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見えなくてももっと外出したい

数年前、ガイドヘルパー養成講座の当事者講師になるための研修というのに参加した


ガイドヘルパー養成講座に来る人の中には一度も視覚障害者に接したことがないなん
ていう人もいる。だから講師も受講者も見える人では実際のクライアントである視覚
障害者の実態が見えてこない。特に実地訓練の時、アイマスクをつけた晴眼者と歩く
よりは実際の視覚障害者を誘導したほうが実体験にもなるし受講者の自信にもつなが
る。
だから、ガイドヘルパー養成の講習会には視覚障害者の講師も必要なのだそうだ。


私が参加した研修会に講師として来ていた全盲の先生が話してくれたこと。

彼は講習会の初めにこれからガイドヘルパーを目指す健常者たちにこう聞くそうだ。

「視覚障害者が同行援護サービスを受けられる時間はa市では毎月50時間、b市では60
時間。
もっと少ない所もあります。あなたは視覚障害者の同行援護は月何時間くらいが妥当
だと思いますか。」

講座に来ていた人は皆考える。
「a市もb市も50時間くらいならその辺が妥当なのですかね。」

そこで講師の先生はいつも言うそうだ。
「ではあなたたち健常者は月何時間外出していますか?」

すると講習を受けに来ていた人たちは皆はっとするらしい。
それはそうだ。ほとんどの健常者は近所の買い物なんかも入れたら月何百時間も外出
しているはずだ。


多くの視覚障害者は病院に定期検診に行くにしても、検診の帰りにガイドヘルパーに
買い物や食事に付き合ってもらったりする。

周辺のお店のパトロールにも同行してもらって、どこに何が売っているかを教えても
らったりもする。

今必要なくてもそこに何が売っているかがわかれば、別の日に一人で来店しても店員
さんに「○○ください」と言うことができるから事前チェックは重要なのだ。

眼科検診のついでにランニングやジムに一緒に行ってもらっているなんていう人もい
た。

とにかく見えている人が一緒の時に一人では行かれないところへの用事を詰め込む。


一方最近はガイドヘルパー事務所でイベントを企画しているところもある。障害者も
普段なかなか参加できないアクティビティーを体験できて喜んでいるし、事務所もヘ
ルパーも収入につながって「三方よし」。

イベント企画は障害者自身が発案してヘルパーたちに協力を仰いだりもしているよう
だ。


しかし、同行援護は利用できる時間に限りがある。比較的多いと言われている東京都
でさえ50時間とか60時間というところが多い。だからせっかく規格に参加しようと思
っても制限時間の壁が立ちふさがる。
料金がどうのというより、利用時間の制限であたふたしている人もいる。


確かに午前中に泳いだりランニングをした後お昼ご飯を食べて買い物をしたら、1日
で10時間近くが飛ぶ。
そうなると私たちは月に5日しか出かけられないのか?

それ以上にもっと重要な病院や役所に行くなどの外出がある。
こっちの方は必要不可欠。突然体調が悪くなって一人で病院には行かれないなんてい
う状態になることだってあるかもしれない。


50時間では短すぎるので地域のケアマネージャーさんに話したところ、私の住んでい
る地域の視覚障害者は皆多くても利用時間は50時間だと言う。
東京都の他の地域に住んでいる友達に聞いたところ、やはり50時間60時間がせいぜい
らしい。

私も今は平日は会社に行くことが多いし、通院している病院には1人で行かれるので
どうにか間に合ってはいるけれど、これで仕事を辞めた後は50時間では全く足りなく
なるだろう。


同行援護事業には他にも意義がある。
視力が徐々に落ちてくる人は白い杖をどのタイミングで持ったらいいかがわからない
人が多いらしい。
いやできれば持ちたくないという人が多い。

そんな人たちが外出するきっかけになるのがガイドヘルパーとの外出だ。
かなり見えなくなっても一緒にでかけてくれる人がいれば杖なしでもどうにか外出で
きる。そういう意味でも同行援護事業というのは意義があるとの話を先日聞いて目か
ら鱗だった。


これはあくまで障害者サイドからの話。

同行援護は自治体の補助があるからこそ利用できるサービス。
これを全額自己負担という事になったら私たちは好むと好まざるとにかかわらず強制
引きこもり人生になる。重度障碍者はほとんどが低所得者なのだ。

行政としては無尽蔵に補助はできないというのもわからないでもないけれど、金は天
下の回り物、私たちが利用してヘルパーも事業者も潤えばうまく流通するのではない
かとも思うが、これこそ素人の浅はかさ?


世の中では福祉関係の仕事に携わる人の収入が低いことが問題になっている。

どうにかうまく回してヘルパーも事業所も潤い、障害者ももっと自由に外出できるよ
うなシステムができないものだろうか。

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