視覚障害者体験をしてみよう
会社の「全員活躍しよう」みたいなイベントで、視覚障害者の体験をする事になった
らしい。そこで社内の視覚障害者から話を聞かせてほしいと打診された。
私はどういったコンセプトで何をやるかもよくわからなかったけれど、あまり的外れ
な事を言っても仕方ないのであらかじめ視覚障害者の施設に勤めている友達にいろい
ろ聞いてみた。
かくいう私も昔はよく小学校などで見えない人の日常について失敗談を交えて子供た
ちに話したりしていた。その時一緒によくやっていたのがアイマスク体験。
1人がアイマスクをしてもう1人が手引きの人として子供たちが二人一組になり校舎内
を歩き見えない体験をする。
皆遊び感覚だったけれど、後で感想を聞くとほとんどの子が異口同音に怖かったと言
っていた。
そりゃそうだろう。ほとんど見えない私でさえ全く見えない状態で歩けと言われたら
無理。
それ以前に盲人役も手引き役も訓練しているわけではないから先生が監視していると
はいえ階段などは危険だ。
このアイマスク体験、本当に有益なのだろうかと常々思っていたけれど、前述の友人
曰く、もう全国的にやらない方向になっているそうだ。
怖いとかかわいそうだとかこんなになりたくないとかそういったネガティブな印象だ
けを植えつけても仕方ないという事らしい。私も同感だ。
現在失明原因の1位は緑内障。どうやら糖尿病を抜いたらしい。眼圧が高くならない
タイプの緑内障もあるそうで、気づいたら片目は見えなくなっていたなんていう人も
いるとか。ACのコマーシャルでもバカボンのパパが眼科検診を勧めていたけれど、緑
内障は100人に何人かは発症しているらしく明日は我が身。視覚障害はもう他人事で
はない。
そんな背景もあり、視覚障害体験、今はもっと建設的になっているらしく、弱視や視
野狭窄を体験できるメガネなんかもあるらしい。
確かに大抵の人はいきなり全盲になるわけではない。弱視というプロセスを経てどん
どん病気が進行していく。実際全盲より弱視の割合の方が圧倒的に多いのが現実だ。
そして全く見えないということを体験するのでも座った状態で音がどちらから聞こえ
てくるかを聞いてもらって、見えない人がどれだけ音を頼りにしているかを感じても
らう。
見えなくなると代替機能で聴力が高くなるわけではなく、耳に集中しているから耳で
の情報に敏感になるだけなのだ。
同じようなコンセプトで高齢者を体験できるキットもある。
私も以前高齢者の聞こえ方体験をした。病院で呼ばれても加藤さんなのか佐藤さんな
のか阿藤さんなのか全然わからなかった。
そしていよいよ会社でインタビューが行われた。
何をやるのか聞いてみたら、さすがのリサーチ力、弱視体験をしてもらうためのメガ
ネを購入したとの事。
私が聞かれたのは、日常的にどんな事が1番大変か、どんなときにどんな助けが必要
かという事だった。
私は移動と文字処理が一番大変という話をした。
お願いしたい事としては以下のような話をした。
視覚障害者が道で迷っていそうだったらまず声をかけてほしい。誘導は肘か肩に捕ま
らせてもらえるとありがたい。
いきなり触られたら危険と思って振り払われたりする可能性もあるので緊急時以外は
とにかくまず声をかけてほしい。
白い杖は目の代わりなので掴まれてしまうと普通の人が目を塞がれてしまう状態にな
ってしまうのでやめていただきたい。
そしていつも1番強く訴えているのは、障害が重ければ重いほど個人の能力差が大き
いこと。一概に見えないといってもいろいろな人がいて、全盲でも杖をうまく使って
階段をすたすた上り下りする人がいれば弱視でも手すりにつかまってやっと階段を下
りている人もいる。
コロナ禍の頃から声をかけてくれる人が格段に増えた。乗り換えに迷ってウロウロし
ていても必ず誰かが声をかけてくれるし、電車の席も譲ってくれる人が多くなった。
外国の人にも何度も親切にしてもらったことがある。
パラリンピックなど障害者がメディアに露出することが増えたからその影響なのだろ
うか。
会社のイベントはどうなったかわからないけれど、きっとうまくいったに違いない。
企業がこのような取り組みをしてくれるようになってくれたのは本当にありがたい。
ここからより多くの障害者が社会参加できる環境ができていってくれれば嬉しい限り
だ。
そしてこれを機会に道で迷っている視覚障害者を見かけたらぜひ勇気を出して声をか
けてほしい。
中には失礼な人もいるけれど、それはごく一部。一般人の中にも失礼な人がいるよう
に障害者の中にも変な人はいる。
もし声をかけて変な人に当たってしまってもめげずにまた声をかけてほしい。ほとん
どの人はあなたの親切に心から感謝しています。