件名, 見えなくても働かざる者食うべからず1
いよいよ文字処理ができなくなって来ると今までやってきた仕事を続けるのは難しく
なってきた。
障碍者センターに相談に行くと、視覚障碍者の仕事は当時はり灸マッサージか電話交
換が手頃であるような説明を受けた。
今から30年くらい前だから、まだ音声パソコンはそこまで普及していなかった。
電話交換は当時からあまり先がなさそうな職業だったし、はり灸マッサージ、これは
三療と言われているが、私が卒業するころには国家資格になっているという。
やっぱ弱者は資格でしょう、手に職でしょう!
しかも、特にマッサージは視覚障碍者の職業として守られているから、本来なら3年
学校に行って視覚試験を受けるまで900万円くらいかかるらしい所、5万円くらいで卒
業できるのである。
教科書とかも無料である。
これはコスパ的にも取らなきゃバカでしょう!
・・という事で、私はとっとと筑波大学付属盲学校理療科に入学したのである。
しかし私はそれまで鍼灸治療は何度か受けたことがあるが、マッサージはほとんど受
けたことがなかった。
そして、1年の1学期で自分が激しくこの仕事に向いていないことが判明した。
不器用、カンが悪い、力はない、理科ができない(基礎医学は理科である)。
その上に大きく立ちはだかるのは点字の壁であった。
20歳過ぎて点字を読めるようになるのはかなり至難の業なのである。
盲学校には普通の文字や拡大字、点字を使って勉強している人がいる。
中途障害の人は授業を録音したりしている人が多いようだが、毎日6時間ある授業を
学校が終わった後全部編集しているのだろうか。
私は点字でノートを取って、後で自分のノートを録音して、音声ノートを作っていた
。
しかし、今まで目で見て、書いて勉強してきたので、特にツボの場所だとか、筋肉や
血管の流れなど、言葉で説明されても理解できない。
かと言って、点図など触ってわかろうはずがない。
自分で自分に絶望しつつ、同級生に助けられつつとにかく丸暗記一本勝負でとりあえ
ず国家試験は首の皮一枚でクリアできた。
続く。