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30歳まで童貞だと膝枕をもらえるらしい

膝枕リレー3周年おめでとうございます。
大学生なら1年だった人が4年生になっていると思うと時の流れを感じます。

そして今井先生はじめ素敵なご縁をくださった膝マクラーの皆さまに海よりも深く感
謝です!!

今年もアニバーさるべく密かにどうでもいい外電を書いてみました。
完全BLなので生暖かくスルーしてくださいませ。
しかも以前書いた拙作の裏版で、オリキャラ久山の話です。

お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら膝枕が来た件について|か
わい いねこ #note
https://note.com/nyaf/n/nfdfffd7922e1


ノアさん亡き後「うすい膝」継承猫として薄く地味に関わらせてもらえればと思って
おりますので今後ともどうかよろしくお願いいたします。



こちらは2021年5月31日からClubhouseで朗読リレー(#膝枕リレー)が続いている短
編小説「膝枕」(通称「正調膝枕」)の派生作品となっております。

二次創作noteまとめは短編小説「膝枕」と派生作品を、朗読リレーの経緯、膝番号、
Hizapedia(膝語辞典)などの舞台裏noteまとめは「膝枕リレー」楽屋をどうぞ。

短編小説「膝枕」と派生作品|脚本家・今井雅子(clubhouse朗読 #膝枕リレー )|n
ote
5月31日からClubhouseで朗読リレー(#膝枕リレー)が続いている短編小説「膝枕」
の正調、アレンジ、外伝まとめ。
note.com


30歳まで童貞だと膝枕をもらえるらしい


休日の朝。休みだというのに朝早くから起きだした久山は勝負服でベッドの上に正座
していた。そう、今日は彼の記念すべき30歳の誕生日。

午前8時過ぎ、心待ちにしていたインターホンの音が鳴った。

ドアを開けると、宅配便の配達員がダンボール箱を抱えて立っていた。オーブンレン
ジでも入っていそうな大きさだが、受け取りのサインを求められた伝票には「枕」と
書かれていた。

「枕」

久山の声が喜びに打ち震えた。

「受け取ってもらって、いいっすか?」

配達員に急かされ、彼は「取扱注意」のラベルが貼られた箱を両腕で受け止めると、
お姫様だっこの格好で室内へ運び込んだ。

はやる気持ちを抑え、爪でガムテープをはがす。カッターで傷をつけるようなことが
あってはいけない。箱を開けると、男の腰から下が正座の姿勢で納められていた。届
いたのは「膝枕」だった。緩めのハーフパンツから膝頭が二つ顔を出している。

「先輩、やっと俺のところに来てくれたんですね。」
久山が声をかけると、膝枕は正座した両足を微妙に内側に向け、恥じらった。見た目
も手ざわりも生身の膝そっくりに作られている。さらに、感情表現もできるようプロ
グラムを組み込まれている。だが、膝枕以外の機能は搭載していない。膝を貸すこと
に徹している。


久山は長身でイケメン。誰にでも親切で気が利く上に仕事もできる。
学生の頃から多くの女性に告白され、ちょっと付き合ったりもしてきたが全くときめ
くという事がなかった。

皆大して話したこともないのになぜ俺と付き合いたいと思うのだろう。久山は不思議
でならなかった。だから自然相手にも愛着がわかない。


そして入社して間もなく、秘書課のヒサコに告白された。

ヒサコは同期の中でもひときわ目立つ美女。久山は何となく押し負けて付き合ってい
るのかどうかもわからない状態になった。

そして数日後、会社の中では自分とヒサコは付き合っているという事になっていた。
「いやー、若者はお盛んでいいね。」
「入社早々美男美女のカップル誕生だね」
中堅社員のおじさんたちがはやし立てる

「いやいや、一回お茶しただけだけど!」
言い返したくとも誰も聞いちゃいない。

どうやらヒサコがあることないこと言いふらしていたようだ。


久山はある結論に達した。ヒサコもその他自分に告白してきた女性たちは自分の事が
好きなわけではなく、連れて歩くためのアクセサリーかなんかだと思っているのだ。


そこから久山の本格的な女性不振が始まった。
そして現在29歳、未だ彼は童貞を卒業できずにいた。

とは言えそんなもやもやはおくびにも出さず、久山はハイスペック超人として日々業
務を粛々とこなしていた。


そしてその業績が認められ、ある日大きなプロジェクトのメンバーに選ばれた。チー
ムリーダーは40前のあまりパっとしない先輩。今回異例の抜擢だったらしい。


彼は地方のお坊ちゃんらしいが結婚もせず東京でだらだらとサラリーマンをしている
。間違ってもフレンドリーというタイプではなく、特に久山は何となく避けられてい
る感じがしていた。
「俺、何か嫌われるような事したかな。」

自分では失礼な態度を取った覚えはない。しかし久山は知っていた。同性の中には勝
手に自分をねたみ、敵視するものがいるという事を。
だから久山はなるべく男女隔てなくフレンドリーに接してきたのだ。


そんな完璧超人久山でもだんだん人間不信というストレスがたまっていき、ある日大
失敗をやらかした。プロジェクトに必要なデータを飛ばしてしまったのである。
焦りまくった。でももう遅かりし由良助(ゆらのすけ)、覆水盆に返らず!

恐る恐る事情をチームリーダーに話した。すると彼は特に怒りもせず淡々と言った。
「お前らしくないな。ま、弘法も筆の誤りってのもあるからな。今日は俺も付き合う
から残業だ」


普段から嫌われていると思っていた先輩に何を言われるか内心びくびくだったが、彼
はその日終電ギリギリまで残業に付き合ってくれた。

「もっと怒られるかと思っていました。」
久山がそう言うと
「お前いつも一生懸命やっているからな。そういうやつに限ってたまにでかいポカや
らかすんだよなー。」
先輩が半笑いで答えた。

いつもできて当たり前みたいに言われてきた。でも先輩は自分の努力を見ていてくれ
たのである。
嫌われていたと思っていたのは自分の被害妄想だったのか?あの愛想の悪さはただの
「ツン」だったのか?!


それ以降久山は先輩から目が離せなくなった。

地方のお坊ちゃんとの事だったが切るものなどには構わない。不潔感はないけれど、
微妙にネクタイが曲がっていたりする。いつもけだるそうにしている割に仕事はそつ
なくこなしている。


その日もいつものようにこそこそ先輩ウォッチングをしていた時、先輩のパソコン画
面に妙な画像を見つけた。

何かの通販サイトのようだが人間の腰から下が並んでいた。まさかあの先輩が仕事中
にアダルトサイト?!と思ったが、そこには「膝枕」と書かれていた。

「幅広いニーズに対応できるよう、商品ラインナップは豊富に取り揃えています。体
脂肪40%、やみつきの沈み込みを約束する「ぽっちゃり膝枕」。母に耳かきされた遠
い日の思い出が蘇る「おふくろさん膝枕」。「小枝のような、か弱い脚で懸命にあな
たを支えます」がうたい文句の「守ってあげたい膝枕」。頬を撫でるワイルドなすね
毛に癒される「親父のアグラ膝枕」……。」


「なんじゃこりゃ??」
久山は心の中で叫んだが、見なかったことにした。


家に帰ってキーワードでググってみたら「膝枕カンパニー」という通販サイトがヒッ
トした。
「先輩はこの中から何か買おうと思っているのだろうか。」
そしてスクロールしていくうちに、ある文言にぶち当たった。

「30歳まで童貞を守った人には抽選で10名にお好きなカスタマイズ膝枕を進呈します
。童貞かどうかは自己申告、性善説で参ります。」

こりゃ間違いなくフィッシング詐欺とかそういうヤツだろう!
!引っ掛かるバカがいるのか?!

冷静な部分ではそう思っていたけれど、久山はそのリンクをポチっていた。
「いやー、当たるわけないよな、個人情報入れちゃったけど大丈夫だよな!!」


そして忘れたころに膝枕カンパニーから当選のメールが届いた。

自分用にカスタマイズ?そりゃもう先輩の膝一択だろう。
久山は不審がられながらも先輩の足のサイズや太ももの太さなどを図らせてもらった
。写真も撮って顔がわからないようにして膝枕カンパニーに送ったりした。


そして今日、待ちに待った30歳の誕生日、お待ちかねの膝枕が届いたのである。


「よく来てくれたね。自分の家だと思ってリラックスしてよ」

強張っていた先輩の膝から心なしか力が抜けたように見えた。この膝に早く身を委ね
たいという衝動がこみあげるのを、久山は、ぐっと押しとどめる。強引なヤツだと思
われたくない。気まずくなっては先が思いやられる。

この膝があれば、もう何もいらない。久山は先輩の膝枕に溺れた。職場にいる間も本
人が目の前にいるのに膝枕のことが気になって仕事が手につかない。

「ただいま!」

久山が飛んで帰り、玄関のドアを開けると、膝枕が正座して待っている。膝をにじら
せ、久山を出迎えに来てくれたのだ。なんて、いじらしい。愛おしさがこみ上げ、久
山は膝に飛び込む。


そうこうしているうちに久山が関わっていたプロジェクトは成功し、打ち上げをやる
ことになった。

久山は失敗をフォローしてもらったこともあり、先輩の横に陣取りビールを注ぐ。
もう女子たちなど目に入らない。

あちこちからビールをつがれた先輩の酔った頭が傾いて久山の膝に倒れこみ、膝枕す
る格好となった。

酔っぱらった「先輩、かわいいですね。」

酔った勢いとは言えこの一言はまずかったと思いつつも、ふざけたふりでその場は乗
り切った。


その夜も、先輩の膝枕は、いつものように玄関先で久山を待っていた。膝枕されるの
も良いが、膝枕するのも捨てがたい。
そんなことを考えながらまどろんでいた久山はまだ保証書の隅に肉眼で読めないほど
の細かい字で注意書きが添えられていることに気づいていなかった。

「この商品の、返品・交換は固くお断りいたします。責任を持って一生大切にお取り
扱いください。誤った使い方をされた場合は、不具合が生じることがあります」

そうなのだ。浮気でもしたものなら頭が膝枕に沈み込み離れられなくなってしまうの
である。

久山は本物の先輩とどうこうなることはおろか、彼の「一生童貞」はもう決定事項に
なったのである。

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