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都心でも自然が豊かな秘密とは?NYの「緑事情」と市が推進するグリーン・ニューディール政策を知る

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みなさん、こんにちは。NY在住MBA学生ライターのユカです。
NYというと摩天楼がそびえ立つ大都会で緑や自然とは程遠いイメージをもっている人がほとんどかと思います。実はそんなニューヨークも自然が豊かで緑が多いということをご存知ですか? 今回の記事では、NY市の「緑事情」に着目して、どのような取り組みを行なって街中に緑を増やしているのか、そしてNY市の推進する環境政策についての現状をお伝えしようと思います。

目次:
1. 大都会の中のオアシスを探して...NY市は意外にも緑に溢れている
2. NY市が街を挙げて取り組むグリーン・ニューディール政策とは?
3. ルーフトップ農園・ハイライン緑化・植物レストランから垣間見えるNYのエコシーン


1. 大都会の中のオアシスを探して...NY市は意外にも緑に溢れている


(出典: Unsplash)

至る所で摩天楼がそびえ立つNY市マンハッタン地区。観光客や通勤客でひしめくそんな大賑わいで忙しい街中には意外にも多くの自然が存在します。その証拠に、NY市内5つの地区(マンハッタン、ブルックリン、ブロンクス、クィーンズ、スタテン島)を合わせると、公園の数は1700以上。街全体の面積の内14%を公園が占めていて、NY市公園部門が管理する敷地は、公園や街路樹、コミュニティ・ガーデン(庭園)等全てを合わせて121平方キロメートルにもなります。

中でも全米一大きい公共公園の1つであるセントラル・パークは、その歴史が1800年代にまで遡ります。当時のマンハッタン地区はまだ開発途上。NYにも人々がゆったり時間を過ごせる場が必要との地元住民からの意見を受けて、1859年の開園に至ったのです。

他にもマンハッタン近郊の地区では、ブロンクスの植物園や、ブルックリンのサンセットパーク、スタテン島のブルー・ヘーロン・パークなどがイベントが豊富で有名です。公園の規模関係なく、どの地区の公園でも無料のムービー・ナイトや青空ヨガ、ハイキングや野生動物観察等のイベントが行われていて、夏には地元住民をはじめ観光客にも大変な賑わいを見せます。NY市に緑を増やしてくれているのは公園だけではありません。

(出典: GrowNYC )

上記の画像はマンハッタン地区のイースト・ハーレムにあるコミュニティ・ガーデンでの作業の様子。
コミュニティ・ガーデンとは、住民が共同で造成・管理した地域の花壇や畑を意味します。
NY市には、全5地区に渡り600以上のコミュニティ・ガーデンが存在します。地域に根付いた「庭」のような感じで、近隣の住民がそこで野菜を栽培したり、花壇を造ったり、古いコミュニティ・ガーデンのリノベーションをしたりなど、いつでも身近で緑が感じられるような一帯となっています。


既に人口860万人を誇る大都会NYですが、年々観光客は増加する一方。新たに建設されるレストランや不動産、スタートアップ企業などはエコやサステナビリティを重要視する傾向が見られます。また、そのトレンドに相まって近年は市の環境政策も大幅に強化しています。その根幹を成すのが、NY市が掲げるグリーン・ニューディール政策です。

2. NY市が街を挙げて取り組むグリーン・ニューディール政策とは?

まずは、「グリーン・ニューディール」が一体何か、ここで定義を学びましょう。

グリーン・ニューディール: 自然エネルギーや地球温暖化対策に公共投資することで、新たな雇用や経済成長を生み出そうとする政策。 第44代アメリカ大統領、バラク・オバマが打ち出した。 環境と経済の問題を同時に解決する手法として注目を浴びており、アメリカを皮切りに、日本や国際社会でもこの政策の検討・整備を始めている。(出典:コトバンク)

要約すると、「環境問題に取り組みながら、社会や経済の問題をも同時に解決してしまおう」ということです。呼び名自体は、1930年代にアメリカ合衆国大統領フランクリン・ルーズベルトが世界恐慌を克服するために行った一連の経済政策「ニューディール政策」からきていて、そこに環境を象徴する「Green」(グリーン)がついたところに由来します。


(出典: https://brooklyneagle.com/articles/2019/04/22/nycs-green-new-deal-everything-you-need-to-know/)

「無駄にする時間は一刻もない。手遅れになる前にアクションを起こさなければならない」
そう言って、2019年4月、NY市のデブラシオ市長はこのグリーン・ニューディール政策のために、1.4兆円規模の投資計画を承認しました。この計画は市を挙げて温暖化政策に取り組むアクションプランであり、主に下記の目標を設定しています。

・2050年までに、100%クリーン・エネルギー利用、カーボンニュートラルを目指す
(カーボン・ニュートラル:二酸化炭素の排出量と植物の吸収量が同じという考え方)
・エネルギー効率の悪い全ガラス窓のビルの建設禁止
・有機性廃棄物のリサイクル義務化(コンポストを増やす等)

NY市のグリーン・ニューディール政策では、市全体で歴史的にも問題となっている所得格差を是正すること、また住居の再開発や修繕、そして持続可能エネルギーの普及で雇用を拡大することも目標として含まれています。環境問題に取り組みながら、NY市固有の社会問題をも解決していく包括的な政策が、NY市のグリーン・ニューディール政策なのです。

この政策の公開と同時に、市議会は、新規の建設物にソーラーパネルの設置を義務付ける法案を可決。NY市政府のオペレーションは100%クリーン・エネルギーに転換予定なので、着々とエコシティの実現へと向かっているのです。

3. ルーフトップ農園・ハイライン緑化・植物レストランから垣間見えるNYのエコシーン

(出典: Brooklyn Grange )

NY市のエコシーン自体も、日々進化を遂げています。大都会では土地が非常に少ないという事実をうまく活用した事例の1つがルーフトップ農園。近郊農業自体は何も目新しいことはないのですが、都市部のど真ん中で農業を行うという点ではルーフトップ農園は結構画期的です。
NY市ってこう見えて、意外にも大型の商業用畑や農園がたくさんあるんです。例えば、上記の写真はブルックリンにある大型ルーフトップ農場 Navy Yard Farm。Brooklyn Grangeというルーフトップ農園の運営を専門に行う会社によって経営されています。Navy Yard Farm では年になんと3.6万キロもの食料が収穫されているのです。野菜やハーブの栽培をはじめ、ルーフトップ農園の始め方、B2Bのコンサルティング業務、市民への教育イベントなども開催していて、多岐に渡ってNY市のエコ事情を支えています。

(出典: Eagle Street Rooftop Farm )

同様のルーフトップ農園では、こちらもブルックリンにあるThe Eagle Street Rooftop Farmも有名。イースト・リバー沿いに立つ建物のルーフトップに広がる畑は560平方メートルと小さめですが、栽培される野菜は全てオーガニック。小規模ながら地産地消を実現していて、青空マーケットでの販売を行なったり農園近郊の施設に野菜を提供したりしています。


(出典:thehighline.org )

古い土地の活用という例で有名なのが、ハイライン。今でこそチェルシーマーケットやハイライン沿いのカフェ・レストランのおかげで、観光客にも地元民からも愛されるホットスポットにはなりましたが、元々は鉄道の高架線でした。しかもその歴史は1930年代へと遡るくらい古いもの。鉄道路線は1960年代まで使用されましたが、自動車の普及で徐々に使用頻度は減り、最終的には景観を損ねるただの「お荷物」となってしまいました。一時は取り壊しの運命にあったハイラインでしたが、2003年にハイラインの活用コンペが開催されました。実に36ヶ国から720もの様々なアイディアが応募され、2004年のブルームバーグ市長時代にハイラインの公共公園としての活用が決定されました。

現在ハイラインは全長2.3キロ、500種類を超える植物の宝庫となっています。ハイラインの環境管理はもちろん、1日6万人もの人々が訪れるこの場所は絶好のビジネスチャンス。ハイラインにある公共スペースはレンタルも可能なので、ポップアップショップや、ファッションショーの開催、マーケティングイベントやウェルネスイベントも頻繁に開催されています。


(出典: Gallow Green)

さてこちらは、一風変わったレストラン。マンハッタンにあるMcKittrick Hotel内のルーフトップレストラン Gallow Greenでは、植物に囲まれて幻想的な雰囲気で食事をすることが可能です。夏と冬ではわざわざ飾り付けを変えて再オープンするほどの気合の入れようなんです。夏場には隠れ家的な装いでたくさんの植物が層を成して店内を飾りますが、冬場には暖かい雰囲気のロッジに一変。提供されるドリンクも、えんどう豆の花に浸けられたウォッカのカクテルやエルダーフラワーのロゼなどユニークなものばかり。

(出典: McKittrick Hotel )

同レストランでは、平日には子供向けの植付イベントも開催しています。ルーフトップレストランとして商業的に成功するのみならず、教育イベント等を開催して植物についての知識を広めたら、お店の知名度も向上にも繋がります。大人から子供まで楽しめること間違いなしですね。

というわけで、今回はNY市の緑事情についてお話しました。都心でも自然が豊かな秘密は、緑を増やして余った土地をうまく活用し、さらには市政府が環境政策にどんどん投資しているのと"同時に"、NY独自の社会問題の解決や経済の発展に力を入れていてNY市民が環境問題に非常に関心が高いのも納得です。そして、環境問題の改善もビジネスチャンスとして利用するのもNYらしいですね。

NY市内にお越しの際は、ぜひ色々な公園やコミュニティ・ガーデン、ルーフトップレストラン等を訪れてリラックスしてみてください。

<ライター:ユカ> 何となく旅行とか、洋画とか、読書とか、瞑想とか、健康的な食事とか、世界情勢とか、環境保護とか、人間のこととか、心理学とか、アートが好きです。いまのところ20代、いまのところNYC在住のトリリンガルの女の子です。

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