膝枕・禁断のBL展開!?

最近クラブハウス内で、脚本家の今井雅子さんの「膝枕」という短編をいろんな人が
アレンジして朗読をするという大人の朗読リレーというのがブームになっています。

かねてから乗っかりたいと思っていたのですが、自分はまともな文が書けるとは思え
んし、目が見えないしとか大変うじうじしていたのですが、思い切ってえいっとばか
りエントリーしてみました。

若いころからアニメの二次創作に親しんでいた私、二次創作と言えばBLしか思いつき
ませんでした(汗)

世界の皆さんごめんなさい。

相変わらず誤字脱字もあると思うのですが、どうかご容赦ください。



今井雅子原案
かわい いねこ二次創作

膝枕・禁断のBL展開!?


休日の朝。独り身で恋人もなく、打ち込める趣味もなく、その日の予定も特になかっ
た男は、チャイムの音で目を覚ました。

ドアを開けると、宅配便の配達員がダンボール箱を抱えて立っていた。オーブンレン
ジでも入っていそうな大きさだが、受け取りのサインを求められた伝票には「枕」と
書かれていた。

「枕」

男の声が喜びに打ち震えた。

「受け取ってもらって、いいっすか?」

配達員に急かされ、男は「取扱注意」のラベルが貼られた箱を両腕で受け止めると、
お姫様だっこの格好で室内へ運び込んだ。

はやる気持ちを抑え、爪でガムテープをはがす。
カッターで傷をつけるようなことがあってはいけない。

高ぶる気持ちを抑え、ゆっくりと蓋を開けると男は思わず叫び声をあげた。

「なんじゃこりゃー」「

そこに鎮座増しましたのはあろうことかすね毛もきたならしいおっさんのアグラだっ
た。

男は見なかったことにして急いで蓋を閉じた。

「返品だ、返品。
苦情の電話もかけてやる」

一瞬にして身体の全エネルギーを失った男はとりあえず箱をおしいれの隅におしやっ
た。

男が「膝枕」を見つけたのはほんの偶然出会った。

通販サイトをあてどもなくぶらぶらしていたらピチピチのショートパンツから膝頭が
二つ、顔を出している映像に目がくぎづけになった

見た目も手ざわりも生身の膝そっくりに作られている。さらに、感情表現もできるよ
うプログラムを組み込まれている。だが、膝枕以外の機能は搭載していない。膝を貸
すことに徹しているという説明文とともに
幅広いニーズに対応できるよう、豊富な商品ラインナップが紹介されていた。
体脂肪40%、やみつきの沈み込みを約束する「ぽっちゃり膝枕」。母に耳かきされた
遠い日の思い出が蘇る「おふくろさん膝枕」。「小枝のような、か弱い脚で懸命にあ
なたを支えます」がうたい文句の「守ってあげたい膝枕」。頬を撫でるワイルドなす
ね毛に癒される「親父のアグラ膝枕という文言があった。

カタログを隅から隅まで眺め、熟慮に熟慮を重ね、妄想に妄想を繰り広げた末に男が
選んだのは、誰も触れたことのないヴァージンスノー膝が自慢の「箱入り娘膝枕」だ
った。

それなのに、ああ、それなのに、どこがどうまちがって、しかもあろうことか、なぜ
親父のひざまくらなんだ。

「おれのドキドキを返せ!}


「その……着るものなんだけど、女の子の服ってよくわからなくて.……」

男がしどろもどろに言うと、箱入り娘の膝頭が少し弾む。

「一緒に買いに行こうか」

さっきより大きく、膝頭が弾む。喜んでくれているらしい。

今夜はそんな光景を夢見ていた男と膝枕にとっての初夜となるはずだった。

、その夜。男は失意と絶望の中で眠ることになった。


翌日、男は返品手続きをする気力もなく惰性で職場に行った。

本当なら箱入り娘膝枕にレースの白いスカートなんか買ってやったりして、そのまし
まろのような膝を思い切り堪能するはずだった。

男が会社から飛んで帰り、玄関のドアを開けると、膝枕が正座して待っているはずだ
った。

男は、やり場のない怒りをぶつけるように仕事に没頭した。


「こんなにできる人だったんですね」

職場の飲み会で隣の席になったヒサコが色っぽい視線を投げかけてきた。男の目はヒ
サコの膝に釘づけだ。酔った頭が傾いてヒサコの膝に倒れこみ、膝枕される格好とな
った。

その瞬間、あんなにあこがれていた女の膝枕に何とも言えない違和感を感じた。

「ああ、おれ、よってんだな。」

ぼんやりとした男の頭の上から、ヒサコの声が降ってきた。

「好きになっちゃったみたい」

相変わらず親父のアグラ膝枕は箱に入ったまま押し入れの中に放置されていた。

行っていい?」とヒサコから連絡があった。

男は飲み会の日の違和感を残したまま、ヒサコを部屋に招き入れた。

その夜、違和感の正体を知りたかった男はヒサコに膝枕をせがんだが、手を出すこと
はしなかった。ヒサコは男に大事にされているのだと感激した。

翌日からヒサコは男の部屋に通うようになるが、あいかわらず膝枕止まりで、その先
へ進まない。ヒサコはじれったくなるが、女のほうから「そろそろ枕を交わしません
か」と言うのもはばかられる。

もうひとつ、ヒサコには気になることがあった。男の部屋にいると、視線を感じるの
である。誰かが息をひそめて、こちらをジトっと見ている気がする。

「ねえ。誰かいるの?」

「そんなわけないよ」

すると、今度は押入れからカタカタと音がする。

「ねえ。何の音?」?

「気のせいだよ。悪い。仕事しなきゃ」

?「いいよ。仕事してて。私、先に寝てる」

?「違うんだ。君がいると、気が散ってしまうんだ」

男は急いでヒサコを追い返すと、ダンボール箱から親父のアグラを取り出す。箱の中
で暴れていたせいで、オヤジの膝は打ち身と擦り傷だらけになっている。

「もしかして焼きもちを焼いているのか。」

男は初めて親父のアクラを箱から出してみた。

そして、なんとはなしにその膝に頭を預けてみた。

なんという安定感、なんという頼もしさ。
チクチクするすねげでさえ大きな安心感を与えてくれるのである。
「なんか、ヤバいかも・・・。」

男はひさこの膝の違和感の正体が分かった。
柔らかすぎるのである。
不安定なのである。

「俺にはお前の膝が一番だったのか?」
親父の膝は優しく包み込むように揺れた。
}

「最低!」

男が飛び起きると、いつの間にかヒサコが戻って来ていた。玄関に仁王立ちし、形の
いい唇を怒りで震わせている。

「二股だったんだ……、しかも男?」

「違う! ! これはおもちゃじゃないか!」

男が思わず口走ると、オヤジの膝がわなわなと震えたが、男は遠ざかるヒサコの背中
を見ていて、気づかなかった。

そうは言ったものの男はひさこを追う事ができなかった。


「ごめん。これ以上一緒にはいられないんだ。でも、君も僕の幸せを願ってくれるよ
ね?」

身勝手な言い草だと思いつつ、男は走り去るひさこにつぶやいた。

男はのろのろと部屋に戻ると再び親父の膝に頭をうずめた。

大きくどっしりとした親父のアグラは男に深い安心感を与えた。

「ああ、このままずっとこうしていたい」

そのときふと、男の頭に別な考えがよぎった。

「これもプログラミングなんじゃないか」

配達ミスなんかではなく、何らかのアルゴリズム的な何かでこの親父のアグラは俺に
届くべくして届いたのではないか。

男は目の前に新たな扉が開く音を聞いたような気がした。

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