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見えなくても君は生き延びることができるか

こちらでも紹介させていただいている、「バリアフリー読書サークルYAクラブ」とい
う、視覚障碍者を中心としたややオタク寄りの読書界の晴眼メンバーが糖尿病から視
力障碍になった。糖尿病性網膜症というやつだ。

40代男性。(当時)

彼は視覚障碍者の友達がたくさんいる。彼らが生活的にも経済的にも自立して趣味も
楽しんでいるのを見ているので視覚障害なんかでビビらない。早速その中の一人に今
後どうしたらいいか相談する。相談された女性は視覚障碍者の施設に勤めているので
いろいろ詳しいのだ。

彼はすぐに福祉事務所やらなんやらに連絡した。そして手続きをして所沢にある障碍
者リハビリセンターであんま鍼灸の勉強をすることになった。


中途視覚障碍者は40代以上の男性が一番始末が悪いと聞く。まあ抱えているものも多
いだろうし男性の方が切り替え力が低い人が多そうだしわからないでもない。視覚障
碍者向けにパソコンを教えている友人は、生徒の前でキレるわけにはいかないので私
に「中途障害のおっさんがダメすぎる」とこぼしていた。

もちろん彼らの中にも素晴らしい人はたくさんいる。しかし変な人があちこちで悪目
立ちしているので、イケおじはその中に埋没してしまっているのだ。

そんな40代男性の彼がサクサクと進路変更に取り組む姿勢を見せていたので、福祉事
務所の職員さんが感激していたそうな。
ちなみに彼は独身で、背負っている家族がいないのもフットワークのよさの要因だっ
たと思われる。


はじめのころはまだ彼も余裕があった。視力もまだそこそこ残っていたのでジャンプ
フェスタに行ったとか、ワンピースの映画を見に行ったなんて言っていた。見づらい
ながらもゲームもできたそうである。

リハビリセンターに通い始めてからも同じガンダム好きの若い友達ができたとか、楽
しい学生生活を送っていたようだ。勉強も録音と活字を併用してどうにかやっていた


そして3年後、いよいよ国家試験。あんま・マッサージは受かったが、鍼灸は受から
なかった。
頭の悪い人ではないけれど、高卒で受験勉強の経験がないからか、テストのためのや
っつけ勉強のスキルがなかった上、文字もあまりよく見えない状態で勉強するのはか
なり大変だったと思う。
私はカセットと点字の併用だったが、図解を言葉で説明されても理解できないし、東
洋医学はもちろん、呪文みたいな医学用語を耳で聞いて暗記するのはかなり骨だった


そんな時コロナ禍がやってきて、濃厚接触なマッサージの仕事が激減した。

結局彼が就職できたかどうかはわからない。親しかったYAクラブの役員たちも彼と連
絡が取りづらくなっていった。そうこうするうちに彼から退会願いが出された。
メーリングリストに届くメンバーの楽しそうなメールを読むのがつらいと言っていた
そうだ。


糖尿病の人は自己管理が大切だけどそれがなかなか難しい。
リハビリセンターにいたころは給食が出て、糖尿の人にはちゃんと糖尿食が出て食事
管理がなされる。でも卒業してしまうとそれらはすべて自己管理になるので一気に体
調を悪化させる人がかなりいるらしいと聞いた。

彼もその一人になってしまったのではないか。体調が悪化したうえ、視力も落ち、も
うジョジョのゲームもできないし、ジャンプフェスタにも一人ではいけなくなってし
まったのではないか。


視覚障害の沼は視力0.01を切ってから始まる。とにかくできない。何にもできない。
特に今まで見えていてなんでもなかったことに1時間とか2時間取られる。地獄である


そして0.01と全盲の間にもマリアナ海溝並みの大きな溝がある。

アニメだって映画だってガイドがないと全然わからない。キャラや俳優の顔も見えな
い。今まで映像を楽しんでいたのがもうCGだろうが映像だろうが関係ないしカメラワ
ーク?!それおいしいの?って感じだ。


彼は私たちが普段から好きな本やアニメの話で騒いでいたりするのを見ていて視覚障
害を甘く見ていたのかもしれない。目をつぶってご飯を食べたりトイレに行ったりす
れば、見えないことがどんなに大変化はわかりそうなものだけどなあ。

仕事は結局どうなったかはわからない。でも苦しい状態にあるなら今こそ私たちを頼
ってほしい。うざいけど、愚痴くらいなら聞いてやる。そしてファーストガンダムの
最終回を思い出してほしい。君にはまだ帰れるところがあるのだ。




、YA(ワイエー)クラブのホームページへようこそ!
http://yaclub.sakura.ne.jp/

バリアフリー読書サークルYAクラブは視覚障碍者を中心に本が好きなメンバーが集ま
って無駄に熱く本の話をしているグループです。

話題になった本などで、音訳されていない本があれば、朗読協力員さんに録音図書を
作ってもらったりもしています。

特にYA図書、ライトノベルなど、普通の点字図書館では取り扱いが薄いタイトルの音
訳をお願いしたりしています。

そんなわけで、朗読協力員さんも随時募集しています。

障害があってもなくても、本が好きな人大歓迎です。

興味を持ってくれた人は上記のHPを見てください。

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