、ぼうっと意識を飛ばしているだけのようにも見える。話しかけると返事はするが、必要なこと以外はしゃべらない。楽しんでいるのだろうか。あとで聞くと、楽しかったと言っていたので、黙っている間にもいろんなことを考えていたのかもしれない。

無人駅をいくつも通り過ぎ、ようやく由布院駅にたどり着いた。
由布院は観光客にあふれかえっており、駅は立ち止まる余裕もないほど混みあっている。

普通列車を降り、違うホームに止まっているゆふいんの森号に乗車するために陸橋を渡って線路を横切る。途中で雄大な由布岳が目に入り、思わず心が躍る。息子に「ほら、大きな山があるよ。由布岳だよ」と声をかけるが、陸橋は壁に囲まれており、由布岳が望める天窓は息子にとっては高い位置にあり、息子の視界には山は入らなかったようだ。何のための天窓だ。万人に見えるようにしてもらいたいものだ。

陸橋を降り、ゆふいんの森号が止まっているホームに降り立つと、乗車待ちの乗客でホームは満員。中国や韓国の言葉が多く聞こえる。日本人のほうが少ないのではないのかと思ってしまう。見た目はほとんどかわらないので、実際の人数比はよくわからないが、日本語より外国語のほうをよく聞いた気がする。

ゆふいんの森号は、ギリギリにしか開かない。中の掃除やもてなすための準備をしているのだろうが、ホームが非常に暑いので、本当に早く中に入れてほしかった。普通列車は出発の30分前には中に入れて、冷房で涼むことができたからだ。これはいろんな規則やら都合があるのだろうからやむを得ない。

ゆふいんの森号に乗りこめたのは、出発の5分前だった。
この人数が果たして5分で乗れるのか。出発は時間通りにいくのか。いろんなことを考えていたが、杞憂だった。乗客はスムーズに乗り込み、まったく予定していた時間通りに由布院を出発した。

~つづく~

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