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見えなくてもメルカリ

どうやら世の中にはメルカリというのがあって、いらなくなったけれどまだ使えそう
なものなんかを売ったり買ったりできるらしいという事を聞いた。

それはなにやら便利なものができたわいと喜んだのもつかの間。待てよ、見えなくて
も使えるのだろうかという疑念が・・・。

今までいろいろなことにぬか喜びさせられた積み重ねがあるので、すぐには飛びつく
ような愚は犯すまい。

果たして見えない私にも使えるシロモノなのだろうか。
まずはリサーチだ。


パソコンに詳しい晴眼者と話をする機会があったので聞いてみた所、
かなりこまめに相手方と連絡を取り合わなければいけないから意外と面倒くさいとの
事だった。それはそうだろう。全く知らない人と商品やら金銭のやりとりをするので
ある。お互いの信頼関係は重要だ。
そうなると、しょっ中スマホをチェックしたりしなければならなくなり、振り回され
がちになりそうだ。


視覚障害者の友達にも聞いてみた。すると彼女曰く、売れるためには写真が重要との
事。
そうすると見えない私たちにはやはりハードルが高そうだ。

最近は何でも「ばえ」が重要だから不動産でも写真が美しくないと借り手が見つから
ないとか。


ヘルパーさんがよくメルカリでものを売っていると言っていたので聞いてみた。する
とラッピングも大切でいい加減だったりすると評価が低くなるらしい。
これはますます見えないと厳しそうだ。しかし届いたはいいけれど中身が破損してた
、みたいなことになってもこれはこれで問題だ。

結論として出品は見えない人単独では無理。


では購入となるとどうだろうか。

お金も商品もスムーズにやりとりができれば特に問題はなさそう。しかも双方の個人
情報がわからないようにするための工夫がちゃんとなされている。しかし何かトラブ
ルがあった時はかなり面倒くさそうだ。
個人対個人なので商品の交換なんてのもできない。

アマゾンでの返品でさえかなり面倒くさかった。
商品に不具合があったので返金してもらったものの、商品も送り返してほしいと言う
。そりゃ当たり前なんだけれど、出品しているお店がアマゾンではなかったこともあ
り、連絡を取るのもかなり大変だった。
見えないとスマホ操作が見える人の何倍も時間がかかるのである。

しかも返品するときの宅配便の宛名書きも自分ではできないのでヘルパーさんに頼ま
なければならない。

アマゾンでさえこんなに面倒くさいのに相手が個人だったらもっと面倒なことになり
そうだ。

私の中でメルカリと言う選択肢は消えた。


ところで私は趣味で朗読をやっている。文字も読めないし展示も読めないのでカセッ
トから聞こえてくる音を頼りにシャドーイングをする形で語りをやっている。

どうして今更そんなアナクロなカセットを使っているかと言うと、デジタル機器はプ
レイボタンを押してから音が出てくるまでに一拍タイムラグがあるからである。

昔、ビートたけしさんが漫才は間が大切と言っていたけれど、語りも同様。間がおか
しいと相手に伝わらない。
だから、シャドーイング朗読をするときはポーズボタンがちゃんと機能して、速さも
変えられる小さいカセットプレーヤーを使う。

最近レトロブームで、カセットがまた若者の間でも流行っていると言う話は聞くが、
彼らが使うのは音楽を聴くための大きいラジカセ。昔、会議を録音したり語学練習に
使っていたような早回しができる小さなカセットプレーヤーはボイスレコーダーに駆
逐されてしまって、もう製造もしていないそうだ。
だから今持っているカセットプレイヤーが壊れた時が私の朗読生命の終わりだ。
そんなことをあちこちで愚痴っていたら友人の一人に「メルカリにならあるんじゃな
い」と言われた。


私にもとうとうメルカリのハードルを超えなければならない時が来た。
とりあえず自分のカセットプレーヤーと同じ品番のものを検索した。
いくつか出てきたけれど値段が全然違う。これはどうしたものか。あまり安いのもヤ
バそうだ。
ほとんど使っていないとか皆さんいろいろコメントが書いてあった。
なんだかよくわからないけれど2つくらい買ってみることにした。
出品者の人たちは皆評価の高い人と言うことになっていたけれど、素直に信じて良い
ものだろうか。


商品は皆きれいに梱包されて届いた。さすがメルカリパワーユーザー!!
動作確認もしてあるとの事だった。
しかし1つはしばらく使っているうちにポーズボタンが効かなくなった。
出品者が動作確認をしたときは大丈夫だったのだろうが、使ってはいないが長年放置
されていた品物、あちこち経年劣化していたのだろう。

その後カセットテープの専門店というのを見つけたのでそこに修理に出した。もう商
品自体がないのでそうするしかないかなという感じだった。
朗読を続けるのも何だかお金がかかる。


私がメルカリを利用したのはそれ1回きり。

やはりどこまで何を信用していいのかわからないし、面倒くさいことが多い。


しかし、見えない人の中にもヘルパーさんの手を借りてかなりメルカリを使いこなし
ている人もいるようだ。

そうか、子供がいると、着るものもどんどん変わっていくし、おもちゃなど身の回り
の物も変わっていく。それらをメルカリで循環させるのは見えても見えなくても生活
の知恵。

面倒くさくてもやらないよりやったほうが自分にとって有益なら多少のハードルは越
えられる。
そういう私も朗読人生が積むと思ったら重い腰を上げることができた。

「必要は発明の母」というのはよく聞くけれど、必要は「面倒くさい」も超えられる
ようだ。

所で私はこの中で何回「面倒くさい」と書いたのだろう(汗)

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