ZENONZARD懐古録”BEYOND”
徐々に増える環境デッキリストを手作業で作成するのが大変すぎて今後を考えるのが恐ろしくなりつつあるZENONZAED懐古録。
今回はPACKCODE:01Re”BEYOND”環境を語っていきたいと思います。
第一章 BEYOND~災厄の忌み子~
BEYONDの発売によって環境にどのような変化がもたらされたのかをまず解説しておきたいと思います。
1. キマイラからの解放
ベースミニオンが非常に弱く、キマイラを使うことが必須であったAWAKENでしたが、BEYONDでは配置時にノーコストで発動する非常に強力な効果を持ったベースミニオンが追加されました。
0コストで赤のミニオンに襲撃を与える”ドワーフの闘士”、
0コストでのマナ加速ができる”マーメイドの戦士”、
0コストのスフィンクス貫通の確定除去である”アンドロイドの銃士”
は特に強力でのちの環境にも大きな影響を与えました。
2.新キーワード”後退時”
新たな発動タイミング”後退時”が追加されました。
フィールドからベースへ移動した時に発動するこの効果は移動権をアドバンテージに変更することができ、移動権の重要性が非常に大きくなりました。
往復させることで無から有を生み出せるため長期戦の際の選択肢を増やしました。
3.とりあえずライフォ
BEYOND環境を代表する変化といえばとりあえずライフォ。
AWAKEN期末期から増え始めた無色アグロを始め多くのデッキにダスカースが採用されそのメタとして採用されました。
それだけでなく、4マナ600というサイズは平均以上で壁としてもアタッカーとしても優秀。相手のライフォを処理するためにライフォをプレイする必要があり、数多くのデッキに採用されました。
中盤のライフォを如何に強く使えるかというのがこの環境では重要なプレイングの一つでした。
逆張りオタク
それでは環境の変化を見ていきたいと思います。
BEYONDといえば冒頭の画像の中心に鎮座する”ヤツ”を思い浮かべるプレイヤーがほとんどだと思いますが、最初に現れたデッキは”ヤツ”ではありません。
その性質上、先行公開の段階で構築が固まってしまっていた奴よりも先に
踏み倒しは強いと脳に刻み込まれているカードゲームオタクの琴線に触れたカードが1枚あったのです。
そして新ギミック”後退時”を使ったデッキとして青単ミッドレンジがまず環境に現れました。
ペガサスの効果と”マーメイドの戦士”のマナ加速と各種ドローカードを活かした無色アグロの亜種ともいえるデッキでしたが、移動権を絡めたリーサルの計算が複雑で玄人向けのデッキという印象がありました。
調整〇将来性×
ほどなくして”ヤツ”が環境に現れました。
そう”「思惑を砕く者」キスカ”です。
この環境を経験したプレイヤーであれば忘れることのできない悪名高いミニオンです。
破壊時効果にはAWAKEN期にも活躍した”オッドアイ”、
BEYONDにて追加された”アリュシナシオン”がおり
上ブレれば相手の盤面を丸裸にしながら5、6打点を瞬時に形成するe-sportsカードとして環境で暴れまわることになりました。
さて、ここで勘違いしてはいけないことが1つあります。
キスカは暴れはしましたが決して強くはなかったのです。
キスカに依存したこのアーキタイプはまずはキスカを引くという第一段階ののちに5連ガチャで当たりを引く必要があります。
この2段階を突破できる確率はBEYOND環境では5割どころか4割もありません。
カジュアルなガチャカードでその期待値がその程度なら良カードじゃないかと感じる方もいるかもしれませんがそうではありません。
キスカが存在すると、その後の破壊時効果のデザインを大きく歪めてしまうことになるのです。
カードゲーム基本として一度場に出した後に破壊されるという2度手間を踏む破壊時効果は強力な物としてデザインされます。
そして、墓地利用がテーマの一つである紫には破壊時効果も多くデザインされていくことになります。
その強力な効果を召喚時に複数発動できるキスカは紫の存在そのものを根本から揺るがすデザインを持って生まれたのです。
まさしくキスカは生まれてくるべきではなかった存在、”忌み子”と呼ぶにふさわしいカードでした。
そんな忌み子キスカのリストはこちら。
ベース強化の流れからウロボロスやペガサスを採用する構築もありましたが、ガチャデッキなのでキマイラを採用してマリガンに全力を注いだ方が強いです。
ガチャは確率アップのフェス中に回せ。
この対処不可能なガチャのせいでBEYOND環境前半のコントロールデッキは死滅しました。
新機軸の獲得
新ギミックを利用するデッキだけでなく、AWAKEN期のデッキを強化したデッキも存在しました。
ツインハヤテ以外の勝ち筋の細さが欠点の一つであった無色アグロは、BEYONDにて追加された優秀な除去効果持ち無色ミニオンとベースを採用することで除去コントロールとしての側面も持つデッキへと発展しました。
BEYOND発売当時は全てのミニオンを破壊可能であったバルドロードも強力でしたが、
召喚時にBP-200を付与できるベテランゴブリンが特に強力な1枚でした。
環境に多く存在していた青単ミッドレンジやキスカの2マナミニオンのBPはどれも200のため、後攻2ターン目に場に残っている2マナミニオンを破壊でき、ツインハヤテ以外の環境に適した動きができました。
車輪の発明
「どうして思いついた?」となるような革新的なデッキがカードゲームにはいくつもあります。
「ゼノンザードでは?」となった場合、このデッキがその内の一つであることは間違いないでしょう。
それがこの”赤白アグロ”です。
この赤白アグロは何のきっかけも無く突然現れたデッキというわけではありません。
AWAKENの頃から”クリムゾンメイル”や”シャドウハンド”を使ってフォースを攻めていく”赤紫アグロ”というデッキが存在しました。
しかしこのデッキ攻撃性能は非常に高かったのですが、襲撃によって直接攻撃ができる赤とフォースを攻撃する必要のある紫と攻撃したい対象が2つに分かれていたため、攻め方にどうしてもちぐはぐさがありました。
そしてBEYONDの発売により状況は変わりました。
”ドワーフの闘士”の登場により”グレイグ・スマッシャー”が襲撃持ちDP2として駆け出し、
何より新しかったのがコストパフォーマンスが最も悪いフォースである”サイクロプス”の採用です。
この自分のターンのみBPを100上げるフォースのおかげで”トレーサードーベル”は無敵の殺戮マシーンと化し、
白の強制ブロックで盤面を空け、赤の襲撃でただひたすらに顔を狙うその名の通りアグレッシブなデッキが成立しました。
この赤白アグロと無色アグロの流行により、序盤をBP200のミニオンでアドを得ることに注力した青単ミッドレンジは環境からその数減らしていきました。
サンプル数1
コントロールが死滅したアグロミッドレンジ環境、そんな環境を戦うアグロでもミッドレンジでもコントロールでもない不思議なデッキが存在しました。
それがこの”黄単リープ”。複数のカードを組み合わせるコンボデッキでもないこのデッキは、分類するなら”テンポデッキ”とでもいうべき存在でした。
キーカードは”タイムリープ”。
紫の全体破壊マジック”パンデミック”よりも1コスト少ない代わりに効果がバウンスとなったこのカードをただ使用するだけでは手札と場の合計は変化せず、むしろこのカード1枚分カードを消費してしまうアド損カードです。
しかし、ゼノンザードでは移動権を消費することでミニオンを0コストでフィールドに送り出すことができるため、このカードは無理矢理攻撃するテンポを獲得することができます。
むしろ紫が環境に存在するためその破壊時効果を発動させないこのカードはより強力にそのテンポを獲得することができました。
紫と盤面を並べるデッキが環境に蔓延っていたため環境への通りが非常に良かったのですが、
目に見えるアドバンテージはなくテンポで勝負するため相手のデッキに対してどのタイミングで攻撃権を獲得することが効果的かということを正確に把握していなければいけないため私以外使っている人を見たことがありません。
環境を振り返るにあたり十傑経験者数人にも意見を聞きましたが、皆この環境の環境デッキの一つに”黄単リープ”を挙げましたが誰も使ったことがありませんでした。
第二章 BEYOND~ランキングの始まり~
生まれてくるべきでなかった忌み子。キスカは環境半ばにしてナーフが発表されました。
また一部カードへのアッパーもあり、特に”ダンシング”・カトラス”はBP500になることで赤白アグロのトレーサードーベルに対して露骨なメタ性能を持つことになりました。
そしてついにランキングが始まることになります。
期間内、規定数の対戦数での勝率を競う。
プレイ回数でも運でも勝つことのできない、ゼノンザードを代表する対戦環境が幕を開けることとなります。
キスカナーフからランキング開始まで刹那、様々なデッキが開発されいくこととなりました。
灯台下暗し
キスカのナーフにより、コントロールデッキが環境へと返ってくることになりました。
そしてそのコントロールデッキとして環境に現れたのはナーフされたキスカを不採用とした”ペガフェニ紫”でした。
移動権をアドバンテージに変換できる後退時効果は墓地利用が可能で長期戦が得意な紫と特に相性が良く、盤面リセットカードのパンデミックの被害を相手だけに一方的に押し付けました。
サンプル数1(2)
ランキングで使用されたデッキを紹介していくという建前、カジュアルには全く使われなかったデッキを一つ紹介しておきます。
それがこの”ターボヤクーツォーク”です。
キスカのナーフと同時に行われたアッパーでヤクーツォークのBPがバルドロードに破壊されない1300となり、赤白アグロや無色アグロにほぼ破壊されずその攻撃を止めることのできる無敵のミニオンとなりました。
そこで環境に多いアグロデッキはヤクーツォークで詰ませ、紫にはマジックで1ターンを得た後にベースに溜めた貫通ミニオンをアレシャンドで一気に展開しワンショットを狙うデッキが開発されました。
しかしこのデッキ、キマイラを採用しているとはいえ青3を持つアレシャンドを出すための青マナの枚数を限界まで絞っているなどとてもカジュアルに使える構築をしていなかったためほとんど広まりませんでした。
結論
こうしてついにseason:00が始まりました。
ラケシス、麒麟というコンボデッキや、5wallsでザナクロンが使用したことで赤単というデッキも存在しましたが、
赤白や無色といったアグロデッキが幅を利かせる環境で戦い抜くパワーはまだ持ち合わせていませんでした。
そんなseason:00の結論デッキは、
ミノタウロスを採用した紫でした。
顔を狙い続けるアグロデッキに対してはやはりミノタウロスがめっぽう強く
BP200を虐める環境にBP300のバニラを採用
ペガサスとのアドバンテージの取り合いをジヌティーヌでのバーストで対抗するなど環境に合わせた調整の光るデッキでした。
こうして初のランキングであり、まだ十傑という制度の無いSEASON:00が幕を下ろしました。
お気づきでしょうか今回解説した環境デッキには全て、
この緑の毛玉が採用されています。
今後ZENONZARDにおいて最も多くのデッキに採用されることになるこの毛玉はBEYONDが初収録です。
今回はこれだけでも覚えて帰ってください。
おまけコラム~AIに強いデッキとは~
十傑を争っていた方々は既に重々承知していたことだとは思いますが、今回はランキングで探し求めていた”AIに強いデッキ”とはどういったものだったのかということを紹介しておきたいと思います。
別にデータを解析したというわけでもないので今回の話は何百戦何千戦と遊んできた主観に基づくものになりますがご容赦ください。
ゲームAIとはどのような仕組みで作られていくのかを考えてみます。
将棋の番組やゲームでは”評価値”というものが表示されることがあります。
ざっくりいうとどれだけ良い手かというのを評価しているわけですが、ゼノンザードのAI開発を行ったのも将棋AI製作会社なので似たような方法を用いていると考えられます。
この評価値の決め方は主に2通りあり、まずは過去を顧みる方法。
将棋は歴史上膨大な量の対局があり、その棋譜から「この曲面であればどういう手を打てば勝てるか」ということを評価することができます。
そして、その発展形の新たに生み出す方法。
これが将棋AIが人間を超えたと言われる所以であり、過去の対局に学んだAI同士を戦わせることでその結果からより優秀な一手を評価することができます。
しかしこの方法には一つ大きな落とし穴があります。
それは”敗北から何も学べない”ことです。
将棋のような全ての情報が公開されている”完全情報ゲーム”であればこの学習方法は正しいです。
常にどちらかが勝つため、勝った手を記録し続けていけば劣勢からでも勝った手も記録にあるはずです。
逆に敗北に繋がった手は評価値自体も低くなり、検討するだけ時間の無駄となります。
ですがカードゲームは非公開領域のある”不完全情報ゲーム”です。
以前この方法で勝ったから次回も勝てるかといえばそういうわけでは無いのです。
具体例を挙げてみます。
AIに勝てるデッキの代表格であったラケシス。
相手のライフと自分のフォースを入れ替え相手のライフを大きく削ることを目的としたこのデッキを使っていると、AIが中途半端にフォースを攻撃してくることがありました。
これがどういうことかというと、AIはラケシスに勝つ方法は知っているのです。
ラケシスに勝つのは非常に簡単にで、フォースを破壊して交換するフォースがそもそもなければいいのです。
なのでAIはフォースを攻撃することで破壊して勝ったということは学習します。
逆にフォースを破壊しきれなかったので負けたということは学習できません。
もっと分かりやすいのが仮面ライダー環境。
相手の場にブロッカーになるミニオンがいるのに2コスライダーの攻撃が通るというのがそこかしこで見られました。
このライダーの攻撃が通れば変身して大きなライダーへと繋がっていくのですが、ブロックしなかったから負けたということを学習できませんでした。
ブロックすれば勝てるのであれば学習するのでしょうが、別にそういうわけでもないのでAI相手に非常に楽な試合をすることができました。
AIに勝てるデッキを一言でいうなれば「セオリーが負け筋になりうる」デッキのことでした。
不完全情報ゲームで人間に勝てるAIの登場に期待するばかりです。
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