カズオの運行日報 第3話〜第4話「恐怖の深夜便」前編・中編の解説
2t車でする仕事…小さい車でする仕事は、第2話での日用品配達もそうですがいわゆる「バラマキ」が多いです。
件数が多く細かい配達ですね。
引っ越し、建築等で荷物は多いし場所も1箇所…だけど狭いから大きな車が入れない!なんて場合には2tで何往復もしたり何台も使ったりしますが…。
「定期」といって決まった荷主さんの仕事を毎日継続する場合は第2話のような「貸切」でその日に注文が入ったお客さんに届ける、あるいは第3話のような毎日概ね同じ届け先の「ルート配送」が多いと思います。
店舗のセキュリティについて
実は「カズオの運行日報」第3話〜第4話に描かれている状況っていうのはかなり昔の話です。
焦げ猫がそれをやっていた当時の経験から描いており…20年近く前ですので、「現代なら動画でマニュアルを…?」というご意見も頂いたのですが、バックヤードや厨房、ましてやセキュリティは言うまでもなく撮影禁止なのは今も変わってないと思うんですよね…。
まぁ当時はガラケーでカメラ性能が悪く、暗いところで映らない、画素が粗いなど使い物にならなかったのもありますが。
荷主の現場や商品が映り込んだ画像をSNSに上げるなっていうのも常識化してきましたし、セキュリティの解除手順等それだけ観てもドロボーに直結しないにしろ、万が一流出したら当然仕事切られますね。
だから今でも作中のようなアナログな引き継ぎ教育だと思います。
ドライバーの顔写真や指紋を登録してそれで認証…とかって今はあるのでしょうか???
なので、「深夜置き配の店配の仕事を引き継ぐにあたって今は動画・画像マニュアルや生体認証を使っている」という現場の方、おられましたらコメントください。
飲食店向けルート配送の実際
焦げ猫は居酒屋さんやお蕎麦屋さんのほか、全国チェーン展開のファーストフード店向け配達も幾つかやりましたが、お店によって納品形態や時間指定が違い、セキュリティのほかにそれを覚えるのも大変でした。
日用品と違い、基本は営業時間外の納品。
流れとしては、閉まるのが早いダイニングバー等の閉店後の置き配を最初に回り、朝まで営業している居酒屋さんはそのあと。
それと前後して朝早く開店準備してお店の人立ち合いで荷物が合ってるか1点1点確認(検品)するお蕎麦屋さんなどが時間指定があって。
さらに第4話までではまだ描いてませんが、「鍵を預けるのはイヤ」というお店がありまして、最初に出勤してくる人が店の鍵を開ける昼過ぎまで納品を待たされる…というコースもありました。
それさえ無ければ自分が段取りよく終わらせられればそのぶん早く帰れたんですけどね…。
(実はその店ひと騒動あったんですよ。そのお話もいずれ本編で描こうと思います)
いずれにしろ営業中に納品することは少なく、焦げ猫の経験内では某ファーストフード店など24時間営業がウリのチェーンだけで、それもやはりお店にお客さんが少ない夜中の時間帯メインでしたね。
基本、人がいないときに置き配ですから、わからないとき「人に聞けない」んです。
それでも、店によって品物の種類ごとに置き場所が違い、それを間違えるとどうなるかというと、お店の人から「アレが届いてない」と元請を通して連絡がきます。
ドライバーは「どこそこに置きましたよ」と、そういうやり取りが伝言ゲームみたいにお客さんー元請ー一次請けー二次請けー実運送との間で続き、結局「いつもの場所に置いてくれなきゃ困るよ」ってなるんですね。
「七たび探してから人を疑え」ということわざがありますが、諸事情で多少置き場所が変わっても、お客さんにそれは言いたいとこだなと自分以外のドライバーのミスも含め何度思ったかしれません(笑)。
ちゃんと届けたつもりでもクレームの対象になっちゃうんです。
それと万が一本当にドロボーに入られてレジのお金を持っていかれたなど、真っ先に疑われます。
実際、知ってる会社でドロボーした人の話も聞いたことがありますし、納品に行ったドライバーから「店の様子がおかしい、鍵が開いてた。いつもレジも閉まっているのに開けて荒らされた形跡がある。疑われちゃたまらん」と夜中に連絡があったこともあります。
小さいお店には防犯カメラなんか普及してなかった時代です。
カラ回収に関しては、他の業者からも取り寄せているお店でも「自分が昨日持って行った容器を持って帰ればいい」ので割とすぐ覚えますが…。
このように大変な深夜からのルート配送ですが…、
いちばんいいところは、覚えてしまいさえすれば毎日ルーティンですので「新しいことをするのが苦手」な人ほど逆に向いているとも言えるのです。
運送会社のお給料の決め手としては大きい車ほど高い…という原則はありますが、こういった手間のかかる小さい車の仕事もそれなりに手当をつけて然るべきじゃないかなぁと個人的には思います。
あと作中にあったようにお店の善し悪しがわかるのは本当です。
自分が運んできたもの、他の業者さんが運んできたものがこういうものだから推して知るべし…ていうのもありますが、厨房の衛生面、整理整頓されてるかでいい環境で作られ安心して食べられるものを出す店かどうかわかっちゃいます(笑)。
社長のセリフ
第3話冒頭で、煮え切らない槍杉さんに社長がキレるシーンがありましたが、そのあと社長室に戻りながら言ったセリフ…、
「信用して任せなかったら いつまでたってもスキルが身につかないだろうが」
「信じて委ねるもまた上の仕事なんだ」
…コレ、経営者・管理職としては大事なことだと思います。
実はこの言葉誰だったか忘れましたが誰かの受け売り(テレビ等ではなく直接聞いた)です。
それを聞いたときにハゲしく共感して、「なるほど、自分も経営者・管理者だったらこうあるべきだな」と思ったので印象に残っているんです。
槍杉さんはまだその覚悟がないようですが、上に立って下の人を信じて任せるということは、人がやらかしたことのケツ拭くつもりでいないとダメなんですよね。
社長にしろ管理職にしろ、ただ偉そうに人を使ってるんじゃなく、こういう覚悟で従業員にいろいろ任せることができないと上に立つ器じゃないって評価になっちゃうんです。
凡人には難しいことですけどね…。
ドライバーあがりで仕事に超キビシイ社長さんの下で働いたことも何度かありますが、ドライバー目線なのはいいんだけど「お前に任せちゃおれん、俺が走る」ってなっちゃう人もいて…逆に甘やかしてることになるし、その社長さんの求めるレベルの仕事をしようとしたら誰もが「僕にはできません」ってなっちゃうんですよね…。
そういう人は経営者肌ではなく職人肌なんです。
また、同じ業務をこなすのに上の人が、どうでもいい(?)ところまで自分のやり方に染めようとして違うことをやると怒り、お前は使えん…というのでは新人のモチベが上がりません。
とくに運送業は荷締めや積み方を自分なりにいいと思っている方法でやってる人が多く、安全に無事届けられれば結果オーライなんですが「押し付ける」タイプの人も多いので、複数の人から教わると混乱する…なんてこともあります。
ポイントはしっかり教えて、細かいところは目を瞑って本人のやり方に任せるとか、そういうのも本当の「胆力」だと思うんですよね。
ちなみに焦げ猫は人に仕事を教える時、絶対守るポイント以外は「わたしは、こういう理由で、こうしてるよ」と、やんわりです(笑)。
未経験者は今がチャンス
未経験者が仕事させてもらえなかったら、未経験者は永遠に未経験者です。
焦げ猫が業界に入った当時は、やはり事故を怖れたり教育期間に人件費を回せなかったりで未経験者を雇わない会社が多く、就職に苦労しました。
折しも規制緩和で運送会社が乱立し、運賃の価格崩壊とサービス付帯作業が蔓延し始め、しかもバブルは崩壊。
コンプライアンス?なにそれおいしーの?…っていう時代でした。
ですので、未経験者でもいいから入ってくれっていう会社は労働時間面でも給与面でも超ブラックで人の出入りが激しい会社しかなかったんです。
長距離のフリーチャーターを初めてやったとき、寝台に2人寝られないからと1日で手放しされたこともあります。
フォークリフトやハンドリフトの使い方もわからず、他社のドライバーの見よう見まねでした。
時は流れ…
「いつも募集している」「未経験OK」はヤバい会社だ…という常識は必ずしも当てはまらなくなりました。
現在では優良企業含めたほぼ全ての運送会社・物流業で人手不足です。
今はコンプライアンスも守ったうえで未経験者を採用し、ちゃんと教育する会社も増えてきました。
トライアル雇用をやってる会社もあります。
逆に昔ながらに「寝ないで走るから金クレ」とか「トラックは自分専用に電装品や内装、飾りをつけたい」という人は楽しく働きにくくなったかもしれませんが、未経験の人は業界に入るなら今がチャンスかもしれません。
ただ、まだまだブラックな会社もありますので…きちんと教育してくれて、きちんと対価をくれる会社を選んでください。
さて、このあと年末年始特別編をアップします。
仕事の話ではないので、話数が続きになっておりません。
深夜便のお話の続き(「恐怖の深夜便 後編」)が、第5話になります。
来年からも「カズオの運行日報」をどうぞよろしく!(^^)
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